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幸せはアットホームで

ユキ、アーネスト、フェイトフルの三人はダンジョンを出て帰路についた。

「やあっと帰れるぜ~、疲れたな~」

「ああ、だが、貴重な経験ばかりだったな」

フェイトフルは疲れているようだが、アーネストはダンジョンでの戦いを思い出していた。

「急いで帰りましょう、コーティアス達が待ってる」

ユキ達はダンジョンから少し離れたところでワープを使い、村へと戻った。

青い光と共に村へとワープすると、コーティアスが出迎えてくれた。

「お帰りなさいませ、ご無事でなによりです」

「ただいま、無事に鉱石を手に入れられたわ。さっそく金具に作り替えるから、ちょっと待ってて」

ユキは解体場の隅にある工房に取ってきた鉱石を広げる。

「さて、コーティアス、金具はどれくらい足りていないの?」

「釘が50本ほど、後はドアを取り付けるための金具も足りていません」

「わかったわ、少し多めに作っておきましょう」

ユキはまず鉄鉱石を体に取り込んで釘を生成した。

「ふむ、ユキ様はいつも私を驚かせますね」

鍛冶スキルで釘を生成するユキの姿をコーティアスは目を丸くして様子を見ている。

「そんなに珍しいの?ゴブリンの中にもスキルを持っている子もいるでしょ?」

ユキは釘を生成しながらコーティアスに尋ねる。

「確かにいますが、ユキ様のように変わったスキルを持っている者はいませんよ」

コーティアスはおかしそうに笑う。

「そうなのね、自分以外がスキルを使っているところを見たことがないから」

「ふふ、ユキ様は少し天然でいらっしゃいますよね。そういうところは年相応というか何というか」

コーティアスは今日はとても良く笑う。

「コーティアス、珍しくテンションが高いけど、どうかしたの?」

「えっ!そうですか?私はいつも通りだと思いますが」

コーティアスは困ったように自分の体をキョロキョロと見ている。

「うん、楽しそうだよ。まあ、沢山話してくれるのは私も嬉しいけどね」

ユキも嬉しそうに笑いながら金具を生成する。

「ユキ様にはかないませんね、なんでも話したくなってしまう」

コーティアスは少し黙った後、ゆっくりと話し始めた。

「私には妹がいたんですよ、魔物に襲われて亡くなりましたけどね」

ユキは手を止め、コーティアスの話を真剣に聞く。

「妹はしっかり者でして、生きていたら私と同じくゴブリンロードになっていたでしょう。とても優しく

 て、子供や小動物にとても好かれる子でした。何というか、ユキ様の姿が時々妹に重なって見えて、す

 みません、失礼なことを!」

「ううん、むしろそんな素晴らしい妹さんと重ねて見てもらえて光栄だよ」

ユキは慌てるコーティアスに優しく笑いかける。

「ありがとう、ございます」

コーティアスは恥ずかしそうに、でも嬉しそうに笑う。

「さあ、できたわよ。早く持って行って、仕上げといきましょう」

ユキとコーティアスは作った金具や釘を作業場に持って行った。

「ありがとうございます!ユキ様!」

「これで作業が再開できます!」

ゴブリン達は早速作業を再開し、長屋の完成を急ぐ。

「今日中には終わりそうですね」

「そうね、よかったわ」

ユキは少しフラつく。

「ユキ様!大丈夫ですか!」

「大丈夫よ、少し疲れただけ」

「後のことは皆に任せて、中で休みましょう」

ユキはコーティアスに連れられ、家の中に戻る。

家の中ではルノとルナがファインと数人の子ゴブリン達が遊んでいた。

「ユキ!帰ってたのか!おかえり!」

ルノがユキにしがみつく。

「ただいま、みんな」

「ユキさん、顔色が悪いですよ、大丈夫ですか?」

ルナが心配そうにユキのローブの裾を掴む。

「平気よ、少し疲れているだけだから」

「私が部屋まで運びますから、あなた達は静かに遊ぶのですよ」

「はーい」

ユキはベットに腰をかける。

「今暖かいお茶を淹れますね」

コーティアスが用意してくれたお茶を飲み、横になる。

「しっかり休んでくださいね、主が倒れては皆も心配しますから」

その言葉に返事をすることはなく、ユキは眠りについた。

次にユキが目を覚ましたのは日が暮れる頃だった。

「おはようございます、中々目を覚まされないので心配していました」

コーティアスが椅子に座って本を読んでいた。

「眠りすぎたみたいね、作業はどうなったの?」

「起きて早々、村の心配ですか。作業は滞りなく進んでいますよ、もうじき終わるころかと」

コーティアスに現状を聞いていると、部屋の扉が勢いよく開かれた。

「ユキ様!コーティアスさん!家!完成したって!」

部屋に入ってきたのはファインだった。

「こら!部屋に入るときはノックをしなさい!」

ファインはコーティアスに怒られている。

「いいよ、コーティアス。それよりも完成した長屋を早く見に行こうよ」

「ユキ様!甘やかしてはいけませんよ!今回は大目に見ますが、次からは気を付けるように!」

「ごめんなさい」

ファインは耳を垂らして謝る。

ユキはファインの頭を撫で、手を繋いだ。

「さあ、行きましょう」

ユキとコーティアスとファインは完成した長屋を見に外に出た。

「すごい」

外に出ると家のすぐそばに立派な長屋が立っていた。

「おお!ユキ!遅かったな!完成したぞ!」

テンションの高いアーネストに話しかけられた。

「ええ、とても立派で驚いたわ」

ゴブリンとコボルト達はお互いを労いながら、長屋の完成を喜んでいる。

「ユキ様!中に入ってみようよ!」

ユキはファインと共に長屋の中に入る。

「うわ~!すごい!」

長屋の中はとても広く、入ってすぐにダイニングがあり、外に置いていた長机が並んでいる。

「長机を中に入れてみたんだ、これで落ち着いて食事ができるだろう?」

「そうね、雨の日でもみんなで食事ができるわ」

部屋の奥にはリビングのようなものがあり、小さい机とソファーが置いてある。

「ユキ様の家を参考にしてみました。我々には無い文化でしたが、取り入れるべきだと判断したのです」

アーネストやコーティアスの計らいで、長屋の中はとても暮らしやすくなっていた。

「ユキ様!上も見に来てください」

上の階からゴブリン達が呼んでいる。

ユキは階段を上り、二階を見に行く。

二階には族長用の小部屋が二つと、ゴブリンとコボルト用の大部屋が二つ、後もう一つ設計図には無い部屋があった。

「あれ?設計図には4つしか部屋は書いてなかったのに」

「あれは私の書斎だそうです」

コーティアスが後ろから声をかけてきた。

「指令役の私にも専用の部屋があった方がいいだろうと、気を使ってゴブリン達が作ってくれたのです」

「いい心遣いだわ。コーティアスにはこれからも色々頼むこともあるだろうし」

書斎の中には机と椅子、ベットがあり、小さいが本棚のようなモノもある。

「内装はユキ様のお部屋を参考にさせていただきました」

コーティアスは自室が嬉しいのかニコニコしている。

「俺の部屋も見てくれよ!」

後ろからやってきたフェイトフルに抱き上げられ連れていかれる。

「どーだ!カッコいいだろ!俺様の部屋!」

部屋の中は武器や何かの骨などが飾られていて、家具はベットくらいしかなかった。

「うん、フェイトフルらしい部屋ね」

「だろだろ!すっげぇカッコよくできたんだよ!」

フェイトフルもとても嬉しそうだ。

(なんか、中二病男子の部屋みたいね)

「アーネストの部屋はどうなっているの?」

ユキはアーネストの部屋に移動する。

「俺の部屋は普通だぞ?」

アーネストの部屋は質素でベットと、ダンジョンで手に入れたハンマーが飾られているだけだった。

「かなり質素だけど、他に置くものはなかったの?」

「特にないな、フェイトフルのような収集癖もないしな」

ここまで部屋に性格がでるとは思わず、ユキは少し笑う。

「ありがとな、ユキ!俺達に居場所を作ってくれて」

「ううん、感謝してるのは私の方よ。私は長屋を設計しただけで、建築は任せっぱなしだし、私一人じゃ

 村を豊かになんて絶対にできなかったと思う」

「それでも、あの日俺らを叱って、この村に連れてきたのはユキだ。今俺達が平和に暮らせているのは、

 ユキのおかげなんだよ」

アーネストはユキの頭を撫でる。

ユキは少し恥ずかしそうに目を背ける。

「ユキ様!俺達の部屋も見てよ!」

ユキは子ゴブリンとコボルト達に連れていかれる。

「ここが私たちの部屋です!」

大部屋には敷布団がずらりと並んでいた。

「ユキ様が用意してくれたお布団敷いたんですよ!」

「ふかふかで気持ちいいです!」

子ども達はとても嬉しそうで、ユキは思わず頭を撫でる。

「ユキ様って頭撫でるの好きだよね、オレ、ユキ様に頭撫でられるのめっちゃ好き!」

「そんなに撫でてるかな、みんなが可愛いからつい」

ユキの周りに子どもたちが集まる。

「ユキ様!私も撫でて!」

「僕も!」

「コラ!ユキ様を困らせるんっじゃありません!」

部屋に入ってきたコーティアスは子ども達を叱る。

「順番ね」

ユキは順番に頭を撫でる。

(幸せだな)

ユキが子ども達の頭を撫でていると、フェイトフルが勢いよく入ってきた。

「ユキ!長屋の完成記念に宴でもしようぜ!」

子ども達は宴という単語を聞いて大はしゃぎしている。

「そうね、張り切ってご馳走を用意するわ!」

ユキは家に戻り、ご馳走を用意した。

町で手に入れたお酒も開けて、村はどんちゃん騒ぎになった。

ユキは少し離れた席で騒ぐみんなを見ている。

「ユキ様、お茶でもどうです?」

ユキに気づいたコーティアスがお茶を持って話しかけてくる。

「ありがとう」

「嬉しそうですねユキ様、先ほどからニコニコと嬉しそうに皆の様子を見ておられたので」

「そうかな、でも、うん、うれしいよ」

「もしかして、ユキ様もご家族を思い出していたとか」

「うーん、ちょっと違うかな。私の家族は早くに亡くなってて、こんなに賑やかだったことはないから」

コーティアスは少し暗い表情に変わった。

「すみません、余計なことを」

「いいよ、むしろ今日はなんか、話したい気分なの」

コーティアスは真剣な顔付きで聞き始めた。

「私の家族は幼い頃に亡くなって、祖父母と暮らしてたんだけど、祖父母も早死して、施設で育ったん

 だ。施設も学校も馴染めなくて、ずっと一人で過ごしてたから、誰かに慕われて、みんなで食事して、

 さわいで、にぎやかで。一人には慣れてたのに、皆といるのが楽しすぎて幸せだなって思ったんだ」

「ユキ様」

「だから、この幸せを守っていきたい。おいて行かれるのは寂しいからね」

「私たちもユキ様に置いて行かれぬよう、ユキ様を守ります!」

ユキは幸せを噛みしめながら、どんちゃん騒ぎを見ていた。

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