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迫害と出会い

長屋の完成を祝う宴は朝方まで続き、ユキは途中で眠ってしまった。

「ん~、寝ちゃってた」

目を覚ますと日が昇り始めていて、空は少し明るくなっていた。

宴の後、片づけをしないで寝たようで、長屋の中はぐちゃぐちゃだった。

「顔を洗って、片づけでもしようかな」

ユキは一旦家に戻り、顔を洗って長屋に戻ろうとする。

「おはようございます。ユキ様」

長屋に戻る途中でウォールに声をかけられた。

「おはようウォール、早いのね」

「朝の鍛錬をしていました。鍛錬は継続が大事ですから」

ウォールはとてもストイックで、毎日早起きして鍛錬をしているようだ。

「ユキ様は今から片付けですか?俺も手伝います」

「ありがとう、助かるわ」

ユキとウォールは床で寝ているゴブリン達を起こさないように片づけを始めた。

「ユキ様は、コーティアスと仲がいいですよね」

片付けの途中でコーティアスが突然話し始めた。

「そうかな、特別仲がいいってわけではないと思うけど。でも、信頼はしているかも」

「コーティアスには秘密を打ち明けているようですし、よく部屋に招き入れて話をしていますよね」

「コーティアスはゴブリン達のまとめ役だし、世間知らずの私に知識を与えてくれるから」

「確かにコーティアスは博識ですが、戦闘や魔物に関しては俺の方が詳しいはずです」

「じゃあ、戦闘や魔物に関して困ったときは、ウォールを頼るわね」

「はい!」

ウォールはユキとコーティアスの仲に嫉妬していたようだ。

ユキが頼ると言うと、嬉しそうにしていた。

「そろそろアースドラゴン達の餌の時間なので、行きますね」

片付けも終わり、ウォールはアースドラゴンの元へと向かった。

そのうちに皆目を覚まし、それぞれ活動を始めた。

「おはようございます、ユキ様。ご相談がありまして、お隣よろしいですか?」

片づけを終え、テーブルでくつろいでいると、コーティアスに話しかけられた。

「この長屋も作り終え、次の建築に移ろう思うのですが、何を作りましょうか」

「そうだな、家を増やしてもいいし、大浴場を作ってもいいかも」

「大浴場ですか?」

「うん、今みんな村近くの池か、私の家のお風呂使ってるでしょ?広いお風呂があったらいいかもって思

 ったんだけど」

「確かにいいですね、それでどのような形で作りましょうか」

ユキは紙とペンを持ってきて大浴場の設計図を描き始めた。

「ふむ、男女で分かれる設計ですか。湯水はどうするおつもりですか?」

「魔石に魔力を込めれば何とかなるはずよ、そこは私に任せて」

「わかりました。大浴場を作るグループと家を建て直すグループにわけて作業しましょう」

コーティアスは設計図を持って外に出て行った。

「さて、私も準備しますか」

「ユキ!どこか行くのか?」

遊んでいたルノに呼び止められる。

「町に行くの、昨日ダンジョンで手に入れた宝石とかを売りに行こうと思って」

「ちぇー、遊んでもらおうと思ったのに」

ルノは不貞腐れている。

「すぐに帰ってくるから、それから遊びましょ」

「うん!約束な!」

ユキは準備を整え、一人で町に向かう。

町についてすぐに冒険者ギルドに向かった。

「こんにちは、オルベムさんいますか?」

「ユキさん!昨日ぶりですね!マスターなら部屋にいますよ!昨日のダンジョンの報告ですか?」

「報告?」

「あれ?私言い忘れてました?ダンジョンの5回層以降に行った人はダンジョンを出た日から3日以内に

 報告に来なくちゃいけないんですよ」

「そうなんですね、来てよかったです」

「じゃあ、案内しますね」

ユキはマリアに連れられマスター部屋に案内される。

「おお、ユキか、もうダンジョンから出てきたのか?」

「はい、昨日のうちに七階層まで到達したので」

「一日でか⁉はぁ~、規格外の強さだと思ってはいたがそこまでとは」

「なので、報告と買い取りに来たのですが」

「わかった、まず報告を頼む」

ユキはダンジョンでのことを細かく説明した。

「ゴーレムか、裏ボスまで倒したとは。いずれ完全にダンジョンを攻略されそうだな」

「ははは、裏ボス倒していっきに七階層まで行ったので、六階層は見れてなくて」

「そうか、報告はこれくらいでいい。後は買い取りだな」

ユキはアイテムボックスから宝石の入った袋を取り出した。

「アイアンリザードと戦ったときのドロップ品です」

「ふむ、品質もいいし、これなら結構値を張るぞ。ドロップ品の報告はなかったが、他にも何かドロップ

 したのか?」

「あ、今日は持ってきてないんですけど、バトルアックスとロックハンマーがドロップしました。後、こ

 れも」

ユキはミスリルソードを取り出す。

「こっこれは!ミスリルソードか!どうやって手に入れた!」

「七階層のボスがミスリルリザードで、倒した時にドロップしました」

「ミスリルリザードからドロップか、七階層のボスでミスリルリザードが出る確率は低い。ドロップ品が

 落ちる確率も低いし、ラッキーだったな」

「そうなんですね、知らなかったです」

「宝石の買い取りは時間がかかるからな、また明日にでも来てくれ」

「わかりました、失礼します」

ユキは冒険者ギルドを後にし、町の中を歩く。

(今は特に必要な物はないし、明日もくるから買い物はいいか)

ユキは速足で村に戻る。

ユキが村の近くまで戻ると、なんだか村が騒がしかった。

「何かあったの?」

「ユキ!はやく来てくれ!」

ルノに手を引かれ、長屋の中に連れていかれる。

長屋の中には人間のような見た目に羽と鳥の足を持つ魔物が、血だらけで倒れていた。

「ユキ!ちょうどいいところに!こいつはハーピィだ。狩りをしている時に倒れているところを見つけて

 連れてきたんだ」

「説明は後!兎に角、傷を治さないと!」

ユキはアイテムボックスからポーションを取り出す。

「中級のポーションしかない。ルノ!倉庫に行って上級ポーション持ってきて!」

「うん!」

ルノが持ってきたポーションをかけ、傷は塞がったが、目を覚まさなかった。

「死んじゃったのか」

ルノは心配そうに耳を垂らしてユキのローブの袖を掴む。

「大丈夫よ。傷は治したし、今は眠っているだけだから」

アーネストに指示してユキの部屋のベットに寝かせた。

呼吸は安定していて、ただ眠っているだけのようだ。

「後は私が見ているから、アーネストは作業に戻って大丈夫よ」

「わかった、何かあったらすぐに呼んでくれ」

アーネストは部屋を出て作業に戻っていった。

(早く帰ってきて正解ね。コーティアスがいたから倉庫のポーションに気づいて治療してくれていただろ

 うけど)

ユキはベットの側の机で裁縫をしながら目覚めるのを待つ。

途中、コーティアスやウォールが交代で様子を確認しに来たが、ハーピィは目を覚まさなかった。

一晩明け、日が昇り始めた頃、机に突っ伏して寝ていたユキは物音に気付き目を覚ました。

ベットの方を見ると、眠っていたハーピィが体を起こし、頭を押さえていた。

「大丈夫?どこか痛むの?」

ユキが声をかけると、ハーピィはユキの存在に気づき警戒を強めた。

「心配しないで、ここにあなたを傷つける者はいないわ」

「人間の言うことを信じろと言うのか?」

ハーピィは人間であるユキのことを警戒しているようだった。

「少し待ってて」

ユキはダクネスを起こし、アーネストを呼んでくるように指示した。

しばらくしてアーネストが部屋に来てハーピィに状況を説明した。

「なるほど、状況は理解した。しかし、人間を信じることはできない」

「何があったのか、聞かせてくれないか」

ユキのことを警戒しているようだったので、アーネストに話を聞いてもらうことにしてユキは少し離れた場所で話を聞いていた。

「俺は西にある森に住んでいたんだが、人間どもが領地の拡大だと言って俺達の住処を襲撃してきたん

 だ」

ハーピィは仲間が沢山人間の殺されたこと、住処を焼かれ行くあてがないこと、他の魔物もこの森に逃げてきていることなど、沢山の情報をアーネストに話した。

「そうだったのか」

「ああ、ここに逃げ込んでいなければ追ってきた人間どもに殺されていた」

ハーピィはよほど人間のことが憎いのだろう、ユキの方を見てキッと睨みつける。

「ユキのことは警戒しなくてもいい、ユキは俺達の主であり、迫害され逃げてきた魔物達をこの村に匿っ

 ているんだ。魔物である俺達のことを差別せず受け入れてくれて、皆平等に扱ってくれている」

アーネストはハーピィを説得しようと試みるが、そう簡単にはいかない。

「アーネスト、私は大丈夫よ。憎いという気持ちはそう簡単になくなるものではないし、事情が事情なだ

 けに受け入れるのにも時間がかかると思うから」

ユキは優しく声をかける。

「それよりも、この森に逃げてきた魔物達が心配だわ。私はウォールと一緒に森の中を探索してくるか

 ら、アーネストはその子の看病をお願い」

「わかった、気をつけろよ」

ユキは部屋を出て、ウォールとアースドラゴンと共に森へと向かった。

ハーピィは心底不思議そうな表情で森へと向かうユキを見ていた。

「変わっているだろう?魔物にも人間にも屈託なく接してくれるんだ、ユキは」

「人間は俺達魔物を差別し、見下しているものだとばかり思っていた」

ハーピィはユキの予想外の行動に戸惑っている。

「俺もそう思っていたさ、だが、ユキだけは他の人間とは違う。ユキの周りにいる人間もそうだ。きっと

 ユキは何か特別な存在なんだと俺は思う」

アーネストの言葉にハーピィは少しだけユキに心を開いたようだった。

一方でユキとウォールは森に入り、町へのルートや池の周りなどくまなく探した。

「ユキ様!こちらに!」

ウォールに呼ばれ、ユキは声のする方へと向かう。

「ラミアです、ハーピィと共存して暮らすことの多い種族ですので、きっと逃げてきた者かと」

酷い怪我でぐったりとしている。

ユキはポーションを取りだし、ラミアにかける。

すると一瞬だけ意識をとりもどしたラミアが森の奥の方を指さした。

「な、仲間が、」

「わかった、もうしゃべるな、安心しろ」

そういうとラミアは気を失った。

「ウォールはその子を連れて一旦村に戻って、私は奥の方を見てくるわ」

「わかりました。応援も呼んできます」

「お願い」

ウォールは一旦村へ戻り、ユキはラミアが指さした方向に向かう。

森の奥に行くにつれ、血の匂いが強くなっていく。

(早く助けなくちゃ)

ユキは速足で捜索する。

奥の方に進んで行くと、ダクネスが何かに反応した。

ピーー!

「何?」

そこには血だらけのハーピィやラミアを襲う、キンググリズリーがいた。

「その子達を離しなさい!」

ユキはキンググリズリーを引き話すため、魔法を使ってその場を離れた。

<ライトニング=アロー>

光の矢はキンググリズリーの腹部に突き刺さる。

しかしキンググリズリーは足を止めず、まっすぐユキに向かってくる。

ユキはミスリルソードを取り出し、魔力を込める。

<ライトニング=ソード>

ユキはキンググリズリーの突進をかわし、首を切り落とした。

キンググリズリーを倒したユキは、倒れているハーピィやラミアの元へと向かい、治療した。

(ダメだわ、出血が多すぎる。傷が塞がってもこれでは)

ユキが手を焼いていると、ウォールが応援を連れて戻ってきた。

「ユキ様!」

「ここは危険だわ!早くこの子達を連れて村に戻って!」

「ユキ様はどちらに?」

「私はもう少し探索を続けるわ、先に戻ってて」

「一人では危険です!俺も同行します!」

「ダメよ、ここから村までは距離がある。危険な魔物も多い。戦闘員は一人でも多く残った方がいい」

「しかし!」

「ウォール、これは命令よ。あなたにしかできない仕事なの」

「…わかりました」

ウォールは渋々了承し、村へと戻った。

ユキは一人で森の奥地へと進み、ハーピィやラミアの探索を続けた。

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