Lets'ダンジョン!
ー翌朝ー
ユキはオルベムからもらった地図を基に、アーネストとフェイトフルを連れてダンジョンへと向かった。
ダンジョンは町の外れの崖地帯にあり、町の門前までワープで移動した後、歩いて向かう。
「だが、まさかダンジョンに行くことになるとはな」
「まったくだぜ、魔物である俺様がダンジョンに行くことなんてないと思ってたぜ」
「今回の目的は鉱石を手に入れることだからね、七階層までは一気に駆け抜けるわよ」
「おいおい、ダンジョンにはトラップが仕掛けられてるんだろ?いくら俺様が強いからって、トラップを全
部よけきるなんてできないぜ」
「それなら心配いらないから安心していいわよ」
ユキは自信満々に答える。
「ユキがそういうんだから心配いらないんだろう」
アーネストは基本ユキの言葉を疑わない。
フェイトフルは納得がいかないという表情で歩き続ける。
町の外壁をたどり歩くこと数分、遠くの岩山にダンジョンらしきものが見えてきた。
「お!あれじゃねぇの?ダンジョン」
戦闘好きのフェイトフルはダンジョンに行くのを実は一番楽しみにしており、尻尾をブンブンと振り、大興奮している。
ダンジョンの入り口付近には冒険者ギルドが管理している受付がある。
その受付で見覚えのある顔が仕事をしていた。
「あれ?ユキさんと従魔さん達じゃないですか!お久しぶりですね!」
元気よく挨拶してきたのは冒険者ギルドで受付嬢として働いていて、オルベムの実の孫娘であるマリアだった。
「お久しぶりです、マリアさん。どうしてここに?」
「ここには日替わりで手伝いに来てるんです!今日は私の担当なんですけど、まさかユキさんにお会いで
きるとは思いませんでした!」
「私もです。では、受付お願いします」
「かしこまりました!ギルドカードの提示をお願いします」
ユキはギルドカードをマリアに見せた。
「ありがとうございます!今回はどのくらい入られる予定ですか?」
「実はダンジョンに入るのは初めてで、七階層まで行って帰るにはどのくらいかかりますか?」
「七階層ですか?ユキ様と同じBランクの冒険者でしたら早くて3日、遅くて一週間はかかります」
「そんなにかかるんですか⁉」
「はい、でも!ユキさんなら一日あれば戻ってこれそうですけどね!」
「とりあえず、3日でお願いします」
「はい!では登録が完了いたしましたので、ダンジョンに挑戦していただけます!気を付けてください
ね!」
「ありがとうございます。行ってきます」
ユキはマリアに手を振り、ダンジョンの中に入っていった。
ダンジョンの中は建物の中のようで、岩肌にむき出しになっていた入口からは考えられないほど広く、綺麗だった。
四方を土レンガで囲まれた空間が廊下と部屋に分かれており、魔物の気配を感じる。
「ここが第一階層か、魔物の気配が複数感じられるが、スライムやホーンラビットなどの雑魚ばかりのよ
うだな」
「もっと下におりて、強ぇ奴と戦いたいぜ!」
アーネストとフェイトフルは戦う気満々である。
「せっかくダンジョンに来たんだし、ボスとか倒してお宝をゲットするのもいいんじゃない?」
ユキも思いのほかテンションが上がっている。
「ユキ、トラップが仕掛けられているのはどこだ?」
「ちょっと待ってて」
ユキは頭の中で思い浮かべる。
すると、久しぶりに機会音のような声が頭の中に響く。
<スキル:サーチを獲得しました>
<サーチ:目的とするモノを探し出せる>
ユキは早速サーチを使ってみる。
「おお!すごい!」
罠のある場所が黄色く光って見える。
「右側の壁に毒矢の罠が仕掛けられてる。あと、三メートル先の少し盛り上がってるレンガも罠ね。落と
し穴があって、落ちれば槍に串刺しにされるわ」
「マジか!本当に見えてんのかよ!」
ユキを疑っていたフェイトフルはとても驚いている。
「さあ!行くわよ」
ユキ達は遭遇する魔物を薙ぎ払いながらどんどん進んでいく。
「ここが第一階層のボスのいる部屋ね。ここにいるボスを倒せば次の階に行けるみたい」
「早く行こうぜ!」
フェイトフルは次の早く次の階に進みたい様だが、先客がいて部屋に入ることができない。
「そういえばさっきマリアさんが言ってたわね、ボス部屋は別の冒険者が入っていると戦いが終わるまで
入れないって」
「マジかよ!早く次の階に行きてぇのによ!」
フェイトフルは待ち時間にイライラし始める。
「もう十分くらい待っているが、第一階層のボス相手に時間がかかりすぎじゃないか?」
おとなしく待っていたアーネストもイライラし始めた。
「まあまあ、もうちょっと待ちましょう?」
ユキはアーネストとフェイトフルをなだめ、おとなしく待つように促す。
それから5分ほどたったあと、赤色に光っていたボス部屋の扉の魔法陣が青色へと変わった。
「お!開いたみたいだぜ!」
ユキ達は扉を開けて中に入る。
中には大きなホーンラビットと、その周りを取り巻くように小さいホーンラビットが数匹いた。
「ビックホーンラビットだな。前の冒険者はこんな奴らに手間取っていたのか?」
<鑑定:ビックホーンラビット ホーンラビットの変異種で、通常のホーンラビットの三倍のサイズ>
「ユキが出るまでもネェ、下がってな」
そう言うとフェイトフルはビックホーンラビットに突っ込んでいった。
「やれやれ」
ユキとアーネストは暴れまわるフェイトフルの姿を呆れた顔で見ている。
「うっし!終わったぜ!」
フェイトフルは数分でホーンラビット達をボコボコに殴り倒した。
「流石に宝箱は出ないみたいね」
「こんな雑魚の宝箱なんていらねぇけどな!」
ユキ達はボス部屋の奥にある扉から、第二階層へと足を踏み入れた。
第二階層も第一階層と同じく、閉鎖的な空間が広がっていた。
「ユキ!見てみろ、アンデットがいるぞ」
<鑑定:アンデット 屍に魂が宿り、さまよい続ける存在>
「あれも魔物なの?」
「いや、アンデットはどっちかというと霊だな。魔物とは別の存在だ」
「ふーん。どうやって倒すの?」
「霊と言っても実体はあるからな、普通に叩き殺せるぞ」
アーネストは持っていたこん棒でアンデットを粉砕した。
「こっ粉々に、」
「あいっかわらず、脳筋だなお前は!」
その後もトラップを避けながらアンデットを粉砕し、あっという間に第二階層のボス部屋の前にたどり着いた。
「今度は先客がいないみたいだな」
「早く入ろうぜ!」
第二階層のボスはアンデットの大群だった。
またしてもユキの出る幕なく、アーネストとフェイトフルが粉砕してしまった。
「宝箱はなしね」
宝箱はドロップせず、第三階層へと進む。
第三階層も土レンガに囲まれた閉鎖的なエリアだったが、魔物の量が増えていた。
「ポイズンスパイダーだわ」
ポイズンスパイダーに接近戦は不利ということで、ユキが火魔法で焼き払いながら進む。
「おい!ユキ!見てみろよ!」
前を歩いていたフェイトフルが部屋の中に宝箱を見つけた。
「宝箱か、何か罠が仕掛けられてそうだな」
「ええ、開けたら毒ガスが噴き出すトラップだわ。でも、中には何か入っているみたいよ」
「ユキ~!どうにかトラップ解除できねぇのかよ!」
困っていると、今日二回目の機会音が頭に響いた。
<スキル:解除を獲得しました>
<解除:罠や鍵を解除できる>
「できるようになったわ。一応離れておいて」
ユキはスキルを使い宝箱についていたトラップを解除した。
「解除できたわよ。開けてみたら?」
「俺様が開けてやるよ!」
フェイトフルはゆっくりと宝箱をあける。
宝箱の中には、大きな魔石が入っていた。
「チッ、なんだ魔石かよ。武器だと思ったのによ」
「魔石は使えるからいいのよ。当たりの方だと思うわ」
武器を期待していたフェイトフルはわかりやすく落ち込んでいる。
「さあ、どんどん進みましょう」
ユキ達は三階層のボス、ポイズンスパイダーの群れも難なく撃破し、四階層へと進んだ。
四階層は今までとは違い、草原が広がっていた。
「四階層は草原エリアなのね、さっきまで室内にいたからなんだか新鮮だわ」
「しかし、このエリアのボスはどこにいるんだ?扉があるわけではなさそうだが」
「とりあえず進んで行きゃあいいんじゃね」
ユキ達は草原の中を進み始めた。
途中アイアンディアに出くわしたが、アーネスト達にボコボコにされていた。
「それにしても、広すぎないか?」
しばらく草原の中を歩き続けたが、ボスにたどり着ける気がしない。
ユキはサーチに何か引っかからないかと広い草原を見渡している。
「ん?あれかな?」
ユキが見ている方向には丘があり、その上に一本の大きな大木が生えていた。
「いかにも怪しそうな場所じゃねぇか!」
「微かだけどトラップの光も見える気がする」
「とりあえず行ってみよう」
三人は大木を目指して歩き出した。
しかし、大木に近づくにつれ草の背が高くなっていき、ユキは前が見えない状態になっていた。
「すごい草ね、前が見えないわ」
ユキが文句を垂れていると、フェイトフルがヒョイと抱き上げ、肩に乗せてくれた。
「どうだ?見えるか?」
「ありがとうバッチリ見えるわ。でも、重くない?無理はしないでね」
「軽すぎて乗せてる感覚ねぇっての、もっと食えよメシ!」
勝手に担ぎ上げられて、軽すぎると文句を言われてしまった。
「ユキ、何か見えるか?」
「やっぱりトラップがあるよ、あの木の根元に転移魔法がかけられてる。きっと転移魔法でボス部屋に転
移させられるんだわ」
ユキはフェイトフルに担ぎ上げられたまま、大木の根元へとたどり着いた。
「ありがとう、フェイトフル」
フェイトフルはユキをそっと下した。
「それじゃあ、行きましょう」
三人は転移トラップに足を踏み入れ、水色の光に包まれた。
目を開けると洞窟の中におり、目の前には大きな扉があった。
「ビンゴね!先客もいないみたいだし、さっさと倒して次の階に行きましょう」
ゆっくりと扉を開け、中に入る。
中には大きな大木が立っており、よく見ると大きな口のようなものがある。
「トレントかよ」
フェイトフルが大木を見て、名前を漏らした。
<鑑定:トレント 大木のような見た目をした魔物。肉食であり近づいてきた魔物や人間を食べる>
「ここはユキが戦った方が早いかもしれないな」
珍しくアーネストもフェイトフルも突っ込んでいかない。
「いいけど、そんなに危険なの?」
「いや、動きも遅いし、大したことはないんだが」
「物理攻撃が効かねぇんだよ、刃物ならまだしも、俺らが持ってんのこん棒だし」
「そういうことね、じゃあ、さっさと済ませるからちょっと下がってて」
ユキは手をかざし、唱える。
<ファイアー=ストーム>
トレントの足元から大きな炎の渦が巻き起こり、トレントは叫びながら、あっという間に灰になった。
「はい、終了」
あまりの鬼畜さに、アーネストとフェイトフルはドン引きしていた。
灰になったトレントがダンジョンに吸収されると、宝箱が出現した。
「やったぜ!宝箱だ!」
フェイトフルは大興奮している。
トラップは仕掛けられておらず、ユキはゆっくりと宝箱を開き、中を確認する。
「これって、斧?」
中からは刃の部分や持ち手の部分にまで綺麗なデザインが掘られた両刃斧が出てきた。
<鑑定:バトルアックス 戦闘用の斧>
「バトルアックスか、私は使わないから、どっちが持つ?」
「フェイトフルの方がいいだろう。俺はあまり刃物の扱いになれていないからな」
「じゃ、俺様が持つぜ」
どっちが持つか口論になるものだと思っていたが、あっさりと決まってユキは少し驚いた。
「おい!なに固まってんだよ、さっさと次の階に行くぞ!」
フェイトフルに急かされ、第五階層に足を踏み入れた。
ユキの鑑定日記
ビックホーンラビット:ホーンラビットの変異種で、通常のホーンラビットの三倍のサイズ
アンデット:屍に魂が宿り、さまよい続ける存在
トレント:大木のような見た目をした魔物。肉食であり近づいてきた魔物や人間を食べる
バトルアックス 戦闘用の斧




