新・進化!!
夜が明けてユキはウォールを呼び出した。
「おはようウォール。今日は私があなたの進化のサポートにつくわ」
「よろしくお願いします!」
ウォールは気合で満ち溢れている。
「うん、よろしく。早速だけど、昨日コーティアスと話合ったことを言っていくわ」
ユキは真剣な表情で話し始めた。
「まず、ゴブリンの進化について色々教わったのだけど、ゴブリンの直接進化系は、ホブゴブリン、ゴブ
リンメイジ、ゴブリンロードの三つなのよね?」
「はい、ゴブリンロードとゴブリンメイジはそれ以上の進化先はありませんが、ホブゴブリンに進化した
者だけ、ゴブリンジェネラルからゴブリンキングに進化することができます」
「そして、進化にはそれぞれトリガーがある」
「トリガーですか?」
「ええ、例えばゴブリンメイジへ進化するためのトリガーは、魔力が高いことと魔法が使えること。ゴブ
リンロードに進化するためのトリガーは、知能が高いこと。そしてホブゴブリンに進化するためのトリ
ガーは、戦闘能力が高く、一人で同ランクの魔物を倒すことができることよ」
「俺はコーティアスのように知能が高いわけではないし、マーリン達みたいに魔法が使えるわけでもな
い。だから俺はホブゴブリンに進化するしかない」
「確かにあなたはゴブリンロードやゴブリンメイジにはなれないわ。残る可能性はホブゴブリンだけど、
あなたはとっくにトリガーにたどり着いているはずなのに、進化することができない」
「俺はアーネストの次に戦闘能力が高いと言われています。同ランクのホーンラビットも一人で倒すこと
ができるのに、ずっと進化できなくて」
ウォールの言葉はだんだん元気をなくしていく。
「昔から俺みたいに戦闘能力が高くても進化できない個体が一定数いたそうなんです。きっと俺も」
「ちょっと待って、ウォールみたいに進化できなかった個体が他にもいたの?」
「はい、長老たちはそういってました」
「コーティアスはそんなこと一言も言ってなかったのに」
「コーティアスは若いですから、俺よりも年下ですよ」
「そうなの⁉」
「はい、この話を知らなくても不思議ではないです」
ユキはニタリと笑う。
「私の立ててた仮説がますます現実味を帯びてきたわ」
ウォールは不思議そうにユキを見ている。
「昨日、コーティアスの話を聞いて、ある一つの仮説が浮かび上がったの。それは、新たなる進化の可能
性よ」
「新たなる進化⁉」
昨晩のコーティアス同様、ウォールもとても驚いている。
「ええ、コーティアスにはあり得ないと言われたけど、あなたの他にも似たような境遇の者がいたことが
この仮説に現実味を持たせてくれたわ」
「確かに、新たな進化先の可能性はなくはないと思いますが、ここ何百年も新たな進化先が発見されたこ
とがなく、なんだか、信じられません」
「まあ、まだ仮説の段階だから、色々試してみましょう」
ユキはそういうと、ウォールを連れて森の中へと入っていった。
「なにがトリガーになるかはわからないから色々試してみましょう」
ユキはウォールをいろいろな場所に連れていき、色々な事を試させた。
散策や戦闘、薬草の採取など色々な事を試したが、進化する気配はない。
「なかなかトリガーにたどり着かないわね」
「やはり、新たな進化の可能性は低いんじゃ」
ウォールは弱気だ。
「ううん、大丈夫よ。私の感がそう言ってるから」
ユキはなぜか自信満々で、ウォールもユキに置いて行かれぬように気を引き締めてついて行く。
しばらく歩き、森の奥深くまで入ったところで、魔物の鳴き声に気づく。
「?何か鳴いているわね」
「あそこです!怪我をしているみたいですね」
二人が目線を向けた先には、ケガをして倒れている魔物がいた。
「あれはアースドラゴンの幼体ですね」
「あれで幼体なの?私と同じくらいの大きさだけど」
「成体はアーネスト様とコーティアスが乗れるくらい大きいです」
「そうなのね」
<鑑定:アースドラゴン(幼体) 翼はなく、飛ぶことはできないが、足が速く大地を駆け回る>
「あの怪我じゃ魔物に襲われても走って逃げることはできませんね」
ユキはアイテムボックスの中からポーションを取り出した。
「ウォール、あのドラゴンを助けにいきましょう」
「助けるのですか?」
「そうよ、あなたがね」
「俺が?」
「私の感がそう言っているの。行くわよ」
二人が茂みから身を乗り出し、アースドラゴンを助けに行こうとした瞬間、何かがドラゴンの周りに群がってきた。
「なに?」
「あれは、キラービーですね」
<鑑定:キラービー 肉食の蜂の魔物。一個体の戦闘能力は高くないが、群れで行動し、連携力が高い>
「このままじゃアースドラゴンが危険ね、行くわよ!ウォール!」
「はい!」
ユキとウォールは勢いよく飛び出し、アースドラゴンを守るためキラービーに立ちはだかった。
<ファイヤ>
ユキは火魔法を使いキラービーを焼き払う。
「うぉーーー!!!」
ウォールは華麗な剣捌きで薙ぎ払っていく。
「ウォール!」
ユキが名前を呼ぶとウォールは飛び上がり、ユキの後ろに下がる。
<ファイヤー=ウォール>
巨大な炎の壁がウォールが誘導し、ひと固まりになっていたキラービーの群れを焼き払った。
ユキとウォールの見事な連携技で、あっという間にキラービーの群れを殲滅した。
「ナイスよ!ウォール!」
「ユキ様こそ、流石ですね」
守られていたアースドラゴンはあっけにとられている。
「さあウォール!早くポーションを!」
ウォールは腰にぶら下げていたポーションを外し、アースドラゴンに近づく。
「暴れるなよ」
ウォールは傷口にポーションをかけ、アースドラゴンはおとなしく治療を受けた。
傷が治り、元気を取り戻したアースドラゴンは嬉しそうにウォールの周りを跳ねている。
「おいおい、なんだよ」
ウォールもうれしそうに笑っている。
しばらくウォールの周りを飛び跳ねていたアースドラゴンは急に足をとめ、叫び始めた。
「キュイーーーーーン」
するとどこからか地響きが聞こえ始め、ユキ達いる方向に向かって近づいてくる。
その地響きの正体はアースドラゴンの群れだった。
アースドラゴンの群れはユキ達の前まで来て止まり、頭を下げた。
幼体のアースドラゴンは真ん中のアースドラゴンの足にすり寄り、嬉しそうに鳴いている。
どうやらアースドラゴンの群れの長の子供らしい。
「ドラゴン族はとても知能が高く、義理堅い種族なので、今の行動も感謝を示すものだと思います」
助けた子どものアースドラゴンがウォールに近づき頭を下げる。
「感謝しているのか?俺は当然のことをしたまでだ」
ウォールがアースドラゴンの頭に手を置いた瞬間、ウォールとアースドラゴンを青い光が包み込んだ。
アースドラゴンの額には契約の紋が浮かび上がり、ウォールは一回り体が大きくなっていた。
「こっこれは?」
状況ができていない様子のウォールの顔をアースドラゴンがぺろぺろと舐める。
「ちょっ!くすぐったいぞ」
「おめでとうウォール。無事に進化できたわね」
「俺、進化できたんですか?」
「ええ、派手に見た目が変わったわけではないけど、しっかりと進化しているわよ」
ユキはウォールのステータス画面を開いて見せた。
「”地竜の加護を受けし者”ゴブリンナイト」
<鑑定:ゴブリンナイト 地竜にまたがり戦うゴブリンの進化系>
「ゴブリンナイト、新たなる進化、本当に実現するとは」
驚きのあまり実感が湧いていないようだ。
「進化のトリガーは地竜の加護を受けること。どう?私の感当たってたでしょ?」
ウォールはユキに跪き、頭を下げた。
「ありがとうございますユキ様。あなたのおかげで俺は進化することができた。本当に感謝しています」
ウォールの仕草を見て、アースドラゴンの長がユキに頭を下げる。
加護を授けた者の主であると理解したのだろう。
ユキはアースドラゴンの額に手をやり、契約を交わした。
「これは想像してなかったけど、嬉しい誤算だわ」
ユキとウォールはアースドラゴンと契約を交わし、村に新しい仲間を迎え入れることとなった。
「とりあえず村に戻りましょうか」
ユキがそう言うと、アースドラゴンがしゃがみ込んだ。
どうやら背中に乗れと言っているようで、目で合図を送ってくる。
「ユキ様!早く乗ってください」
ウォールいつの間にかまたがっており、早く乗るようにせかしてくる。
ユキがアースドラゴンにまたがるとゆっくりと立ち上がり、支持を待っている。
「それじゃあ、村に帰りましょう」
アースドラゴンはユキの指示した方向にゆっくりと走りだした。
森の木々がユキに当たらないように気を使いながら走ってくれている。
アースドラゴンのおかげであっという間に村が見えてきた。
「?なんでしょう、この地響きは」
村で作業の指示をしていたコーティアスは地響きに身構える。
そこに森をぬけ、アースドラゴンにまたがったユキ達が颯爽と現れた。
「ゆっユキ様⁉」
「ただいまコーティアス。無事に進化させたわよ」
コーティアスは小さいアースドラゴンにまたがっているウォールに気が付き、驚いた。
「まっまさか!本当に新しい進化先を発見されたのですか⁉」
「マジかよ!」
「本当か!」
アーネストとフェイトフルもやってきて、ウォールを祝福した。
「おめでとう!ウォール!今日は宴だな!」
「ユキ様も本当に新しい進化先を発見するだなんて、是非後でお話を聞かせてください!」
コーティアスは興奮気味に話す。
「こいつ等アースドラゴンだろ?手名付けたのか?」
「私はおまけよ。ウォールがアースドラゴンの加護を受けたから、それで進化したのよ」
「ドラゴンの祝福で進化ですか、興味深いですね」
「いきなり大所帯になっちゃったから再建を急がなくちゃいけなくなったけど、今日は目でたい日だし、
作業は明日からにして、宴にしましょう!」
ユキはたくさんの料理と、町で買った酒をふるまった。
ゴブリン達は新たなる進化先の発見にお祭り騒ぎで、歌ったり踊ったりしている。
普段冷静なコーティアスも浮かれてはしゃぎまわっている。
ユキは、村も大所帯になり、にぎやかになったことをうれしく思い、ますます村の再建が進むことを願った。
ユキの鑑定日記
アースドラゴン(幼体):翼はなく、飛ぶことはできないが、足が速く大地を駆け回る
ゴブリンナイト 地竜にまたがり戦うゴブリンの進化系
キラービー:肉食の蜂の魔物。一個体の戦闘能力は高くないが、群れで行動し、連携力が高い




