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再建は進化の予感とともに

翌朝、ゴブリン達の作業音で目を覚ましたユキは、働くゴブリン達のために朝ごはんの用意をし始めた。

「ユキ様!おはようございます!今日は何をつくるんですか!」

ファインが元気よく扉を開けて入ってきた。

「おはようファイン。昨日町でいいものを見つけたからそれを使った私のソウルフードを作るわ」

「そうるふーど?」

ファインは聞きなれない単語に目が点になっている。

「ふふっ。これよ」

ユキはアイテムボックスの中から麻袋を取り出して中身を見せた。

「なに?これ?白い粒?」

「これはねお米っていうのよ。昨日町で外国から来た商人が店を開いてて、そこで見つけたの」

「これがユキ様のそうるふーど?なんか硬くて食べずらそう」

米をサラサラと触りながら、怪訝そうな顔をする。

「このままでは食べないわ。これを水で溶いて、火にかけるとフワフワになるの」

「ふーん」

ファインは信じられないのか、そっけない返事を返す。

「お米に合うおかずも作るから、ルノ達を起こしてきて遊んでなさい」

「わかった」

ルノ達を起こす役目はすっかりファインのものになっている。

「さて、作り始めますか」

ユキは大鍋に米をいれ、水で溶き、火にかけた。

「ご飯が炊けてる間に、おかずを作っちゃいましょう」

ユキは、ロックバードの肉とオニオーン、元の世界でいうタマネギを取り出した。

「ご飯と言えば丼ものは欠かせないわよね」

町で買った料理酒とみりんのようなもの、和風だしに近いスパイス、水を大鍋に入れる。

鍋に水を入れ、沸騰させるといったん火を止めロックバードの肉とオニオーンを加える。

肉に火が通ったら、溶いた卵を半量入れ、蓋をする。

卵が固まり始めたら、残った卵を回し入れ、半熟になったところで火を止める。

「卵を二回に分けて入れることで、ふわとろになるのよね」

ご飯もいい感じに炊け、白くてフワフワのお米のいい匂いがする。

ユキは、親子丼を作っている間に焼いておいた魚を解し、ご飯の中に入れ、三角型に握る。

「できたわ。ロックバードの親子丼とおにぎりよ」

外で遊んでいたはずのファイン達が匂いにつられて戻ってきた。

「うまそうな匂いがする!」

「ユキ様!できたー?」

ルノとファインは尻尾をブンブンと振り、目を輝かせている。

「ちょうどできたところよ。みんなを集めてきてくれる」

「はーい!」

二人は走ってみんなを呼びに行った。

その間にユキは、アーネストとフェイトフルに手伝ってもらい、料理をテーブルに運ぶ。

「これはなんだ?」

「見たことがないぞ?」

「でもユキ様が作ったのだから美味しいに決まってる」

ゴブリンもコボルトも見たことのない料理に戸惑っている。

「ユキ様!このフワフワがあの白い粒なの?」

「そうよ。私の言った通りフワフワになったでしょ?」

「うん!すごい!」

チビ達は目を輝かせている。

「さあ、みんな食べてみて」

ユキはおにぎりを一つ手に取り、頬張る。

「んー!美味しい!」

ユキは思わず頬を手で押さえ、うま味を噛みしめる。

ユキの様子を見たゴブリンとコボルトもおにぎりを手に取り、頬張る。

「なっなんだこれ!」

「フワフワでおいしい!」

お米の柔らかさに感動し、パクパクと食べ進める。

「この肉の入ったヤツもウメェぞ!」

「親子丼って言うのよ」

「なるほど、鶏肉と卵を使うから親子丼。素晴らしいネーミングセンスですね」

コーティアスは勝手に推測し、満足そうにしている。

あっという間に食べ終わり、ゴブリン達は作業に戻り、ユキはファイン達と一緒に片づけをした。

片づけを終えたユキは、コーティアスに声をかける。

「コーティアス、ちょっといいかしら」

「なんでしょうか」

「ゴブリンやコボルトの中で進化しそうな子はいる?」

「進化ですか?まあ、何人かいますが、どうなされたのです?」

「ゴブリン達の服を作ろうと思うんだけど、作っても進化したら作り直さなきゃいけないし、先に進化し

 えもらえれば服も作りやすいと思って」

「我々に服を与えてくださるのですね。なんと光栄な!そういうことでしたら進化しそうな個体を集めて

 きましょう」

そういってコーティアスは3匹のゴブリンと、2匹のコボルトを連れてきた。

「この者たちが進化しそうな個体です」

「マーリンとマギは魔力が高いのでゴブリンメイジになる可能性があります」

ユキが鑑定した時に魔力が高かったため、魔法使いっぽい名前を付けた個体だった。

「ウォールは戦闘力が高く、ゴブリン達の中ではアーネスト様の次に強い個体です」

鑑定をしてみたが戦闘スキルは持っておらず、進化するようには見えない。

「ケールとマグスは武器の扱いに長けており、戦闘能力も優れていますのでもうじき進化するでしょう」

コーティアスからの説明を受け、早急に進化させる方法を考える。

「急に集まってもらって申し訳ないのだけれど、あなた達には早急に進化してもらおうと思うの」

ユキの唐突な発言に理解が追い付かない様子だ。

「これは村の戦力強化のためにもなるの。この村は四方を森に囲まれているわ。私の結界があるとはい

 え、いつ戦闘が起きるかわからない。だからあなた達には早急に進化してもらいたいのよ」

ユキの話に納得がいったのか、ゴブリンとコボルは跪き、教えを乞う。

「どうか我らにご指導ください」

「ええ、こちらこそよろしく」

ユキはアーネストとフェイトフルを呼んだ。

「アーネストとフェイトフルは、ケール、マグス、ウォールを連れて狩りに行ってほしいの」

「狩りにか?食材は足りているように見えるが」

「食料のためじゃなくて、三人の進化を促すために連れて行ってほしいの」

「なるほどな!そういうことなら連れて行ってシゴキあげるぜ!」

戦闘と聞いてフェイトフルはウキウキだ。

「これを持っていきなさい。上級のポーションとワープのスキルを込めた魔石よ。何かあったら魔石に魔

 力を流し込むことで、村にワープできるようになっているわ」

アーネストに手渡し、5人は森へと向かっていった。

「マーリンとマギは私と一緒に魔法の練習をしましょう」

ユキは二人を連れて、魔法の練習場に連れていく。

「あっ!ユキ!」

魔法の練習場ではルノがルナとファインを引き連れて魔法の練習を行っていた。

「みんなで魔法の練習してたんだ!ユキも練習するのか?」

「私じゃなくて、マーリンとマギが練習するのよ」

「よろしくお願いします」

「そういえばさっきコーティアスがゴブリンは火魔法が得意だって言っていたわね。ルナ、ダクネスを呼

 んできてくれる?」

「わかりました!」

ルナはダクネスと仲がいいため、嬉しそうに呼びに行った。

「さて、マーリン、マギ、あなた達魔法を使った経験はあるの?」

「このくらいならできます」

マーリンとマギは両手を合わせ、小さな日の玉を作って見せた。

「なるほど、筋がいいわね」

マーリンもマギも火の玉を作って数分は保っていられるらしい。

「魔法を使うにはイメージが重要になるの。一度お手本を見せるから、しっかり見ててね」

ユキは的のある方向に手をかざし、唱える。

<ファイヤ—=ボール>

ユキの手からバランスボールぐらいの大きさの火の玉が放出され、的をぶち壊した。

「あっ、やっちゃった~」

「ユキ!的壊すなよ!」

「ごめん、新しい的用意するから」

的を壊され、ルノはプンプンと怒り出す。

ユキは新しく的を用意し、マーリンとマギに魔法の練習をするように言った。

「さあ、あなた達の番よ」

マーリンとマギは集中し、イメージを膨らませる。

<ファイアー=ボール>

マーリンとマギは的に向けて魔法を放ったが、小さな火の玉は、的に当たる前に消えてしまった。

「むずかしいです」

「最初からうまくできる人なんていないわ。練習あるのみよ」

練習をしていると、ルナがダクネスを連れて、戻ってきた。

「ちょうどよかったわ。マーリンとマギは少し休憩してて。ダクネスにお手本を見せてもらいましょう」

「ダクネスは魔法を使えるのですか?」

「ええ、火魔法の専門家よ。私の魔法は所詮パワーだけの力技だけど、ダクネスの魔法は洗練された純粋

 な魔法だからイメージもつかみやすいと思うわ」

ユキの肩に乗っていたダクネスは飛び立ち、的に向かって魔法を放った。

ユキの魔法とは比べ物にならないくらい綺麗な火の玉が的まで一直線に飛んでいき、的にぶつかる前にはじけた。

「ダクネスはユキと違って的を壊さないからな!魔物なのに頭がいいよな!」

ルノの言葉にユキはぐうの音もでない。

「すごいです!とてもきれいな魔法でした」

マーリンとマギはイメージを掴めたようで、より真剣な顔で魔法を唱え始めた。

<ファイアー=ボール>

二人の唱えた火の玉はバレーボールくらいまで大きくなり、早さも増して的に命中した。

「やったわ!形になったじゃない!」

すると二人が青い光に包まれて、あまりの眩しさにその場にいた全員が目をつむった。

次に目を開いたときには、マーリンとマギはゴブリンメイジに進化し、少し人間味の強い見た目に、胸のあたりには魔石が埋め込まれていた。

<鑑定:ゴブリンメイジ ゴブリンの進化系であり、魔法の扱いに長けている>

「無事に進化できたわね」

「ありがとうございます!」

「ありがとうございます!」

マーリンとマギはユキにとても感謝している。

「いや、私よりもダクネスに感謝しなよ、私特に何もしてないし」

「いえ、ユキ様は私たちに名前を授け、さらに進化をするきっかけまで与えてくださいました」

「ダクネスを連れてこられてのも、魔法を見せてくださったのも、ユキ様の采配でございます」

「「ありがとうございます」」

ユキは二人の言葉を素直に受け止め、命令した。

「今後もこの村を守れるように精進しなさい」

「「はい!」」

ゴブリンメイジに進化したマーリンとマギは、ダクネスの指導の元、練習を続けることにした。

マーリン達の練習を見ていると、コーティアスがやってきた。

「ユキ様!アーネスト様達がお戻りになられました」

「今行くわ。ダクネス、ここは任せたわよ」

ダクネスに場を任せ、アーネスト達の元へと向かう。

広場にはゴブリン達が群がっており、その中心にはアーネストとフェイトフル以外に、ホブコボルトがいた。

「無事に進化できたみたいね」

「ああ、ケールとマグスは狩りに行ってすぐにホブコボルトに進化したんだが」

アーネストの歯切れが悪い。

「ウォールだけ、いくら戦っても進化できなかったんだよ」

歯切れの悪いアーネストにかわり、フェイトフルが答えた。

「ウォールは集落にいた頃から戦闘に長けていて、いつ進化してもおかしくなかったんだ。ユキに名前を

 授けられたことでやっと進化できると思ったんだが、戦えど戦えど、進化しなくてな」

悔しそうなアーネストの後ろから、ウォールが出てきて、ユキに謝った。

「申し訳ありません!ユキ様に機会を与えていただいたにも関わらず、進化できなくて」

声は大きいが、声色や姿勢から落ち込んでいるのがわかる。

「落ち込む必要はないわよウォール。私は今日必ず進化してこいなんて言っていないわ。あなたが進化で

 きるように私もサポートするから、一緒に頑張りましょう」

ユキの言葉に励まされ、ウォールはバチンと両頬を叩き、気合を入れなおす。

「ありがとうございますユキ様!ユキ様のお役に立てるよう必ず進化してみせます!」

ユキは日が暮れる前に、ゴブリン達を集落に帰らせ、相談があると言い、コーティアスだけは泊っていくようにと伝えた。

夕食をすませ、ルノ達を寝かしつけた後、コーティアスに落ち着いたら自室に来るようにと伝えた。

コンコンコンと自室のドアがノックされ、コーティアスが入ってきた。

「ユキ様、ご相談というのは」

「ごめんなさいねコーティアス。周りのことをよく見ているあなたの意見が聞きたくて」

ユキはゴブリン達の服を作っていた手を止める。

「相談というのは、ウォールのことなんだけど」

コーティアスを席につかせ、話を始めた。

「やはり、進化しなかった件についてですね」

「ええ、あなたの目に狂いはなかった。私から見てもウォールは進化すると思うもの」

「アーネスト様も仰っていましたが、ウォールは集落で暮らしていたころから戦闘能力に長けていて、私

 なんかよりも進化する可能性が高かったのです。しかし中々進化せず、本人もかなり気にしているよう

 でした」

「単純な戦闘で進化しないとなると、何か条件があるのかもしれないわね」

「条件ですか?」

「例えば、ホブゴブリンに進化するには高い戦闘能力が必要だし、ゴブリンメイジに進化するには魔法を

 使えるようにならないといけないでしょ?ウォールの進化先はきっと、ホブゴブリンでもゴブリンメイ

 ジでもないのよ」

「私と同じ、ゴブリンロードということですか?」

「それはないと思う。ウォールはコーティアスのように知能が高いわけでも、知能が高いわけでも無いも

 の」

「しかし、私達ゴブリンはそれ以外の進化先はありません。アーネスト様のようにゴブリンジェネラルに

 なるには、一度ホブゴブリンにならないといけませんし、ゴブリンロードやゴブリンメイジでも無いと

 なると、新しい進化先の発見ということになります!」

普段落ち着きのあるコーティアスが取り乱している。

それほど新しい進化先の発見は種族にとって大いなる進歩となるのだろう。

「でも実際に、ウォールは既存の方法では進化しなかった。それこそが新たな進化先の可能性を秘めてい

 る証拠だわ」

饒舌なコーティアスが言葉を詰まらせる。

「明日は私がウォールに付くわ。相談は以上よ。今日はもう休みなさい」

コーティアスの様子を見かねて、部屋に帰した。

「明日も忙しくなりそうだわ」

ユキは止めていた作業を再開し、月が真上まで登るころまで続けた。

ユキの鑑定日記


ゴブリンメイジ:ゴブリンの進化系であり、魔法の扱いに長けている

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