村に豊かさと賑やかさを
冒険者ギルドを後にしたユキ、アーネスト、フェイトフルの三人は買い出しに向かった。
「次はどこに行くんだ?」
「雑貨屋に行くわ。みんなで食事をするのにお皿もコップも全然足りてないから、その次は生地屋に行って布の調達、その後は食料の調達もしないと」
「どんだけ買うつもりだよ」
フェイトフルは買い物の多さに嫌そうな顔をする。
「俺はどこまでも付き合うぞ!」
フェイトフルとは違い、アーネストはやる気に満ち溢れている。
「あなた達も何か気になるものがあったら言ってね。ついて来てくれたお礼に何か買ってあげる」
「マジかよ!やったぜ!」
さっきまで不貞腐れていたのが嘘のように尻尾を振り喜んでいる。
「まあ、買い出しが終わった後にはなるけどね」
「さっさと買い出し済ましちまおうぜ!」
三人は足早に店へと向かう。
雑貨屋に着いたユキ達は、大皿と小皿を数枚、コップやジョッキも買った。
「次は生地屋ね」
生地屋は雑貨屋の隣にあり、以前町に訪れたときにも寄っていた。
「おやお嬢ちゃんはこの前の。いらっしゃい、よく来たね」
生地屋の主人はユキのことを覚えていたらしい。
「今日はどんなのを探しているんだい?」
「こんにちは。今日は従魔たちの服を作るための生地を買いに来たんです」
「ゴブリンジェネラルとコボルトキングかい、いい従魔だねぇ」
「ご存じなんですね」
「わしも昔は冒険者でな、引退してからここを継いだが、それまではブイブイ言わせとったからのう」
よく見るとカウンターの奥には使っていたのであろう大剣が飾ってあった。
「それにしてもお嬢ちゃん、冒険者だったんじゃのぅ」
「はい、最近冒険者になりました」
「ほっほっほ、新米さんかい。元冒険者のよしみで安くしてやろう」
「ありがとうございます」
ユキはアーネストとフェイトフルに話を聞きながら、ゴブリンやコボルトが好みそうな素材を選んだ。
「お嬢ちゃんは太客だねぇ。こんなに買ってくれるなんて」
カウンターに山積みになった生地を見て、店主は嬉しそうに笑う。
「占めて金貨15枚と言いたいところだが、3枚まけて金貨12枚でいいよ」
お金を払い、店主に丁寧にお辞儀をして店を後にする。
「あとは食料の調達ね、まずはパン屋さんに行きましょう」
「パンか!この前みんなで食事した時に初めて食べたが、中々にうまかった」
「俺様はパンより肉に夢中だったけどな!」
町の大通りにある大きなパン屋に向かう。
「ここは従魔は入れないらしいから、ここで待っててね」
二人は落胆し、窓の外から店内を眺めている。
「いらっしゃい。なににします?」
若い店員が声をかけてきた。
「黒パンを5つと食パンを3斤お願いします」
この世界のパンは質素なものが多く、元居た世界のような菓子パンや総菜パンは存在しないようだ。
「お嬢さんそんなに食べるのかい?」
「いえ、大家族なもので」
パンを包んいる間も気まずくならないように話し続けてくれている。
「はい、出来ました!また来てくださいね!」
大量のパンを手に入れ、店の外にでた。
「おまたせ、次に行こうかって、うわ!」
店の外で待っていたアーネストとフェイトフルが大量に涎を垂らしていた。
「うまそうだな」
「俺様あの黒いのが気になるぜ」
「もう、少し多めに買ってきたから、そこのベンチに座って食べましょ」
三人はベンチに座り、パンを分け合いながら少し休憩をした。
「うまかったな~」
「ああ、うまかった」
二人は満足したようだ。
「じゃあ、もう少し付き合ってね」
それから三人は青果店やスパイスの店を巡り、買い出しを終わらせた。
「買いたかったものは全て買えたし、最後にアーネスト達の欲しいものを買いに行こうか」
ユキの言葉を聞いた二人は、もう決めてあると言い、ユキを連れて行った。
「ここは、武器屋?」
「おう!俺様達の持っている武器は手作りだからよ、切れ味はワリィし、与えられるダメージも少ねぇ
んだよ」
「いい武器を持っていないと、いざという時に仲間を守れないからな」
仲間のために買うという二人の気持ちに押され、店の中に入ってみる。
店の中は薄暗く、壁や天井に無数の武器が飾ってある。
店の店主であろう男はカウンターに中で剣を研いでおり、目でこちらチラリと確認するのみで、挨拶はしない。
「どれにすっかな~」
「たくさんあって悩んでしまうな」
二人は楽しそうに武器を吟味しているが、ユキには引っかかるものがあった。
(値段の割に、いい武器だとは思えないけど)
ユキはこっそりと鑑定をかけた。
<鑑定:なまくら 見た目だけの粗悪品>
(やっぱりね)
ユキは色々な武器に鑑定をかけてみたが、なまくらばかりでまともな武器は一つもなかった。
「二人とも、武器はまた今度ね。今日はもう帰りましょう」
二人を強引に店の外に引っ張り出す。
「なにすんだよ!まだ選んでる途中だったのによ!」
「ユキが買ってくれると言ったのだろう。約束は守ってもらいたい」
吟味中に無理やり外に連れ出され、不機嫌になっている。
「あの店の武器は全て粗悪品よ。見た目だけを綺麗に装ったなまくらだったの」
「本当か⁉」
「気づかなかったぜ」
二人は驚き、ユキに謝った。
「残念だけど、近くにある武器屋はここだけみたいね。今度私が作ってあげるから、それまで我慢して頂
戴」
「ユキは武器まで作れるのか⁉」
「ええ、鍛冶のスキルを持っているから。二人の好きな形で作ってあげるわ」
二人には今度武器を見繕うと約束し、村に帰ることにした。
ワープを使って村に戻ると、コーティアスが出迎えてくれた。
「お帰りなさいませ。お早いお帰りでしたね」
コーティアスの指示のもと長屋を作っていたゴブリンとコボルトも総出で出迎えてくれた。
「ただいま。どうしたの?みんな集まって」
「ユキ様に頂いた設計図通りに長屋を作っていたのですが、私がつい、名を授けてくださるとこぼしてし
まい、それからは皆作業に身が入らず、今日の作業は中止し、ユキ様の帰りを待っていたのです」
ゴブリンとコボルト達は皆期待の眼差しでユキを見つめている。
「すまないな、ユキ。名を与えられることは光栄で名誉ある事だからな、皆期待しているのだろう」
ユキは期待に応え、一人一人に名前を付けていく。
「お願いしますユキ様!」
いつも大人コボルトについてきて、ユキの手伝いをしてくれるコボルトの子供だった。
「あなたの番なのね。それじゃあ、あなたの名前はファインよ」
額に青色の光が浮かび上がり、契約が完了する。
「ありがとうユキ様!」
ファインは飛び跳ね、遠くで見ていたルノ達に自慢しにいった。
およそ50匹のゴブリンとコボルトに名前を授け、最後の一人に名前を授け終えた後にはヘトヘトになっていた。
「お疲れ様ですユキ様」
コーティアスが暖かいお茶を持ってきてくれた。
「ありがとうコーティアス。でも、名前だけでこんなに喜ばれるとは思ってもみなかったわ」
「アーネスト様も仰っていた通り、名を授かるということは我々魔物にとってはとても光栄で名誉ある事なのです。私も昨日の夜は眠れませんでした。それくらい嬉しいことなのです」
コーティアスにもらったお茶を飲みながら、はしゃいでいるゴブリン達を眺める。
「私のいた世界ではね、名前なんて当たり前にあるものだったの。ペットの犬や猫、金魚でさえも名前を
もっていたわ。だから少し不思議な気分なの。本来名前を授けられるということは光栄で尊いものだと
いうことをこの世界に来て初めて気づくことができた気がするわ」
「やはりユキ様はこの世界の人間ではないのですね」
コーティアスはユキがこの世界の住人ではないことを気づいていたようだ。
「ええ、そうよ。私はこの村を再建するためにこの世界にやってきた異世界人。いつ気が付いたの?」
「まず見た目ですね、この世界の人間とは異なる色の髪と目をしておられますし、長屋も、この世界には
ない建物でしたから。それに、ユキ様が持っておられるお力は神から授けられたとしか言いようがない
くらい有能でしたので」
コーティアスはゴブリンロードに進化できるくらい知能が高い。
観察力にも目を張るものがある。
「流石はコーティアスね。このことは黙っていてくれる?みんなを混乱させたくはないから」
「畏まりました」
日が暮れ、アーネストとフェイトフルがはしゃぐゴブリン達を集落まで連れ帰り、にぎやかだった村が一気に静まり返る。
「さっきまであんなに騒がしかったのに、一気に静かになっちゃったわね」
窓から夜空を眺めていたユキに、ルノとルナが抱きつく。
「どうしたの?二人とも?」
ユキはいきなりの出来事に驚きを隠せない。
するとルノが顔を上げ、ユキに話しかけた。
「オレ達がいるぞ!」
「ユキさん今日は一緒に寝ましょう!」
夜空を眺めていたユキの表情が寂しそうに見えたのか、ダクネスまで肩にすり寄り、励ましてくれた。
「そうね、今日はみんなで寝ましょうか」
ユキは嬉しそうに笑い、ユキの部屋のベットでみんなで寝ることにした。
ユキの鑑定日記
なまくら:見た目だけの粗悪品




