村の豊かさを求めて
ユキ達が村に戻ると半壊していた家の解体が終わっており、村に更地が増えていた。
「おかえりなさいませユキ様、アーネスト様、フェイトフル殿。半壊していた家の解体を終え、他のゴブ
リン達は一旦集落に帰らせました。再建を始めてもよかったのですが、ユキ様のご意見を伺いたいと思
いまして」
村に戻って早々一匹のゴブリンが話しかけてきた。
どうやらアーネストとフェイトフルに代わって支持を出していたようだ。
「ありがとう。今日はもう遅いし、再建は明日から始めてくれると助かるわ。朝までには設計図を作って
おくから、取りに来て頂戴」
「かしこまりました」
ゴブリンは一礼し立ち去ろうとする。
「ちょっと待って、あなたにも名前を授けるわ。他のゴブリンやコボルト達にも授けようと思っていたの
だけれど、残っているのはあなただけみたいだから、先につけさせてもらうわね」
「なんと、有難き幸せ」
ユキはアーネストの代わりに指示をだしてくれていたゴブリンにコーティアスと名付けた。
「コーティアス、素晴らしき名前をありがとうございます!」
アーネストとコーティアス、フェイトフルは集落へと帰っていった。
ユキは家へと戻り、ルノ達に食事を作った。
アイアンディアやロックバードの解体も終わらせ、ランプに火をともし、家の設計図を作り始めた。
「ユキ!何してるんだ?」
ルノが設計図をのぞき込み、不思議そうに見ている。
「ゴブリン達が暮らす家の設計図を作っているのよ。ルノの意見も聞かせてくれる?」
「いいぞ!」
ダクネスと遊んでいたルナもやってきて、みんなで考えることにした。
「ゴブリン達は基本みんなで暮らしてるよね。みんな仲良しで一緒に寝てるんだって聞きました」
「コボルト達もそうだよな?洞穴にみんなで暮らしてる」
ゴブリンやコボルトのことに詳しいルノとルナはどんどん意見を出す。
「じゃあ、大きな家にみんなで暮らす方がいいのかな?」
「いいと思います!小さな家にバラバラで暮らすより、一緒の方が寂しくないです!」
ルノもダクネスもウンウンと頷いている。
「じゃあこんな感じかな?」
ユキは紙に大きな二階建ての長屋を書いた。
「マンションやアパートに近いけど、大部屋にして、小部屋はそれぞれのリーダーの書斎のみって感じで
どうかな?」
「まんしょん?がどんなのか知らないけど、いいと思うぞ!」
「いいと思います!」
ルノとルナの協力であっさりと設計図が完成した。
「明日ゴブリン達に見せるのが楽しみね」
ユキ達は明日を楽しみにしながら眠りについた。
ー翌日ー
「こ、コーティアス、だよね?」
家のドアをノックされ出てみると、昨日とは見た目の違うコーティアスがいた。
「はい!コーティアスでございます。昨日ユキ様に名を授けていただいたおかげで進化することができました」
<鑑定:ゴブリンロード 知能が高く、ゴブリン達を統率する才能に長けている>
「そ、そう。よかったわ」
「戸惑われているところ申し訳ないのですが、進化したのは私だけではありません」
コーティアスの話を聞いていると大きな影が二人を覆った。
「おはよう!ユキ!」
「今日はなにすんだ?」
二人を覆った影の正体はアーネストとフェイトフルだった。
「ふっ二人ともなんか大きくなってない?」
アーネストとフェイトフルは昨日よりも一回り大きくなっていた。
「ああ、進化したんだ。昨日ユキと共に狩りに行ったからだろうな」
「元々名前もらった時点で進化してもおかしくなかったもんな」
どうやら名を授けられることで力が増し、進化する可能性が高くなるらしい。
<鑑定:ゴブリンジェネラル 通常のゴブリンよりもはるかに大きく、戦闘に特化した個体>
<鑑定:コボルトキング コボルトの最終形態であり、武器の扱いに長けている>
「ランクもBランクまで上がったんだぜ!」
「今ならロックバードも一人で倒せてしまいそうだ」
進化したことがよほど嬉しかったのか、アーネストとフェイトフルははしゃいでいる。
「ユキ様、二人のことは放っておいていいですよ。しばらくはあのままはしゃいでいるでしょうから」
リーダー二人とは違い、進化して落ち着きを増したコーティアスは冷静だった。
「そうね、これ、昨日言っていた設計図よ」
「拝見いたしますね」
ユキとコーティアスははしゃぐ二人を無視し、テーブルに設計図を広げる。
「見たことのない形ですね」
「長屋っていうのよ。ゴブリンやコボルトは集団で生活するってルノ達に聞いたから、この村でも今まで
通り過ごしてほしいと思ったの」
「お心遣い感謝します。確かに私達ゴブリンは皆家族のようなものですから、他のゴブリン達も喜ぶと思
います。早速作業に取り掛かりますね」
そう言ってコーティアスは出て行ってしまった。
「コーティアスは仕事が早くて助かるわ。それに比べてこいつ等は」
アーネストとフェイトフルはコーティアスが出て行ったことにも気づかず、己の肉体美を見せつけあっている。
「はい!そこまでよ二人とも!今日もやる事たくさんあるんだから」
二人ははしゃぐのを止め、ユキの話を聞き始めた。
「二人は私についてきてもらうわ」
「どこに行くんだ?」
「また狩りに行くのか?」
「いいえ、今日は町に行くわ」
ユキの言葉に二人は驚き、あきれた表情を見せた。
「おいおいユキ、流石に冗談キツイぜ」
「魔物である俺達が人の町に入れるわけがないだろう」
二人は心底あきれた様子を見せる。
「いいえ、入れるわ。私は冒険者ギルドに登録しているの。冒険者ギルドに登録している者は従魔の登録
ができ、登録した従魔は自由に町を出入することが可能になるわ」
二人はなるほどといった表情で聞いている。
「今日は魔物の素材の買い取りと、依頼の受注、後、村の再建に必要な者の買い出しに行くわ。二人には
それぞれの種族がどんなものを好むかを教えてほしいの」
アーネストとフェイトフルはお互いの顔を見合わせ、頷いた。
「わかった。ついて行こう!」
二人の了承が得られたので早速支度を始めた。
「なぁ、ユキ、俺達がいかなくてもルノ達を連れていきゃあ良いんじゃねぇの?」
支度中に待っていたフェイトフルが話し始めた。
「確かにそうだな。ルノ達は俺達種族についても詳しいのであろう?」
ユキは少し顔をしかめ、ゆっくりと話し始める。
「ルノとルナは元々はあの町に住んでいたの。でも人間たちの迫害にあい、仲間を殺され、ここに逃げて
きたのよ」
話を聞いた二人も顔をしかめる。
「すまない、軽率だった」
「いいのよ、いずれは話そうと思っていたことだから」
話している間にユキは支度を終え、家の外に出る。
「コーティアス、私たちは出かけるからここをよろしくね」
指示を出していたコーティアスに声をかける。
「かしこまりました。いつ頃お戻りになられますか?」
「そんなに遅くはならないと思うわ。昼食を用意してあるから、昼になったら倉庫の中のマジックボック
スの中を見て。それと、今日は作業が終わってもゴブリン達を返さないで頂戴。名を授けたいから」
「畏まりました。いってらっしゃいませ」
コーティアスに見送られ、三人はワープで町のはずれに飛んだ。
「ワープとは便利なものだな」
「俺様はじめてワープしたぜ!」
はじめての体験に感動している二人をなだめ、門まで連れていく。
門に近づいていくにつれ、門番たちがアーネスト達の姿に気づき、警戒し始める。
「そこの者止まれ!」
門前に着いたところで門番に止められる。
「連れている魔物は従魔か?登録はしているのか?」
「いえ、従魔ではありますが、登録はまだしていません。なので登録をしたいのですが」
「しばし待て」
門番の一人が町の中に走っていった。
それからしばらくして見覚えのある顔が門番についてやってきた。
「おお!久しいな!ゴブリンとコボルトを連れてきた冒険者がいると聞いて来てみたが、やはりお前さん
だったか」
やってきたのはギルドマスターのオルベムだった。
「オルベムさん!ギルドマスターのあなたがどうしてここに?」
「コボルトキングとゴブリンジェネラルを連れた冒険者が来たと聞かされてな、他の奴らに任せられる案
件じゃないと判断したんだ」
「それはお手数おかけして申し訳ありません。二人は私の従魔で、登録をしたいのですが」
「ああ、分かっている。ついてこい。続きはギルドで話そう。
オルベムに連れられ、三人は冒険者ギルドに向かう。
冒険者ギルドに向かう間、ジロジロと視線を感じたが、この町では従魔を連れている冒険者は珍しくないようで、パニックになるようなことはなかった。
「さあ、入れ」
オルベムに案内され、冒険者ギルドの奥の部屋に入る。
「それで?コボルトどゴブリンの従魔登録はしてやるが、用件はそれだけなのか?」
オルベムにはお見通しのようだ。
「素材の買い取りもお願いします」
「どれ!見せてみろ!」
珍しい素材が見れると思い、オルベムはニカッと笑う。
ユキはアイテムボックスから素材を取り出す。
「おお!こりゃまた随分と多いな」
「ホーンラビットとアイアンディアの角が三本ずつと、ロックバードの羽とクチバシ、後はデッドブルの
角と毛皮です」
「何!デッドブルだと!」
オルベムは興奮し、デッドブルの角をまじまじと見る。
「本物だな。ここまで綺麗なものは初めて見るぞ!」
オルベムはしばらく素材を観察し、鑑定に回した。
「受付付近で待っていてくれ、すぐに買い取り金を用意させる」
ユキ達は言われた通り受付付近で待つことにした。
「お久しぶりですね」
待っていると、ユキが初めて冒険者ギルドに来た時に対応してくれた受付嬢に声をかけられた。
「ギルド長が大興奮してましたよ!いい素材が手に入ったって」
「お騒がせしてすみません」
「いえいえ、お気になさらず。それより立派な従魔ですねカッコいいです」
「怖くありませんか?」
「全然!私小さなころから魔物が大好きで、冒険者が連れてる従魔を見るためにここで受付嬢やってるん
です!」
「そうなんですね。二人とも大きいので怖がられないか心配だったんです」
受付嬢と話をしていると、ギルドマスターがやってきて受付嬢を怒鳴りつけた。
「こら!マリア!こんなとこで脂売ってないで仕事しろ!」
「はっはい!」
受付嬢は声に驚き、仕事に戻ってしまった。
「すまねぇな、あいつは孫娘なんだが、魔物に目がなくてな」
どうやらマリアという受付嬢はオルベムの孫だったらしい。
「いえ、楽しかったですよ。従魔のことも褒めていただきましたし」
「そうか。それよりも、これが今回の買い取り金額だ。買い取り手数料を引いて金貨3028枚だ」
前回の買い取り金額よりもはるかに多い金貨の枚数にユキは驚く。
「一番はデッドブルの角と毛皮だな。アイアンディアの角も不足していたから高値が付いた」
ユキは金貨が入った袋を受け取り、アイテムボックスにしまう。
「ありがとうございます。それと、もう一つお願いがあるのですが」
「なんだ?」
「次に来る時までに、依頼の選別をしていただけませんか?自分ではよくわからなくて」
「ああ、わかった。選んでおこう」
オルベムに見送られユキ達は買い物に出かけた。
ユキの鑑定日記
ゴブリンロード:知能が高く、ゴブリン達を統率する才能に長けている
ゴブリンジェネラル 通常のゴブリンよりもはるかに大きく、戦闘に特化した個体
コボルトキング コボルトの最終形態であり、武器の扱いに長けている




