村の再建は住人と共に
ホブゴブリンのアーネストとホブコボルトのフェイトフルは、一旦仲間を引きつれそれぞれの縄張りに戻った。
ユキ達もその日ははやく就寝し、これから始まる村の再建のために体力を回復させた。
ー次の日ー
まだ日が昇り始めた頃、外の物音でユキは目を覚ました。
(なんの音?)
恐る恐る扉を開き、外の様子を確認したユキは、異様な光景に驚いた。
外には大量のゴブリンと、それを指揮するアーネストの姿があった。
ゴブリンたちは半壊した家の解体し、再建する資材を集めていた。
「アーネスト、どうしたの?こんな朝早くから」
ユキはアーネストに声をかけ、状況確認をする。
「ユキ!すまない、起こしてしまったな」
「大丈夫よ、気にしないで。それより何をしているの?」
「昨日村の再建を手伝うと言っただろう?俺も他のゴブリンたちもユキに恩返しがしたくていてもたって
もいられなくてな、迷惑になるかもしれんと思ったが、来てしまったんだ」
アーネストの表情からは気持ちの本気度が伺える。
「ありがとう。今はどこまで進んだの?」
「今は再建不可能と判断した家を解体してるんだ。勝手に判断したんだが、大丈夫だったか?」
「もちろん!建物の再建に関してはアーネストとフェイトフルに任せようと思っていたから」
「よかった!しかし、解体した建物からとれる素材だけで新しく立て直すにも限度があるな。ゴブリンた
ち数名は木の伐採に向かわせた方が良さそうだ」
「ああ、それなら丁度いいものがあるわ」
ユキは森の外へのルート開拓の時に伐採した木を村はずれに置いておいたのだ。
「おお!これだけ大量の木材があれば、大丈夫そうだ!」
アーネストはゴブリンたちに指示を出し、木材を村の中まで運ばせる。
「またユキに助けられてしまったな!後は任せてユキはもう少し休んでいてくれ!」
アーネストは胸を張り、もう任せてくれて大丈夫だと言わんばかりの目で見つめてくる。
「じゃあアーネスト、一つ頼みごとを聞いてくれないかしら?」
「なんだ!なんでも言ってくれ!」
ユキはゴブリンたちに運ばせた木材よりも二回りほど大きな木を指さして言った。
「これを使って大きなテーブルを作ってほしいの」
「ああ、わかった!任せてくれ!」
アーネストは自分よりもはるかに大きい木を軽々と持ち上げ、村の中に運び入れる。
「じゃあ、後は任せたわよアーネスト。みんなが腰掛ける用の椅子も忘れずにお願いね」
「ああ!任された!」
ユキはアーネストにテーブルと椅子作りを任せ、家の中に入る。
「さてと、みんな頑張ってくれてることだし、朝食でも用意しようかな」
ユキはアイテムボックスからデッドブルの肉を取り出し、調理を開始した。
まずは大きな肉の塊に味付けをして焼き、薄く切り分ける。
「ローストビーフ、初めて作ったけど結構うまくできてるわ」
ローストビーフをパンにはさみ、ローストビーフサンドを作る。
「次はカツサンドにしよう」
デッドブルの肉に下味をつけ、とき卵にくぐらせ、硬いパンを削って作ったパン粉をまぶす。
深めのフライパンに油を注ぎ、弱火で肉を揚げる。
きつね色になったら一度とりあげ、今度は高温の油でサッと揚げる。
「うん、二度揚げしたからサクサクでジューシーね」
牛かつをすべて上げ終わったユキは、ずっと感じていた視線のほうに目をやる。
「おいで、早起きしたご褒美に味見させてあげる」
窓からのぞいていたコボルトの子供を呼ぶ。
「ユキ様!おはようございます!」
「おはよう。朝から元気一杯ね。あなたがいるってことは、フェイトフルたちも来たのね」
「うん!お手伝いしに来たんだ!」
「ありがとう。じゃあ、口を開けてくれる?」
ユキはコボルトの子供の口に余ったローストビーフを入れる。
「おいしい!ユキ様これなあに?」
「ローストビーフよ、後でもっと食べさせてあげるからね」
コボルトの子供は尻尾をブンブンと振り、嬉しそうにしている。
「ユキ様!オレは何を手伝ったらいい?」
キラキラと期待に満ち溢れたような目で見つめてくる。
「じゃあ、二階で寝ているルノとルナを起こしてきてくれる?」
「わかった!」
ものすごい勢いで会談を駆け上がり、ルノ達を起こしにいった。
「さて、もう二品ぐらい作った方がいいわね」
ユキはスープとサラダを用意して、冷ましていたカツをパンに挟んだ。
大皿に盛りつけて、スープを注ぐ。
全てを盛り付け終わった後に、ドアが開き、アーネストとフェイトフルが入ってきた。
「ユキ!出来上がったぞ!」
「俺様も手伝ったんだぜ~、ユキ」
ユキは二人に連れられて、出来上がったテーブルと椅子を見に行った。
「すごい!こんな短時間でつくれるなんて」
大きなテーブルが4つに、丸太椅子が6つ、小さい丸椅子が10コもできていた。
「まあ俺様からしたらこんなもん作るのなんて朝飯前なんだよ」
「おぉ!確かにまだ朝飯を食べていなかったな。フェイトフルお前うまいこというな」
「う、うるせぇよ!お前は!」
アーネストに変にツッコまれ、フェイトフルはうろたえる。
「準備は整ったわね。アーネスト、フェイトフル、みんなを集めてきてくれる?」
アーネストとフェイトフルは作業をしていた仲間を集める。
その間にユキは、テーブルに作った朝食を運んだ。
コボルトもゴブリンも全員が席に着き、起きてきたルノ達も眠い目をこすりながら席に着く。
ユキも席に着き、手を合わせた。
「いただきます」
「いただきまーす!」
見たことのない行為にゴブリンたちは困惑している。
「ルノ、今のはなんだ?いただき?」
「ああ、ユキの国の言葉で、食べ物に感謝する行為なんだって」
「そうか、食べ物に感謝か」
アーネストがぎこちなく手を合わせると、他のゴブリン達も真似をして手を合わせる。
「俺様達もするか!」
フェイトフルの言葉にコボルト達も手を合わせる。
「いただきます!」
全員が合掌をし、食べ始める。
「どうぞ、たくさん食べてね」
豪華な食事に戸惑うゴブリン達を横目にルノ達はガツガツと食べ始める。
「うまい!ユキこれなんだ?サンドウィッチの中のやつ!」
「レッドブルのローストビーフよ」
「美味しいです!ユキさん」
美味しそうに食べるルノ達を見て、アーネストとフェイトフルがサンドウィッチを手に取り、一口。
「う、うまい!」
「なんだこれ!めっちゃウメェじゃねぇか!」
アーネスト達が食べたことで他のゴブリンやコボルトも食べ始める。
「おいしい!」
「うめぇ!」
サンドウィッチやスープを食べて、ゴブリンは口々に言い始める。
「ユキ!感謝するぞ!村の土地を分けてくれるだけでなく、こんなにおいしい食事まで用意してくれると
は!」
「ほんとほんと、感謝しかねぇぜ!」
「これからはみんなでご飯を食べましょう?ご飯は大勢で食べる方がおいしくなるから」
「それではユキに負担がかかってしまう」
「じゃあ、ゴブリン達に料理を教えるわ。それなら私の負担も減るし、いいでしょ?」
「ユキがいいって言ってんだから、好きにさせたらいいだろ?」
「ユキがいいなら良いんだが」
あっという間に食べ終わり、手分けをして片づけをした。
ゴブリン達は家の再建作業にもどり、ユキは森に行く準備をする。
「ユキ!どこか行くのか?」
準備をしているとアーネストが声をかけてきた。
「森に行くの、食料の調達をしにね」
「お!狩りに行くのか!俺様もついてくぜ!」
盗み聞きしていたフェイトフルが言い出した。
「俺様、建築苦手でよ、ここにいてもすること無ぇし、狩りの方が得意だからよ!」
「なら俺も行こう。狩りは人数が多ければ多いほどいいからな!」
「二人がここを話られたら誰が支持を出すの?」
「それなら心配ないぞ!ゴブリン達は支持をしなくとも問題なく作業してくれる」
アーネストもフェイトフルも行く気満々で、何を言っても聞かなそうだ。
「わかったよ、ついてきて」
ユキはアーネストとフェイトフルを連れて森に入った。
「二人には結界を張ったから、ある程度の攻撃は防いでくれると思うけど、ケガしないように気をつけて
ね」
「ああ!心配するな!」
「わかってんよ」
三人は森の奥へと足を運ぶ。
「ユキは魔法で戦うのか?武器は持ってねぇよな?」
「一応持ってるよ、ショートソードだけど。戦うときは魔法を使うからあまり使わないけどね」
「ユキは魔法の才があるのだな。ゴブリンの中にもメイジに進化する者はいるが、元々それほど魔法は得
意ではない所属だからな」
「コボルトも魔法はあまり使わねぇな」
他愛のない話をしながら、獲物を探す。
するとフェイトフルが何かに気づき足を止める。
「いるぜ、三匹だな。ホーンラビットか?」
耳の良いフェイトフルがいち早く気づき、アーネストが探りに行く。
「いたぞ。ホーンラビットではなく、アイアンディアだな」
<鑑定:アイアンディア 鉄のように硬い大きな角を持つ鹿の魔物>
「あれって食べれるの?」
「ああ、うまいぜ!」
「早速狩りに行こう」
アーネストとフェイトフルは茂みから飛び出し、アイアンディアめがけて突っ込んでいく。
「ちょっと!」
ユキは慌てて止めようとするが、ユキの心配とは裏腹にあっというまに倒してしまった。
「おう!ユキ!終わったぜ!」
二人は手際よく血抜きを始めている。
ユキは二人の元へ近づき、血抜きの済んだアイアンディアをアイテムボックスに入れる。
「驚いたよ。二人とも意外と強いんだね」
「一応俺達はCランクだからな。ホーンラビットやアイアンディアくらいなら難なく倒せるぞ」
「そもそも強くないとホブコボルトに進化できねぇからな」
魔物とは生まれ持った才能で進化先が決まるらしい。
才能がないと進化できないため、ほとんどの下級魔物は進化できずに死んでいくらしい。
「これなら心配いらないわね。私は奥に行って大きな魔物を狩ってくるから、二人は小さな魔物を狩って
てくれる?」
「ああ、かまわないが、俺はユキの狩りも見てみたいな」
「俺様も気になるぜ!魔法も見てみてぇしな!」
「わかったよ、ついてきて」
さらに奥に進み、大きな魔物を探す。
「いたぜ!ありゃあ、ロックバードだな」
<鑑定:ロックバード 大きなクチバシで岩を咥え、攻撃してくる。羽やクチバシは高値で売れる>
「ロックバードはBランクの魔物だ。俺達が協力して戦っても無事ではいられないレベルだな」
「二人とも下がってて」
ユキは静かに立ち上がり、構える。
<ライトニング・アロー>
光の矢はロックバードの頭を貫き、声を上げる間もなく倒れた。
「やべぇな。ロックバードを一発で倒しやがった」
「一発で倒せるならかわいいものよ。キンググリズリーもデッドブルも一発では仕留められなかったか
ら」
ユキの実力に驚き、二人は言葉を失う。
「さあ、どんどん狩っていきましょう」
それからもユキ達はロックバード、アイアンディア、ホーンラビットなど様々な魔物を狩った。
「今日はこれぐらいにして、そろそろ帰りましょうか」
全ての魔物の血抜きを済ませ、アイテムボックスに入れ、村に帰った。
ユキの鑑定日記
アイアンディア:鉄のように硬い大きな角を持つ鹿の魔物
ロックバード:大きなクチバシで岩を咥え、攻撃してくる。羽やクチバシは高値で売れる




