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説教したら、大所帯になりました。

風魔法を習得したルノのさらなる成長を求め、ユキ達は森の中へと入っていった。

「二人とも、結界魔法をかけてるから大丈夫だと思うけど、私の側から離れないでね」

ルノとルナはユキが羽織っているローブの端を掴み、ついていく。

「ユキ、どこまで行くんだ?」

「お昼なのに真っ暗で怖いです」

あまりの森の暗さに怖くなってきたのか、二人はローブの端を強く握る。

「もう少しよ」

森に入ってしばらく歩いたところで急にユキが足を止める。

「?どうしたんだ?」

「シッ!静かにして」

ユキの見つめる先には大量のゴブリンの住む、集落があった。

三人は草陰に身を潜める。

「あれってゴブリンだよな。しかも集落まで作ってるじゃん」

「ホブゴブリンもいますよ」

<鑑定:ゴブリン 下級の魔物。食材にも素材にもならないため、下級冒険者の狩りの練習台にされる>

<鑑定:ホブゴブリン ゴブリンの進化系。稀に魔石を持っていることがある>

「この前森に入った時に見つけたの。このまま集落を大きくされても困るし、下級の魔物なら、ルノの魔

 法の練習台にできるかなと思って」

集落には約50匹のゴブリンがおり、集落はとても大きくなっていた。

「でも、ゴブリンは人型だし、倒しちゃうのも心苦しいのよね」

「ゴブリンはゴブリンだろ?俺達獣人の相手にならねぇよ」

ルノが一匹のゴブリンに向けて魔法を放とうとした時だった。

ウウォーン!

大きく吠えながら大きな狼の魔物が現れた。

「あれは何?何かゴブリンと言い合っているみたいだけど」

「あれはコボルトだ。ゴブリンとはよく縄張り争いをするんだよ」

<鑑定:コボルト 狼のような見た目をした魔物。食材にはならないが、毛皮は愛用されている>

「なんて言っているのかしら」

「なんか縄張りがどうのこうのって言ってるぞ」

「ルノ、言葉がわかるの?」

「オレ達も一応魔族だぞ?それにコボルトもゴブリンも種族的には近いからな、少しは聞き取れる」

「便利ね、私も聞き取れたらいいんだけど」

久しぶりに機会音のような声が頭に鳴り響く。

<スキル:意思疎通を獲得しました>

<スキル:意思疎通 人間、魔物すべての種族とコミュニケーションをとることができる>

「あっ、私もわかるようになったわ」

「なんでですか?」

「スキルを手に入れたからよ。これでコボルト達の会話も聞けるわ」

ユキはコボルト達の会話に耳を澄ます。

「ここは俺たちの縄張りだ!狼野郎が出入りしていい場所じゃないぞ!」

「うるせえよゴブリンのくせに!そもそもここは俺たちコボルトの縄張りだ!」

「俺はホブゴブリンだ!先に集落を築いたのは俺達だ!だから俺達の縄張りだ!」

「後から入ってきたくせによく言うぜ!よそ者のくせにデケェ面しやがって、今日こそ決着つけてやる」

ホブゴブリンとコボルトが喧嘩を始める。

「要は、縄張り争いね。どっちの種族も数が増えて住む場所が限られているんだわ」

ホブゴブリンとコボルトの喧嘩はさらにヒートアップし、周りのゴブリンたちも怖がっていた。

「見てられないわ、互いのリーダー同士が喧嘩をして、仲間を置いてけぼりにするなんて」

ユキは突然立ち上がり、ゴブリンの集落へと足を踏み入れた。

「ゆっユキ!何してんだよ!」

「危ないですよユキさん!」

ユキの行動にルノ達は慌てて止めようとするが、ユキは止まらなかった。

「あなた達いい加減にしなさい。各種族のリーダーとして恥ずかしいとは思わないの?」

いきなり現れて説教をし始めたユキに驚き、コボルトとホブゴブリンは喧嘩をやめた。

「なんで人間がこんなところにいんだよ!」

「私はユキ、この近くの村の村長をやっている者よ」

ユキは丁寧に自己紹介をした。

「人間のくせに俺達の言葉がわかるのか!」

「あなた達は縄張り争いをしているのでしょう?理由を聞かせてくれない?」

「人間のお前に教える義理はねぇ!」

「あなた達は喧嘩ばかりして、根本的な問題が何も解決してないじゃない」

ユキの言葉が図星すぎて、コボルトもホブゴブリンも口をつぐんだ。

「だから理由を聞かせてちょうだい」

しばらく沈黙がつづいたが、ホブゴブリンのほうがあきらめたように口を開いた。

「俺達の種族は人間に住処を追いやられ、この森にやってきたんだ。最初は小さな集落だったんだが、他

 の奴らも人間に住処を奪われ逃げてきて、そいつらを招き入れている内に大きな集落になってな。子供

 も生まれ、集落の拡大をしたいのだが、この近くにはコボルトの集落もあるから、どっちの種族が土地

 を使うか、毎日のように言い争っていたんだ」

コボルトはホブゴブリンのとなりで深く頷いている。

「なるほどね、事情はわかったわ。でも、この森は広いでしょ?言い争う必要なんてないと思うけど」

今度はコボルトの方が口を開いた。

「わかってねぇな人間!この森には俺達よりもはるかに強い魔物たちがうようよしてるんだぜ、この場所

 以上に安全な場所なんてねぇんだよ!」

コボルトはイライラしながら答える。

「それなら、私がその強い魔物を倒してきてあげるわ」

「お前のような弱小小娘がかなうわけないだろう」

コボルトもホブゴブリンもユキのことを馬鹿にしているようだった。

「ユキは弱くなんてないぞ!お前らなんか相手になんねぇよ!」

ユキを馬鹿にされたことで、隠れていたルノが怒りながら飛び出してきた。

「ユキは魔法も使えるし!ポーションも作れるんだぞ!キンググリズリーだって倒したんだからな!」

ルノは顔を真っ赤にして怒っている。

「なんだお前獣人族じゃねぇか!なんで人間と一緒にいんだよ!」

「それよりも、その小娘キンググリズリーを倒したのか?」

「そんなの嘘に決まってんだろ?人間の小娘ごときがキンググリズリーを倒せるわけねぇよ」

「だが最近この近くをうろついていたキンググリズリーが突如としていなくなったんだ。もしその小娘が

 倒したというはなしが本当なら、」

「ああそういえば、この近くだわ、キンググリズリーを狩ったの」

「マジかよ、信じらんねぇ」

「これなら信じられるかしら」

ユキは持っていた短剣に光魔法をまとわせて見せる。

「光魔法だと!じゃあ本当にキンググリズリーを狩ったのはこの娘なのか!」

光魔法を使うユキにコボルトもホブゴブリンも後ずさる。

「安心して、敵意のないものをむやみに傷つけたりしないわ」

ユキは光魔法を消し、短剣をしまう。

「ほらな!ユキは強いんだよ!さっきの言葉は撤回しろ!撤回!」

ユキはいきり立つルノをなだめて隠れているルナとダクネスをよんだ。

「なんだよ!まだ仲間がいんのか⁉」

「だが、魔物と魔族だぞ。この娘は何者なんだ」

「だから、私はこの近くの村の村長よ。そしてあなた達の抱えている問題を解決する方法を持っている者

 でもあるわ」

「俺達の抱えている問題を解決する方法だと?」

「あなた達は仲間の住む安全な場所を求めているのよね?だったら私の村に住めばいいわ」

コボルトもゴブリンも驚いた表情をしている。

「私の村には今、私とここにいる二人と使い魔しか住んでいないの。私の村はそこそこ広いし、ゴブリンもコボルトもある程度の数なら暮らすことができる、安全も保障するわ」

「悪くない話だが、うまい話すぎて信じられないな」

「もちろん見返りはいただくわ。あなた達は集落を建設する技術を持っているのよね?私の村には半壊し

 た家がほとんどで、私たちは再建するすべを持っていないの。だから、あなた達には村の建物の再建を

 手伝ってもらう。その代わりに、私はあなた達の仲間を村に住まわせる。これでどうかしら?」

コボルトとホブゴブリンは悩んでいたが、背に腹は代えられないといった表情でユキの条件をのんだ。

「これで交渉成立ね。ついでにあなた達の集落の周りにも結界を張っておいてあげるわ。敵意のある魔物

 が近寄ってこれないようにね」

ユキはゴブリンたちの集落に結界を張った後、コボルトの集落に行き、結界を張った。

「ユキといったか?何から何まですまないな、本当に感謝している」

ホブゴブリンが感謝の気持ちを示してくれた。

「同じ森に住む者同士、困ったときはお互い様よ」

ユキはホブゴブリンとコボルトを村に案内し、それぞれの種族を数人ずつ連れて行った。

「本当に広い村だな」

「家はボロいし、半壊してっけどな」

ホブゴブリンとコボルトは仲間を引きつれ村を見て回った。

一人戻ってきたホブゴブリンがユキの前に跪いた。

「ユキ、俺はお前の行為に感謝し、忠誠を誓う。どうかこれからもゴブリンたちをよりしく頼む」

ユキは断ろうとしたが、ホブゴブリンの本気の眼差しに負け、受け入れることにした。

契約を交わしたホブゴブリンの方に水色の紋章が浮かび上がる。

それに気づいたコボルトが走って近づいてくる。

「おい!なに抜け駆けしてんだよ!ユキ!俺も忠誠を誓うぜ!俺はこう見えても、義理がたいんだぜ」

ユキはコボルトの忠誠も受け入れ、ホブゴブリンとコボルトを眷属にした。

「ユキ、俺達に名を授けてくれ」

「カッコイイので頼むぜ!」

ユキは少し悩んだ後、二人に名を授けた。

「ホブゴブリンのあなたがアーネスト、コボルトのあなたがフェイトフル、でどうかしら?」

「アーネストか気に入ったぞ!」

「俺もだぜ!なんか意味でもあんのか?」

「アーネストは真剣で熱心、誠実という意味で、フェイトフルは義理堅いという意味よ。二人の性格にぴ

 ったりだと思ったの」

二人はとても気に入ったのかにやけ顔を隠せていない。

ホブゴブリンとコボルトのリーダーを眷属にしたことで、自然とその配下にいるゴブリンたちもユキの眷属となり、村はあっという間に大所帯となったのだった。

ユキの鑑定日記


ホブゴブリン:ゴブリンの進化系。稀に魔石を持っていることがある

ゴブリン:下級の魔物。食材にも素材にもならないため、下級冒険者の狩りの練習台にされる

コボルト:狼のような見た目をした魔物。食材にはならないが、毛皮は愛用されている

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