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ブレイン王国での逃亡Part3

逃亡生活二日目。


テナートは既に隣町を離れ、さらに遠くの田舎町へ来ていた。


「はぁ……はぁ……」


肩で息をする。


昨日の襲撃。


そしてその後も寝ずに逃げ続けた結果、身体に限界が来ていた。


「ここまで来れば……流石に追って来れないだろ……」


顔色は最悪。


「まずは宿だな……」


だがここで問題がある。


ここはブレイン王国。


宿。馬車。公共機関。


そういう場所を使えば位置がバレる可能性がある。


「いや100パーバレるだろうな」


「どうしたものか……」


そう考えていたのも束の間。


「あら」


優しい声。


「随分とお疲れのようですね」


その言葉に背筋が凍る。


「…………」


沈黙。


恐る恐る振り返るとやはりそこにいたのは黒衣の女。


「お……おかしい」


テナートが後退る。


「昨日の奴らは振り切ったはずだ!」


「一日逃げ続けた俺に追いつくなど不可能のはず…」


「お前はどこから湧いてきた?!」


テナートが指をさす。


女は首を傾げた。


「はい?」


平然と言う。


「私はずっとこの街にいましたよ」


「……は?」


意味が分からない。


女は丁寧に一礼した。


「申し遅れました」


「《月華》所属」


「ミツバと申します」


「以後、お見知りおきを」


テナートが頭を抱える。


「その月華とかいう組織は一体何人いるんだよ……!」


ミツバが微笑む。


「それについてはお答えできかねます」


ミツバが言う。


「大人しく投降すれば」


「痛い目を見ずに済みますよ」


テナートが即座に否定する。


「冗談言うな!」


「俺はお前のお仲間に殺されかけてんだぞ!」


「そんな戯言信用できるわけがないだろ!」


ミツバが困った顔をする。


「うーん……」


「私はシグレたちほど過激じゃないんですけどねぇ」


テナートの脳が回る。


(…なるほど、まだ話の通じるタイプか)


今の体力で戦闘は避けたい。


なら。


爽やかな営業スマイル。



「どうだ?」


「俺と取引しないか?」


「取引?」


「ああ」


テナートが指を立てる。


「内容は二つ」


「まず一つ目」


ジャラッ。


金袋を出す。


「今見逃してくれるなら、ここにある大金を君にプレゼントしようじゃないか」


「……それで?」


「最も」


「二つ目の方が本命だ」


テナートが懐へ手を入れる。


ミツバの表情が変わる。


「……なっ!?」


次の瞬間。


取り出されたのは炸裂弾。


導火線ギリギリ。


爆発寸前!


「お前らが誰に喧嘩売ったかを知らしめるために」


超速投擲。


「月華のマヌケ共の見せしめになってもらいたくてなぁ!」


「っ!」


ミツバが咄嗟に回避。


ドゴォンという音共に爆煙が舞う。


視界ゼロがゼロになる。


「……どこだ?!」


ミツバが周囲を見渡す。


姿がない。


「逃げられたか!」


即座に追いかけようとすると。


後ろから影が見える。


「なっ!?」


ドゴッ!!


レガリアによる峰打ち。


計算され尽くした見事な不意打ちだった。


「ぐっ……!」


ミツバが倒れ込む。


「へっ」


テナートが鼻で笑う。


「まだまだ青いな」


「取引なんてどうせ断られるに決まってるし」


「逃げるよりも仕留めた方が早い」


「俺の方が一枚上手ってことだ」


そして踵を返す。


「さーて」


「増援が来る前に逃げますか」


テナートがその場を去ろうとする。


がしかし。


違和感。


「……んん??」


鼻を動かす。


「なんだこの匂いは…」


焦げ臭い。


いや。


違う。


「……火薬か!?」


視線を下げる。


黒い粉。


大量。


足元一面。


「まさか…!」


「私の方が一枚上手だったかもしれませんね」


「なんですとぉ!?」


倒れていたはずのミツバが立っていた。


手にはマッチ。


「おい待て!!」


テナートの顔が引きつる。


「考え直すんだ!!」


「お前も巻き込まれるぞ!?」


ミツバが笑った。


優しく、狂気的に。


「死なば諸共ですよ」


「さようなら!小物王子様!」


着火。


ドゴォォォォンという爆発音と共に両者ともに吹き飛ぶ。



爆発から数秒後。


「げほっ……!」


ボロボロのテナート。


煤まみれ。


髪も焦げてる。


「イカれてやがんのかあいつ……!」


だが。


辛うじて生きていた。


《グレン・レガリア》で衝撃を軽減していたのだ。


「聖剣がなかったらヤバかったな……」


立ち上がり、少しふらつくがまだ逃げられる。


「さっさと逃げよう」


テナートは即座に逃げようとするが…


「どこに行くんですか?」


「………」


振り返るとそこには。


直撃したはずのミツバが普通に立っていた。


「ばっ…馬鹿な!?」


「お前はゾンビか!?」


「耐久力には自信ありまして」


「私はどちらかと言うと、テナート様タイプなので」


嫌な親近感だった。


「くそっ……!」


テナートは悟る。


(こんなトチイカれ集団まともに相手してたら命がいくつあっても足りん…)


即決。


「……降参だ」


「?」


両手を上げる。


「今回は俺の負けだ」


「認めよう」


「見事だ」


「こんなイカれた奴らが、うちの国以外にもいるなんて驚いた」


「それは褒め言葉ですか」


「褒めてるわけないだろ」


「馬鹿なのか?」


「煽る余裕はまだあるんですね」


ミツバが捕まえようと近づくが。


テナートが笑う。


「勘違いするな」


指を立てる。


「ヒーローってのはな」


「途中で負けても、最後に勝てば良かろうなのだ!」


「いや、どう考えても貴方はヒーローじゃないでしょ!!」


ミツバがツッコミを入れる。


その瞬間。


テナートが飛んだ。


ちょうど通った荷馬車へ。


「しまった!」


ミツバがすぐさま追おうとするが。


テナートが笑う。


「グッバイ!!自爆女!!」


「頑張ったで賞の意味を込めて貴様にプレゼントを贈ろう!」


贈られてきたのは置き土産の炸裂弾。


「くぅぅぅ…!最後まで嫌味ったらしい!」


炸裂弾に阻まれ、ボロボロのミツバはテナートを追いかけることが出来なかった。


こうして、ギリギリながらもまたしても逃亡に成功したテナートだった。


7話の続き

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