王子、召喚する 前編
14話の続き
結婚式から数ヶ月後のアスカテシア王国。
王城執務室。
「もう嫌だよぉぉぉ……」
机に突っ伏すテナート。
目の前には大量の書類。
終わる気配がない。
「逃げたい……」
「逃げ出したいよぉ……」
「口を動かしてる暇があるなら手を動かしなさい」
冷たい声。
一緒に作業をしていたのは姉セイラだった。
「こんな量おかしいだろ!」
テナートが抗議する。
「我慢しなさい」
「それに、私とメイラルド王女は貴方の倍やってるのよ」
「…………」
「…………くっ」
「で?」
セイラが隣を見る。
「その子誰?」
「パパー!!」
ぴょこん。
テナートの肩に抱き着いてきたのは、未来から来た娘のエアリアル。
「遊んでよー!」
ちなみに、あれからも定期的に未来からやって来ては、ステファニーをボコボコにして帰る。
もはや恒例行事と化していた。
「俺の娘を名乗る謎の少女だ」
「ひどーい!!本当なのに!」
エアリアルが頬を膨らませる。
「まぁ、そういうことにしといてあげるわ」
「あー、おばさん信じてない」
ピキッ。
「……お、おば」
空気が凍る。
テナートが即耳打ち。
「おい、口には気をつけろよ」
「えぇー?」
エアリアルが不満そうに言う。
「だって私からしたら叔母だし間違ってないよ?」
それを聞いたセイラが笑う。
「テナート?」
「は、はい…?」
目が笑っていない。
「娘の教育、ちゃんとしておきなさい?」
「肝に銘じます……」
しばらくして、テナートがふと思いつく。
「そうだ!エアリアル」
「暇なら父さんと勝負するか?」
「え?」
目が輝く。
「何々!?」
テナートが書類を持ち上げる。
「この書類」
半分押し付ける。
「どっちが早く終わらせるか勝負だ!」
「勝てたらご褒美をやる」
「ほんと!?」
「やるやるーー!!」
「コラ」
セイラが即ツッコむ。
「どさくさに紛れて仕事を押し付けない」
「いいだろ、どうせ将来やるんだから」
「これも教育の一環だ」
「ものは言いようね……」
数十分後。
「つまんなーい」
エアリアルが椅子から降りる。
「飽きたぁー」
そして、勝手に本棚を漁り始める。
「コイツ…性格はどちらかと言うと俺似だな」
しばらくして。
「あ!」
エアリアルが本を持ってくる。
「パパー!これ何?」
「なんだよ次から次へと……」
少しイラつきながら受け取る。
だが
「……ん?」
妙だった。
異様に分厚い本。
埃まみれで古臭い。
気になって二人で開く。
そこには大きな文字。
まず、この本を読んでくれた優しいお方へ。
お願いします。私を助けてください。
私はとある神様なのですが、悪い人間によって封印を施され、この本に囚われています。
解放してくれた優しいお方には、対価として願いを一つ叶えて差し上げます。
どうか私を助けてください。
心優しき慈愛の神より
「…………」
「…………解放?」
その先には召喚の方法が記されていた。
「なんとも胡散臭ぇな」
「面白そう!!」
エアリアルの目が輝やかせる。
「召喚しようよ!!」
「おい待て」
テナートが止める。
「こういうのは――」
「何してるのよ」
後ろからセイラ覗き込む。
「これは駄目なやつね」
「えー?なんで?」
エアリアルが疑問を問いかける。
「文面見たら分かるでしょ」
「どう見ても邪神の部類よ」
「悪いことをしてないなら、そもそも封印なんてされないもの」
「触らぬ神に祟りなしよ」
「そっかぁ……」
エアリアルがしょんぼりする。
だがテナートは悪いことを考えていた。
「……いや」
「召喚しよう」
「はぁ?今の話聞いてた?」
「もちろん」
「願い一つ叶えてくれるなんて魅力的だろ?」
「それに、文面からして悪そうな奴には見えないし…」
「それが本当か分からないでしょ」
「そんなこと言ってたらキリねぇよ」
そして、テナートが振り向く。
「エアリアル」
「召喚したいよな?」
「したい!!」
「よし!」
「多数決の原理だ」
「決定権はこちらにある」
「そうだそうだー!!」
二人がドヤ顔で言う。
「このバカ親子……」
「どうなっても知らないわよ」
セイラが頭抱える。
「んで?召喚方法は……」
テナートが読む。
「……は?」
必要素材に竜の牙、フェンリルの爪、アヒルの卵、人魚の鱗だと…!
「集められるわけないだろうが!!」
机叩く。
「意味わからんの混ざってるし!!」
「すごい神様なのかな?」
エアリアル興味津々。
「どうやって集めるの?」
テナートが立ち上がる。
「代用品を集めるぞ、エアリアル」
「おおーー!」
しばらく後。
「よーし、これで揃った」
並べられた触媒。
ヴァルディオスの入れ歯。
使用人が飼っている犬の爪。
鶏の卵。
そして、メイラルドの下着。
「………」
「ねぇ、これバレたらメイラルド王女にぶち○されるわよ?」
「バレたらその時に考えればいい」
「駄目な大人の思考ね」
んで、召喚方法はと…。
最後の記述。
触媒を四方に並べ、その中心に立つ。
そして、決めポーズ(任意)をしながら
「邪神召喚!」と唱えてください。
「……コイツ」
「邪神って隠す気もなく白状したな」
「おい!エアリアル」
「やるー!!」
中央へ立ち、満面の笑みを掲げ。
「邪神召喚!」
渾身の決めポーズ。
その瞬間、部屋が眩い光に包まれた。
次回に続く。




