未来から娘がやってきた!後編
13話の続き
アスカテシア王城深夜。
三人は中庭へ移動していた。
月明かりに静かな風。
そして違いなくらいテンションの高い少女。
エアリアルがきょろきょろ辺りを見る。
「十三年前ってこんな感じなんだ!」
「で、勝負のルールはどうするんだ?」
テナートが問いかける。
「うーん……」
エアリアルが少し考えた末、ぱっと笑った。
「じゃあ、一撃入れた方が勝ちってのはどう?!」
「それでいいだろう」
テナートがレガリアへ手をかける。
だが。
「お待ちください」
ステファニーが前へ出た。
「ここは一度」
「このステファニーにお譲りいただけませんか?」
真剣な眼差し。
「ほぉ」
「確かに、お前もこのままでは終われないか」
「わかった、お前の力、見せつけてやれ!」
テナートはステファニーに快く譲る。
「お任せください!」
ステファニーが剣を抜く。
「最初はステファニーなんだ!」
「準備運動にはちょうどいいね!」
ピキッ。
ステファニーの額に青筋。
「小娘風情が……舐めおって」
(ステファニーさん本音漏れてますよ…)
エアリアルもレガリアを構える。
エアリアルのレガリアは、テナートやヴァルディオスとは違い、まさに聖剣と呼ぶべき美しい剣だった。
「先手必勝!」
動いたのはエアリアル。
「かかってきなさい!」
ステファニーは正面から迎え撃つ。
ガキィン!!
激しい剣撃。
ステファニーが捌いているように見えた。
がしかし
「ぐおおおぉぉ……!」
押されている。
(あのステファニーが……!)
テナートの腰が少し引ける。
「どうしたの?!」
「これじゃいつもと変わらないよ!」
「言わせておけば……!」
「坊ちゃまみたいなことを言いおって…!」
流石はテナートの娘、煽り性能も一級品。
そして。
「隙あり!!」
キィィィン!!
ステファニーの剣が弾かれる。
「なっ!」
だがテナートは違和感に気づく。
(あいつ……わざと弾かれやがったな)
その証拠に口元が少し緩んでいる。
(いい大人が子供相手に不意打ちとか大人気なねぇな)
テナートが呆れる。
「なんとでも言ってくだされ!」
「勝てばよかろうなのだ!!」
袖から暗器が飛び出す。
がしかし。
キィン!
不意打ちにも関わらずエアリアルはノールックで暗器を弾く。
「なにぃ!?」
「もしかしてこれだけ?」
エアリアルが余裕そうに欠伸をする。
「えぇい!!なりふり構ってられん!」
ステファニーがヤケになる。
服の中から大量の暗器が飛び出す。
「なにそれ怖っ」
テナートですらドン引きしていた。
「ふん!」
キィン!!キィィィン!!
しかし、エアリアルは何事もなく全ての暗器を正確に弾き返す。
「馬鹿な……!?」
次の瞬間。
気づけば、エアリアルのレガリアがステファニーの首元にあった。
勝負あり。
「未来のステファニーはね」
「暗器だけじゃなくて、もっと色々仕掛けてくるんだけどなぁ」
少しもの寂しそうに言う。
「そんな…………」
ステファニーが崩れ落ちる。
「す……ステファニー!!」
テナートが駆け寄る。
プライドを捨ててまで卑怯な真似をしたのにも関わらず、当然のようにガン処理されたステファニーは、生きる屍と化していた。
テナートが肩へ手を置く。
「お前の敵は俺が取ってやるから…!」
テナートがレガリアを抜く。
「やっとパパとやれる!!」
「待たせたな」
テナートが構える。
「パパのレガリア久しぶりに見た!」
「楽しみ!」
エアリアルが目を輝かせた。
「へっ!言っとくが」
「俺はステファニーと違って卑怯全開で行くからな!!」
開幕卑怯宣言。
「いいよ!いくらでも来て!!」
「後悔するなよ!」
ブワッ!!
テナートの懐から布が飛びだす。
視界遮断。
エアリアルが即座に斬り裂く。
「ふん!」
だがテナートはもういない。
「……どこ?」
すると、辺りの地面に大量の煙玉が転がる。
「わぁ!」
煙幕により視界がゼロになる。
「うぅ……煙たい……」
エアリアルが煙に気を取られている瞬間。
正面から飛来物。
ひょい。
エアリアルが何事もなく避ける。
「なにこれ?」
拾ったのは囮の木の枝。
その背後、テナートが奇襲をしようとするも。
キィィィン!!
エアリアルはわかっているかのように、ノールックで刃を受け止める。
「コイツ!後ろに目でもついてんのか!?」
エアリアルが笑う。
「やっと近くに来てくれたねパパ!」
テナートは煙の中に逃げようとするが、エアリアルが見失うことなく追いかけてくる。
「バケモノめ…!」
そのまま切り合いにもつれ込むが。
「凄い!」
「やっぱりパパ強いんだ!!」
意外にもテナートが抗っていた。
「おまえ!その剣術誰に習った!?」
(この俺が将来脅威になる存在に剣術を教えるわけがない)
「ほとんどおじいちゃんが教えてくれたよ!」
即答。
(あのジジィ!自分のこどもには厳しいくせに、孫には甘いタイプかよ)
テナートが距離を取る。
(たしかに近接戦では隙が全くない…)
(けどやりようはいくらでもある)
そう考えた瞬間。
「このままだと埒明かないね」
エアリアルが鞘へ手を伸ばす。
「だから…本気出すね」
「なんだと?」
抜かれるもう一本の剣。
「……な」
「なにぃぃぃぃ!!?」
テナートはその剣に見覚えがあった。
「どう?かっこいいでしょ!」
聖剣だった。
「チート武器の二刀流だとぉ!」
「いくよー!」
エアリアルが聖剣を交差させる。
「冗談じゃない!」
テナートは明後日の方向に逃走しようとするが。
「どこに行くのパパ?」
物凄い機動力でエアリアルが正面に回る。
(おわった…)
テナートは一撃を受ける覚悟を決め、目を閉じる。
「っ………!」
その時。
「いたぁ!」
エアリアルが叫ぶ。
「……ん?」
テナートが恐る恐る目を開けると。
そこにはもう一人の青髪の少女。
「ルナ!!今更何しに来たのよ!?」
エアリアルが叫ぶ。
「エアリアルがアストラクトレイン持ち出したから回収しに来た」
「いいじゃん!ちょっとくらい!」
「ダメ」
即答。
「帰るよ」
ズルズル引きずられる。
「えぇぇー!やだ!ルナのケチ!いけず!分からず屋!」
「はいはい」
そして去り際。
少女が振り返り、少しだけテナートを見る。
そしてぷいっと目を逸らして小さく言った。
「……お騒がせしました」
「…お父様」
そして、エアリアルと一緒に夜の暗闇へと消えていった。
「……一体なんだったんだ?」
すると。
「テナート様ー!!」
入れ替わりでメイラルドが来る。
「凄い音してましたけど、大丈夫ですか!?」
心配そうに尋ねると。
じー。
テナートがメイラルドを見つめる。
「……なんですか?」
少し考え。
「痛っ!」
テナートがメイラルドの頬を引っ張る。
「何するんですか!」
「いや、ステファニーと模擬戦してただけだ」
「心配はいらん」
「そうですか…?ならいいですけど」
首を傾げる。
「あー疲れた」
テナートが王城に戻る。
「おい!いつまで落ち込んでんだ!戻るぞステファニー」
「……はい……」
ステファニーは木陰で縮こまっていた。




