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またあなたなの?
あなた反省は?
何のための謹慎だったと思っているの?
なにより!まだ諦めていなかったの?
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
今夜は王太子殿下と王太子妃殿下との間に生まれたエドワード王子殿下の3歳のお披露目パーティーが王宮で開かれた。
ほとんどの貴族が参加するパーティーに侯爵令嬢である私ももちろん出席した。
まだ3歳のエドワード殿下は早々に退席されたがパーティーはまだまだ続く。
今回もレックス兄様は王太子殿下の後ろに側近として控え、ウィルは騎士としてこのパーティー会場の護衛についている。
で、今夜は私の隣にはウィルの友達のハント伯爵子息がパートナーとしてエスコートしてくれた。
このハント様。
レックス兄様の側で働きたいと言っていただけあって頭は相当キレるらしい。(見た目は本物の騎士のウィルよりも騎士らしいのにね)
その彼はウィルと休日が合えば、学院卒業後から度々我が家に訪れるようになった。
だから私と会話することも自然と増えた。
ハント様は厳つい見た目に反して、性格は真面目で礼儀正しい。少し言葉遣いが乱れることがあるけれど気になる程ではない。
そのハント様が今日エスコートしてくれているのだ。
「今日はレックス殿からもウィルダーからもベルティアーナ嬢の側から離れないようにと仰せつかっております。俺⋯⋯いえ、私から離れる場合は一言お声をかけてからにして下さい。王宮の侍女をお供させます」
ああ、お花を摘みに行く以外は側から離れないってことね。
「兄と弟がすみません。よろしくお願いします」
レックス兄様とウィルが心配するのも無理はない。
毎回1人になった途端、誰かしらから絡まれるものね。
大人しくハント様の側にいよう。
それに今日はダンスを踊る予定もないし、適当に時間を潰したら帰ればいいわね。
それに⋯⋯まさか彼がこのお披露目に招待されていたなんてね。
でも随分と雰囲気が変わった気がする。
令嬢たちに熱い視線を向けられているのは気付いているはずなのに、敢えて気付かない振りをしている。
記憶にある彼は誰にでも柔らかく微笑みを返していたのに⋯⋯ああ、例外もあった。私にだけは最後まで向けられることはなかった⋯⋯な。
まあ、まさか私がこの国に居ることは知らないだろうし、気にせずとも私のことなどとっくに忘れているだろう。
「お姉様ぁお久しぶりですぅ」
⋯⋯私じゃないわよね?
「もう!お姉様ったら!無視しないで下さいよぉ」
⋯⋯聞き覚えのある声だけど、私を呼んでいるわけないわよね?
「うふふ、久しぶりにわたくしと会えたものだから照れているんですかぁ?」
や・め・て~
「ローテックス嬢⋯⋯君はなぜ謹慎になったのか覚えていないのか?」
「あなたは誰?」
「⋯⋯ハント伯爵家のレイモンドだ。君とは同じ学院の同級生だった」
「あら!ごめんなさぁい。わたくし素敵な男性しか覚えていませんのぉ」
その言い方ってハント様に対して失礼すぎるでしょう!
しかも!ハント様は伯爵家の子息。ローテックス嬢は子爵家の令嬢。前回も思ったけれど彼女はいったい何様のつもりなんだろう。
ハント様はローテックス嬢の言葉に怒ってもいいのに、まったく気にしていなさそうだけれど私は許せない。
もう関わりたくなかったのに黙っていられない。
「ローテックス嬢。いい加減にしなさい。貴女は不敬と言う言葉を知らないのかしら?」
「不敬ぃですかぁ?知っていますよぉ。でも今は関係ないですよねぇ?」
ああダメだ。
イライラする。
「ミーシャが知らないわけないだろ?あんたこそいい加減にしろよ?」
そういうあんたこそ誰よ!
今日も彼女の回りには子息たちがいるけれど、前回連れていた子息は1人もいないってことは、彼らはローテックス嬢と距離を置いたのかもしれない。
「もう!わたくしがお姉様とお話しているのに邪魔しないのぉ」
⋯⋯。
「ベルティアーナ嬢もう行きましょう」
「そうね。ローテックス嬢⋯⋯二度と私に話しかけないで」
これ以上この子の相手をするのは時間の無駄だ。
「約束を破るんですかぁ?」
「約束?」
思わず振り向いてしまった私は後悔する。
「そうですよぉ。まだモルダー様を紹介してもらってないですよぉ?それが無理ならレックス様でもいいですよぉ」
私の大好きなレックス兄様をでもって言った⋯⋯
なんだか悔しい⋯⋯こんな子に舐められて。
この子は貴族社会を分かっていない。
周りは私たちのやり取りを遠巻きに見ている。
この場を私がどう対処するかで、これから先の立ち位置も変わるだろう。
もう、これ以上は彼女の言動を許すことは出来ない。
私はただ平穏な日常が続くことを望んでいただけなのに⋯⋯




