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あの卒業パーティー後、ミーシャ・ローテックス嬢と、そのお友達の子息たちは1年間の社交の場に出席することを禁止されたとレックス兄様から聞いた。いわゆる謹慎を申し付けられたと言うことだ。
それぐらいですんだのが不思議なくらいだ。
王族に対しても上から目線だったもの。下手したら不敬罪で修道院に送られるか、平民に落ちていた可能性だってあった。
でも本当に不思議な令嬢だった。
彼女は本心から私が紹介すれば⋯⋯モルダー兄様に⋯⋯バーネット公爵家に嫁ぐつもりだった。
そのモルダー兄様を選んだのも公爵家嫡男だから⋯⋯自分に相応しいとか言っていたし。
でも、顔はレックス兄様が好みだと。
もしかしなくても、我が家が公爵家だったらレックス兄様に嫁いであげる!などと巫山戯たことを言ってきたかもしれない。
ローテックス子爵家では娘の教育をちゃんと行っていたのだろうか?
はっきり言って子爵は下位貴族だ。
普通に教育されていれば王族どころか高位貴族に嫁ぐなど無理な話だと理解していただろうに⋯⋯
まあ、この1年間の謹慎中に反省していることを願おう。
そして、二度と私に関わってこなければいい。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
早いもので私も20歳になった。
相変わらず私はお父様と王都と領地を行ったり来たりしている。
ウィルは騎士団に入団した。
今は王宮内にある独身騎士の寮で暮らしている。
私が王都にいる間は邸から通っている。
レックス兄様は、朝は早く夜は遅くまで変わらず働き詰めだ。でも、顔を合わせた時のお兄様は疲れた素振りも見せず、実際目の下にクマがあったことは一度もない。
カルセイニア王国の女性の結婚適齢期はレフタルド王国よりも高く、学院を卒業する18歳から25歳前後らしい。
男性の場合はコレより適齢期は高い30歳前後。40歳を過ぎる人も普通にいるらしい。もちろん爵位を継ぐ継がないも関係はあるだろうけれど。
また、男女関係なく独身を貫く人も多いそうだ。
26歳のレックス兄様とモルダー兄様にもいまだに婚約者はいない。
まあ、2人ともモテてるだろうし、相手には困らなだろうけれど⋯⋯まあレックス兄様に浮いた話は聞いたことがないけれど、モルダー兄様は遊び相手は何人もいると伯母様が言っていた。
⋯⋯もしかしてモルダー兄様ってクズ男なの?
結婚願望のない私にも当主であるお兄様宛に何通か釣書が届くこともあるらしいが、すべて断ってもらっている。
本来なら貴族の婚姻は当主が決めてしまうことも多く、結婚式当日に初めて顔を合わせることもあるとは聞いて知っている。
ただ我が家は『本人の気持ちを尊重する』と、昔から言ってくれていた。
ラシード殿下の婚約者候補だった時期もあったけれど、それはレフタルド国王とお父様との間で辞退前提での話だったらしい。
もちろんラシード殿下(今は王太子)と私が愛はなくともお互いを思いやり、信頼関係を結べていたのなら婚約者候補から婚約者にもなり得たそうだが、ラシード殿下の態度も、私の気持ち的にも有り得ない形だけのものだった。
ラシード殿下に嫌われていた私が選ばれることはないと確信すらしていたものね。
そんな彼とは、もう二度と会うことはないと思っていた。と、言うか彼のことをすっかり忘れていた。だから思い出すこともなかった。のに⋯⋯




