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サバイバー・ソロモン  作者: オウルマン
第六章 ソロモンの改革
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第22話 北方の辺境地 トルモール地区

 エルドルト行政官と別れたソロモンはダブリオンを出た。地図を確認しつつ御者席で手綱を操るヴィクトルに指示を出す。一応通る馬車はあるようで、自然に出来た道が薄らと見える。とはいえ大陸の北端部付近だからなのか、申し訳程度の草が少々生えているくらいの荒れ地。固そうな地面に馬達も不満が溜まっていそうな気がする。


 樹木は無く水平線の先まで見渡せそうな程視界が開けているが、他の馬車は全く見当たらない。中型の魔物が彷徨いているのを何匹か見つけたが、元気が無さそうに歩いているだけだった。元気が湧かないほど不毛で寂しい土地なのだろうか?


 充分な距離を取って魔物を避けつつ荒れ地を進んでいく。殺風景過ぎて方向感覚が何度か狂いそうになった。二時間弱馬車を走らせた所で目的地に到着した。比較的新しい木製の看板には町の名前が彫られている。


 ――ベーリルント。ダブリオンの東、大陸を縦断する極北山脈の麓にある採掘の町。


 ソロモンは思った。町と名乗っているが規模は村だな、と。


 元は一応町の規模だったが廃れてスケールダウンした可能性はある。活気が無いのは言うまでもない。民家とお店が並んでる所を見ると無計画に建てた訳では無さそうだ。

 人の気配があまり感じられない。空き家が多いような気がする。


 ベーリルントには、行政官やその部下の役人が詰めている行政府の出張所がある。ある筈なのだが具体的な場所が分からない。そんな時の対処方法は人に尋ねる、なのだが。

 

「おいおい、道を聞こうにも通りを歩いている人が誰も居ないぜ」

 馬車の速度を落としたヴィクトルは頷いた。首を動かしているので、ヴィクトルも探してくれてはいたようだ。


「ここさぁ、ホントに住んでる人いるのか? ゴーストタウンならぬゴーストヴィレッジ状態だぞ」

 流石に廃墟とまでいった建物は無いが、不気味な静寂が全体を包み込んでいた。無風の晴れの日なので、風の音すら聞こえない。その中を馬車を引く馬の蹄鉄の音と車輪が地面を走る音が響いている。塗装されていないので足下は荒れ気味だ。


 取り敢えず正面に見えている極北山脈へと向かって進んでみる。北の果ての山にも樹木は幾らか生えているようだが、剥き出しの固そうな地面の方が広い。近付くにつれてこの山脈の大きさがハッキリしてきた。


 ソロモン城がある山の五倍を越える標高があるのは間違いないだろう。まるで世界を分ける巨大な壁だ。実際隣国の聖エストール王国と領土を分ける国境として扱われている。 あまりにも険しすぎて、極北山脈を越えて聖エストール王国に行く道が作れない。ダブリオンが港湾都市として発展できた理由でもある。


 麓付近でヴィクトルはスマートに馬車を止めた。ソロモンは馬車を降りる。


「採掘場はこの辺だよな。あそこに掘り出した土とか石とかが積まれてるし」

 大体三メートル程度の高さに盛られていた。灰色っぽい土の山と黒っぽい石の山だ。


「掘ってる人、いるのかな? 人の気配がしないんだが」

 山肌に目を向けると横穴が七ヶ所見えた。麓からそんなに高い位置で掘っている訳ではない。金属音の一つも聞こえてこない。


 少し周囲を調べてみると、採掘者の休憩所として使われているらしい場所を発見した。屋根と柱だけで壁が無くロープで倒れないように地面と固定しているだけの簡素な作りだ。背もたれの無い飾り気の無い横長のベンチが置かれている。


 覗いてみたが休憩所には誰もいなかった。ソロモンは黒髪を掻いた。


「待ってりゃ誰かしら来るかな? それとも戻った方がいいか?」

 ヴィクトルが操る馬車まで戻ってみたものの、どうしようか迷っていた。そこへ御者席のヴィクトルが自分の鎧を叩いて合図を出す。


 ソロモンが気付くと指を差した。その先には人がいた。遠目だが十人くらいはいそうだ。

「ナイスだヴィクトル。あれはここで採掘している住民に違いないぞ」

 ヴィクトルは親指を立ててみせた。ソロモンもそれを返した。


 彼等はこちらに近づいて来るようなので待つことにした。そしてよく見たら先頭に知った顔が一人。


「だ~か~ら~。ソロモンさんは変な知識をいっぱい持っているんですぅ。この石ころの山だってお金に換えてくれるかもしれないんですってば!」

 この地区の担当役人。シンシア行政官だった。そして取り巻きに呆れられていた。


「流石に夢を見すぎですぜお役人様」

「ちゃんと現実を見ましょうよ。ねぇ?」

 綺麗な役人用の服と土で汚れた採掘者で身分の差がハッキリと分かる。ツルハシを担いでいるガッシリとした体型の男もいれば、くたびれたように歩く細身の男もいた。


「話が早そうな人が居たねぇ。お~いシンシア行政官!!」

 ソロモンが大声で呼ぶと気付いたシンシア行政官がダッシュしてきた。意外に早い。ソロモンにタックルをかましそうな勢いだ。というか減速する様子が無かったので回避行動を取った。小柄とはいえ激突したら凄く痛そう。


「ソロモンさ~ん!! 待ってたですよぉ!! うぎゃぁ!?」

 勢い余って壮大に転びそうになったが踏ん張った。意外と脚力はあるようだ。


「ダブリオンでトルシェン行政官と打ち合わせしてきましたから、後はここだけですね」

 突進をほぼ無駄の無い動きで躱したソロモンは慌てることなく話を進める。


「先に来て下さいよぉ! トルシェン行政官忙しいって言って相手にしてくれなかったですよぉ」

「大量の古い書類に埋もれてましたからね。それはそうとして、話を聞きましょうか。あちらの皆さんからもね」


 遅れて合流した集団へ背筋を伸ばして向く。堂々と、自信たっぷりに見えるようにと心がけて、声は大きめでゆっくりとハッキリ聞こえるように。


「初めまして。ダブリオンとトルモール地区の新領主となったソロモン・サダキです。どうぞ宜しく」


 前触れも無く現れた新領主に採掘達は戸惑っていた。


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