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冷酷な彼女は今日も嗤う  作者: shadereal
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第三話 琥珀失踪

話を聞くとこによれば鼠ノ洞窟は他の場所とは少し特殊な洞窟で、夜9時以降になれば洞窟内の全ての魔物たちが狂暴化するのだそうだ。だからここの冒険者は9時前になる時にはほぼ全員が洞窟を出ている。勿論例外はあるが大抵そういう出遅れた連中は次の日になっても帰ることな無い。先ほどは危なかった。もし琥珀があの時殺していなければ徐々に魔物らとの距離は近づいていきいずれは足を取られることになっていただろう。そう思うと琥珀の判断は良かったといえるのではないだろうか。それに今日は初めて自分の技を認識することにできる存在とであったことにより琥珀はこれまでにない喜びを感じていた。なんせどこの国の王やら護衛やら最強の騎士とやらをも葬ったことはあるが誰一人としてそれに気づいた者はいなかったのだから。


 ところで先ほど洞窟内を歩きながら自己紹介のようなものをしたのだがこの剣を持った筋肉女がエレガ、杖持ちの眼鏡を掛けた男がディアブル、盾を持った老人はエルク、そして最後に琥珀の動きを捉えた少女の名前がメル。彼らは主にこの町とベルムヘイド王国の王都を行き来するパーティーらしく全員がこの町の出身地なのだそうだ。


「琥珀、これからは同じパーティーの仲間として依頼を熟していくだがその、正直琥珀殿の力量はわし等より遥かに高いのじゃからより高位の冒険者と組んだ方がいいのではないかね?」


「ふん。では逆にここ以上に魅力的なパーティーがあるというのか?」


 決してメルは冒険者の中での弱くはないはずだ。なんせあの速度に目が追いつくのだから。だがエルクの言う通り、このパーティーには誰もB級以上の冒険者はいない。


「勿論、私たちなんかよりずっと強いSランクの冒険者はこの町でさえ何人もいるわよ」


「寧ろ、俺たちは中の下といった感じだ。なんせBランクであるエレガ以外は皆、Cランクなのだから」


冒険者はF~Sまでのランクがありそのランクが分かるように冒険者はギルドが配布するランクプレートというものを首に下げている。そのプレートを身に着けているとすぐに相手がどのランクなのかが分かるため同じランク台の冒険者と組みやすいという理由らしい。勿論、琥珀は仲間など求めていなかったため今日は付けておらず仲間ができたこれからもプレートを身に着けることは無いだろう。


「他のパーティーなどどうでもいい」


それにこのパーティーは都合が良い。琥珀の技が見えるということは連携して戦闘をすることが可能かもしれない。どうも狂暴化をしなければ物理防御とやらに弾かれてほぼダメージを与えられないようだからな。他のパーティーへ行っても連携ができなければ誰も目視できない琥珀の技に合わせて魔法を打ち込むことなど無理だ。だが最低でもメルにはそれができるかもしれない。どうせ他のパーティーへ行ってもただ動きが早いだけのお荷物になってしまうだろう。


「なるほど。まあ、琥珀が良いというのならそれでいいじゃろう。それよりそろそろここらで話を終えて野宿する場所を決めなければ塀の外で寝なければならなくなるぞい」


「そうね。早く寝て明日頑張らなきゃ」


どうやらこのパーティーは二日連続で洞窟に篭るらしい。先ほど彼らの受けた依頼を見たがその内容は鋼鉄鼠の尾を集めるというものだった。しかも依頼主は回収してきた鋼鉄鼠の尾はあるだけ全部買い取るらしい。その素材で何を作れるというのだろうか? 町で流通している物がどこから流れてきているのかを調べたことはあるがそれが何によって作られているのは一切、調べたことがなかった琥珀には鋼鉄鼠の尾がどういうものなのかがわからないが、依頼主は相当金を儲けているのだろうなと思う。なんせあるだけ買い取るということはそれがどれ程の量だったとしても必ずそれを倍にして稼ぐことができるという心の表れなのだから。


そんなことを考えているうちにテントの天井を見ていると周りからいびきが聞こえ始めた。どうやら琥珀以外、全員寝てしまったようだ。まさかテントを張ってから10分もかからずに寝るとは琥珀も思ってはいなかったがこれで一人になれると安堵すると琥珀はいつも持ち歩いている鞄を肩に掛けるとテントから出て冒険者たちが野宿するこのキャンプスペースの周りを囲うように建てられた塀を音速で走り抜け琥珀は真っ暗闇の森の中を生き生きとした目で走り抜けた。琥珀の目標は『鼠ノ洞窟』。彼は音速のまま洞窟の中へ駆けて行った。


― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― 


次の朝。

エレガは目を覚ました。起きたばかりで前がぼやけて見えない。エレガは寝起きの体を起こし、両腕を上げながら大きなあくびを出した。そして数分ぼーっとしていると次第にディアブルやメルがエレガ同様に目を覚まし始めた。


「エレガ。。。おはよう」


「ん。。。。」


「あ゛ぁぁぁぁ~。首だるっ」


「エレガさん、ディアブルさんおはようございますですぅ。。」


三人は朝の挨拶をすると全員、一点を見つめて何も喋ろうとはしない。このパーティーは全員、朝が弱い。起きただけで誰も頭が上手く働いていないのだ。だがそんな時、三人は同時に違和感を感じた。三人の目は次第に一つの場所を移し


「琥珀がいない?」


「うむ。いないな」


「あれ? 琥珀さんはどこですかぁ?」


ディアブルは自分が持たれかかっていたテントの柱の一つから背を離すとテントを出た。そこには眩しく光った太陽が既に東から昇ってきていた。はぁ、今日もまた予定通り朝一に洞窟で潜ることはできなかったのだな。と、考えながらディアブルはテントの外を出るが琥珀の姿は見当たらない。それどころかテントの中にも彼の荷物は無いようだった。ディアブルは焦りながらも自身の荷物の中身を漁るが、そこでディアブルは一つの可能性が間違っていたのだということを知り胸をそっとなでおろした。


「琥珀はどこに行ったのかしら?」


どうやらエレガとメルもディアブルと同じ可能性を思ったのだろうか自分の荷物の中身を見たようだが全員、大丈夫そうだ。だからこそディアブルはわからない。金品を盗んで姿を暗ましたということではないのであれば今、琥珀はどこにいるのだろうかと。


そんな時、一人の冒険者がこちらへ歩いてきた。


「あの。実は他の者たちが寝静まっていた時、俺は起きていたのだが何やら物音がすると思って音のする方を見ていたら黒いフードを被った男が君たちのテントから出てきてここを出て行ったんだけど何か盗られたかい?」


「いや、何も盗られていなかった。あとそのフード男は俺たちの仲間だから大丈夫だ。情報感謝する」


ディアブルはその冒険者に礼を言うと再びテントの中へ入った。


「で、琥珀はどこなのよ?」


「いや、わからん。あの冒険者によると夜俺たちが寝た後、ここを出た行ったようだが。。。それよりジジイ何まだ寝てんだよ!」


「はひっ、なっ、なんじゃ?どうした」


琥珀が消えた今、ディアブル、エレガ、メルは慌てていたというのに隣で気持ちよさそうに寝ていたエルクに対してイラっときたディアブルはエルクの顔に水を掛けた。そして何が起こったのかわからないという表情をしているエルクにエレガは琥珀がいなくなったことを説明をした。


「ふむ。もしや彼は洞窟へ行ったのではないかね?」


「いや、そんなことはないだろう。一人で真夜中に行くわけ―――」


と、そこでディアブルは琥珀と出会った時を思い出した。確かにディアブルたちは琥珀と出会ったとき、彼が一人で魔物と戦っていたことを思い出した。


「在り得る。琥珀ならエルクの言う通り洞窟に一人で潜っているかもしれない」


「もしそうなら琥珀さんは洞窟から出てくることはできないんじゃないですか? だって今、8時くらいですし。。。魔物の狂暴化も収まっているかと」


4人は顔を見合わせた。もし、琥珀が洞窟へ夜向かったとして時間を気にせず戦っていて今、琥珀が戻ってきていないことを考えるに琥珀がそのまま洞窟の中から出られずに未だに魔物と戦っている可能性がある。しかも魔物の狂暴化が収まる6時から既に2時間は経っている。もはや琥珀が生きているかすら確かではないがそれでも4人は急いでキャンプスペースを出る用意をする。昨日の琥珀を考えるに彼は地下4や5階、またはそれ以上深く行っている可能性は十分にある。5階より深く行った場合、このパーティーのメンツでは行くことはできないが、まだこのキャンプスペースに残っている冒険者の中で上位のランクの冒険者がいれば雇い向かえば琥珀が助かる可能性は十分にある。そんなことを考えながら準備しているとテントの中に真っ赤な腐敗臭のするフードを被った男が入ってきて彼はそのフードを下した。


「すまない。心配させてしまったか? 悪いが洞窟に篭っていたせいで汗だくだ。水を浴びてから―――」


「琥珀、その血はなんだ?いくらなんでもそれは返り血というより全身にトマトを投げられまくったと言われた方がまだ理解できるのだが」


琥珀の今の姿は真っ赤であり、血が付いていない場所など無い。どうやったらそんなにも血を浴びることができるのだろうかと思うが、考えても無駄なので琥珀に聞くことにした。


「ちなみに、どこまで行ったんだ? 今はもう魔物の狂暴化は収まり魔法防御を身にまとっていると思うのだが」


「ああ。それはだな」


と言い、琥珀は腰に下げた一本の短剣を見せた。その短剣は琥珀が他に持つ短剣と比べてかなり太く、重い。そのうえ、短剣の素材は鉄であり決していいものとは言えない。だが何かしらの魔法が付与されていることは魔法使いであるディアブルとメルには瞬時に理解することができた。


「これは何ですか?」


「魔法が付与されているようだね」


「魔法防御を無効化する短剣のようだ。他と比べて異常に大きい魔物を倒した時、手に入れたものだ」


「他より大きい魔物? それってもしかして尻尾に紫色のクリスタルみたいなものがある魔物ではないですか?」


「ああ。その魔物だ」


その魔物だけどその魔物がどうかしたのか?とでも言いたげな琥珀だったが4人は琥珀の顔を見てぽかんとしていた。なんせこの短剣といい紫色のクリスタルを尾に付けた魔物というのは『鼠ノ洞窟』内では一体しかいない。だからこそ4人は信じられなかった。まさか一人で洞窟のボスを倒したと言われれば当然の反応である。だが、この短剣は何よりもの証拠だ。武器防具を付与することは可能だ。だが、魔法防御を無効化するなどという特殊な付与は各洞窟や古代遺産の奥深くに潜むと言われる圧倒的な強さを持つ個体からしか得ることはできない。そしてそれを手にしている者はSランクの冒険者、国の軍の幹部、富豪、などの者たちの中でも少数の者たちだけだ。もしそれらの特殊な武器防具を売るものなら最低でも二世代に渡り贅沢をしても一生食っていけるような大金が手に入る。そんな代物なのだ。


「。。。。。。」


取り敢えずどう反応すればいいものかが分からなかった4人は当初の予定通り、洞窟への準備を再開し始めた。かなりの動揺で手は震えているが。

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