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有難迷惑ってやつですわ。


話が終わったようで金髪のイケメンは部屋を出て行ってしまった。


そして黒髪の男が私に近づく。


「ほら、行くぞ」

「あっ、はい。」


差し出された手をためらいがちにだが掴んで部屋を出た。


「女、お前名前は何という?」

名前・・・・本当のことを言った方がいいのだろうか?

いや、もう会う機会もないだろうし。馬鹿正直に言う必要はない。


この時私の頭の中には昨日の正直に話そう、なんて思ってた気持ちはすっぽりと抜け落ちていた。


「アンナ、と申します。」

これは小さいころから私の身の回りを世話してくれた使用人の名前だ。

元気にしてるかなあ・・・?


家出一日目にしてもうそんなことを考えている自分に気付いて自嘲がこぼれる。


「そうか。俺はアーサー・ブライアンだ。」


そこで私の全身の血の気がサーっと引く。


「・・・・もしかして魔王様でいらっしゃいますか?」

「ほう、俺を知っているのか。」


それは肯定と受け取っていいんですよね・・・・。


どうしようどうしよう・・・・・!!


これは機嫌を損ねたら死刑だ・・・!!


そこで屋敷を出て周りが森の中一本だけ伸びた道に出る。


「あ、ここで結構です。ありがとうございました」

なるべく自然に。そう心がけて冷静に話す。


「あ~・・・いや、もうちょっと送っていこう」

「え・・・!?あ、いや、でもホントもう迷惑をかけるわけには・・・・。」

「俺がいいと言っている。」

「・・・・・はい。お願いします・・・。」


なんて俺様なんだ!?

結局町まで送ってもらうことになった。

これが有難迷惑ってやつなのか、なんて思いながら、魔王の隣を歩く。


その間

「アンナは何の花が好きなんだ?」とか

「好きな食べ物は?」とか、私のことについて根掘り葉掘り聞かれた。

その度に本当は私がアンナじゃないってこと、私がソフィア・ローランドなことを知っているんじゃないかって怯えてしまう。


そんなこんなで数十分歩いたら町に着いた。


「では、本当にありがとうございました。」

今日何度目かわからないお礼の言葉を言ってお辞儀をする。

そして魔王の気が変わらないうちに、と踵を返す。


ガシっ


掴まれた右手を極力意識しないようにして、できうる限りの笑顔で振り向く


「・・・・・・・なんですか?」


パッと魔王が手を離して見るからにうろたえ始める。


「え・・・・あ・・・その、だから・・・」

「では、失礼します」

一刻も早くここを去らねば!!なぜか本能がそう告げている。


そう言ってまた踵を返そうとした私の手を今度は掴むだけでなく引き寄せてから魔王が驚きの言葉を放った。


「アンナ、お前家出した、と言っていたな。特別に気が済むまで俺の屋敷に住まわしてやろう。」


は?


と、いうのは心の中だけにとどめておく。


家に帰れとここまで送ってきて今更何のつもりだ。

それに私を引き留める理由がわからない。


正直その話はありがたいが私は帰るつもりはないので気が済むまで、というのは永遠に来ないだろう。


「すみませんが魔王様、わたくし家に帰ると決心いたしました。ですから結構です」

もちろん帰る気はさらさらない。嘘も方便だ。


「そうか。では俺が家まで送ってやろう。家はどこだ」


そういわれて今度は私がうろたえる。


「(え、なんでそうなるの!?やばい・・・どうしよう)」


「ん?どうした」

魔王が純粋に心配してるって顔で覗き込んでくる。


ちょ、そんな間近でその美形はヤバイです。鼻血ものです。


なんて言えばいいのだろう・・・・。


そんなことを考えているうちに時間は刻一刻と経っていく。


本気で私のことを心配し始めた魔王様に大丈夫です、としか言えなかった。



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