最終話 聖域の入口の前でもピンクだらけ!
すみません。ネタバレをします。本作は当初、夢落ちにしようかと思ったのですが、投げっぱなしエンドに変更しました。
浜辺の向こう側では、暗くて不気味な木々が生い茂っている。この森林地帯は、どこまで広がっているのだろうか。
サバイバルの舞台にふさわしいジャングルへと、あなた達が足を踏み入れる。
ビキニアーマー女のすぐ後ろでは、露出の多い背中が目に入ってしまう。あなたはそちらを直視しないように務めた。
「なあ、隊長。剣を構えなくていいのか?」
気を紛らすように、あなたは素手のビキニアーマー女に聞いた。
「剣など剣士が使うものだ。私の戦闘スタイルはジュードーだからな」
見た目からは想像出来ない、意外な答えが返って来た。
「柔道は戦闘で使うものじゃないだろ」
「君の世界ではそれが常識かもしれないが、私の世界では剣よりも強い」
そう言って彼女はあなた達を静止させ、近くにある太い木に向かって拳を放った。
凄まじい音を立てて木は倒れ、大地が揺れた。やった当人以外は全員驚いた。
「どうだ? 環境破壊のいいお手本になっただろう。異次元だから、こんなことをしても怒られないんだ」
「すごーい、これなら安心だねー」
あなたの右腕に絡まる母親は棒読みだった。
「何かあっても、きっと貴方が守って下さいますよねっ!」
あなたの左腕に絡まる令嬢があなたに訴えかけてきた。
両側の二人は、ビキニアーマー女を恐れているのが見て分かる。
「君は強い女は好きか?」
畏怖の対象たる彼女に、あなたは聞かれた。
「……好きか嫌いかで言ったら、好き、だな」
「強い女が好きか。さすがは乱暴者だ」
「ちげえって!」
あなたが怒鳴って両側のピンク二人は焦るものの、
「威勢のいい男だ。ますます気に入った」
隊長には高く評価された。
再び、あなた以外はピンクな探検隊は、木と木の間を進む。歩きづらくても、今のところ危険生物は出没しない。犬も、猿も、キジも出ないし、宇宙人もドラゴンも飛び出して来ない。
「副隊長様~! 怪しい入り口を向こうで発見しましたぁ~!」
いつの間にかいなくなっていた幽霊が空中から来た。どうも彼女は偵察をしていたらしい。
「でかした! だが、そういうことは隊長である私に報告してほしかったな」
「うらめしや~。私は平隊員なので、副隊長様にまずはご報告をして、副隊長様が隊長に伝えればいいですぅ~。今から隊長にお伝え下さい、副隊長様~」
隊長よりも副隊長のほうを優遇する幽霊だった。
「……いや、もう伝える必要ないだろ」
「その場所に案内してくれるか、幽霊隊員」
「いいでしょう。こちらですよぅ~」
浮遊する幽霊を先頭に代えて、探検隊は進む。
あいかわらず、あなたの横では母親と令嬢がくっついている。特に、胸部の当たりが気になってしまってしまう。母親は小さくはないが、令嬢が明らかに大きい。
「あちらですよぅ~」
幽霊が指差す先には、聖域の入口らしき場所があった。
あなただけピンクではない探検隊は、足を止める。
奥にある入口の手前では、奇妙なものが存在していた。ピンク色の果実がたくさん実った木だ。同じくピンク色の毒キノコみたいなものも、地面にたくさん生えている。
ピンクの果実やキノコの先端に穴が開いている点に、あなたは気づく。
穴からはピンクの霧が、定期的に噴射される。
そして不自然なことに、穴からは女性の喘ぎ声みたいな音も出ている。聞いていると、変な気分になりそうだ。
暗い緑の植物と、ピンクの霧。
ピンクの果実と、ピンクのキノコ。
異様な雰囲気が漂っていて、あなたは聖域に近づくのをためらう。
「なんか、マズくないか、これ……」
あなたが同意を求めても、誰も期待には応えてくれない。
最初に様子がおかしくなったのは、母親だった。
「――いやああああんっ! 激しい気分になっちゃうわっ! 今なら、息子ちゃんを襲えるぅ~! 私、お母さんなのにぃ~ッ! 我慢出来ないよぉッ! 息子ちゃん、ここは陸の孤島で異次元だから、馬乗りしても、いいよねっ? 今ここでお母さんといけないこと、しちゃお?」
ピンク色の母親は息子のあなたに欲情していた。その表情はあなたの姉妹のように若々しく見えた。活気があふれていて恐ろしい。
「お母様! それはいけませんわ!」
令嬢が叫んだ。胸部を圧しつけられているあなたは安心を……。
「婚約者のわたくしに、全てお任せ下さいませっ! 肉親ではないわたくしとでしたら、倫理的にはセーフですわ! それでもし、お母様が悲しい思いをされるのでしたら、彼に抱かれた後に、今度はわたくしがお母様を抱きます! わたくし、腕には自信がありますの! 向こうの果実やキノコを使って、めちゃくちゃにご満足させてやりますわぁ~っ!」
令嬢が全然安心出来ない悪役令嬢と化していた。目つきが厳しくなっていて、悪いことに手を染めていそうな人間に見えた。
「お願いっ! 息子ちゃんでも令嬢ちゃんでもいいから、私を早く襲っちゃってぇ~ッ!」
母親が地面で横になり、エプロンをたくし上げて顔に密着させながら、ロングスカート下の両足をばたつかせた。もう手のつけようがない。
「わたくし、受けでも攻めでも、どちらでもいいですわよ? 貴方は、どちらにしますの? あら、決めないんですか? では、わたくしからやってあげますわぁーッ!」
「やめろッ!」
令嬢が唇を伸ばして来たので、あなたは思わず彼女を突き飛ばした。
「いやああああーッ! 貴方、このわたくしに、暴力を振るいましたわね~っ! 許さないですわぁ! 地獄に送ってやるのですわぁ~っ!」
母親の横で倒れた令嬢は、やはり乱暴に両手両足を動かした。制服のミニスカートが乱れて、高級そうな白のレースがついた黒ショーツが丸見えになっていた。
「女性に暴力を振るうなんて、最低じゃないか君は」
今度はビキニアーマー隊長に非難される。
「いや、今のは違うんだっ!」
「私にも暴力を振るってよぉーッ!」
「はあっ?」
唐突にビキニアーマー隊長があなたに密着して来た。正面から当たる胸当てが痛かった。
「いやんっ! 私の鎧の先端が、かしこい男の人に触れちゃった! 恥ずかしいの~っ! きゃんっ!」
ビキニアーマー隊長は自分から倒れて動かなくなった。
両足を大胆に開いていた。ずっと見下ろしていたら興奮してしまうため、あなたは目を逸らした。
地面で横になる三人は、明らかに様子がおかしい。
「コイツらどうなっちまったんだよ……っ」
あなたは残った幽霊のほうを向くと、……幽霊も正気でないことを知った。
「いっつもいっつも私の求婚を拒否しやがってですぅ~っ! この恨み、はらさでおくべきかぁ~ッ!」
幽霊は真っ黒で邪悪な怨念を出している。
「――私は母親っ! だけど私は息子ちゃんの愛人よぉんっ!」
「わたくしは、縦ロールですわ! この縦ロールを貴方に絡ませてやりますわぁ~! あと、キスもしまくりますわぁ~ッ!」
「私はS級冒険者メタル・ビキニだもんっ! 桜色だもんっ!」
三人が復活して立ち上がった。まるでゾンビのようだった。
「旦那様ッ! うらめしやややややややッ!」
この幽霊がこんなに恐ろしいなんてあなたが思うのは、初めてだった。
あなたは彼女達の変貌に動揺しながらも、冷静に考える。今の状況を作り出しているのは、間違いなくピンクの霧だろう。だが、あなたには適切な対処法が思い浮かばない。
「お母さん、息子ちゃんを食べちゃうことにするっ!」
欲情する母親の顔が、悔しいぐらいにかわいい。あなたと同じ色をした黒くて大きな瞳が、愛らしい。魅力を感じてしまう。そう思ってしまうことが怖い。
「わたくしは、貴方にそこらのキノコを食べさせちゃいますわぁ~っ!」
令嬢の悪役っぽい見下した表情も、イイ。足で踏まれたくなる。彼女には地獄に送ってやるとは言われても、彼女から婚約破棄を宣言されることはないらしい。
「桜色の果実、いっしょにたべよ?」
自称桜色の髪を二つ分けにしたビキニアーマー女は、騎士らしかった時とは真逆なぐらいに性格が幼くなっている。罰ゲームでビキニアーマーを着せられたんじゃないかって言われても、信じてしまいそうだ。
「旦那様を食べるのは私ですぅ~ッ! 裏飯恨めし裏飯恨めし恨飯裏めし裏飯恨めしぃーッ!」
幽霊は、ひたすら恐ろしい。こんなやつと交際したくないって言いたいぐらい、殺気立っていて恐ろしい。
「コイツら絶対やべぇ……どうしよう……」
ピンクの四人の変態を前に、あなたは後退る。
あなたはピンクの果実もピンクのキノコも食べたくはないし、ピンク色の女達に食べられたくもなかった。
(終わり)
この後どうなったのかは、あなたのご想像にお任せします。
ここからは、本作について少し語りますね。
私の作品では黒髪ヒロインが多く、たまには目立つ色を……ということで、全員ピンクという意味不明な内容を思いついて書き上げたのが、本作品でした。
ヒロインがたくさん出る作品でピンク髪が数人登場することはあるでしょうが、さすがにこれだけ出ることはないだろって思いながら、書いていました。
最後までお読み頂き、ありがとうございます。
別作品の『ブラック企業が開催するノーデスゲーム』も、まだ読んでいなかったら、ぜひお読み下さい。




