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第三話 異世界の孤島でもピンクだらけ!

ピンクかみ「ここから先は、ピンクな登場人物は四人固定になるよ。四人でも多いよね」

 あなたが外に出ると、ピンク達の視線があなたに集まった。


 そして、紫の三角帽子とマントを装備した魔法使いが木の杖を掲げた。


 地面には紫色に輝く、巨大な円形魔法陣が現れた。


 光に包まれたあなたは――、瞬間移動する。


「……えっ?」


 あなたは周囲を見回し、ここがどこかの浜辺だということを知る。


 周辺には、ピンク髪が何名かいた。


 あなたの腕につかまる母親。


 少し浮かんでいる幽霊。


 縦ロールが四本ある令嬢っぽい女子。


 それにビキニアーマー女がいた。


 彼女達のうち、ビキニアーマー女だけは家の前にはいなかった。こんな目立つ存在があの場にいたら、あなたも絶対に気づいていただろう。


「どうなってるんだよ……」


「私がご説明っ、しましょう~。あの魔法使いさんが異世界転移魔法であなたを独り占めしようとしていたので、念力で阻止しました~。こんなふうにぃ~」


 幽霊は黒い着物の裾を斜めにたくし上げて、下着を(さら)した。ピンクではなくライトブルーだった。


「では貴様のせいで、私はこんなところに飛ばされたんだなッ!」


 防御力が極めて低そうに思えるほど、肌の露出が多い。そんなビキニアーマー女が、幽霊に食ってかかる。


「アンタは誰だよ?」


「私は『メタル・ビキニ』の異名を持つ、最上位S級の冒険者だ。貴様らとは別の世界からここに飛ばされて来た」


 ビキニに似た金属製の硬そうな黒いトップとボトム、銀色のショルダーアーマーとガントレットとブーツを身に着けていて、お(なか)は丸出し。ピンク色の髪は背中にかかるぐらいの長さがあり、首の後ろで二つに分けてまとめている。


「私のいる世界では別の世界の干渉を受けやすく、例えば……魔法の行使の禁じられている世界で魔法使いが不用意に魔法を使うと、その影響で異次元に飛ばされてしまうことがある。――このぐらい分かっているよなぁ、そこの幽霊?」


 ビキニアーマー女は幽霊を鋭く(にら)みつけた。


「うやめしやー。私のせいじゃありませんよぅ~。あの魔法使いさんの魔法を妨害しただけですぅ~」


「言いわけするなよ、下着を平気で見せるような痴女(ちじょ)めッ!」


「お前も似たようなもんだろ」


 あなたはビキニアーマー女のほうがヤバいと思う。


「私は下着を美しく芸術的に見せたのですから、許されるのですよぅ~。それより、『メタボ・ニキビ』さんでしたっけ? あなたの格好のほうが痴女(ちじょ)みたいな変態さんですよぉ~」


 幽霊は本音を口にした。


「なんだと貴様ッ! 私の美しい装備を、愚弄(ぐろう)するのかッ!」


「べー」


 お化けのようにベロ出し挑発する幽霊へと、ビキニアーマー女が素早い動きで殴りかかった。


 攻撃はすり抜けた。


「ざぁーんねんでした~。私は賢い幽霊なので、物理攻撃は効きませ~ん。うやめしやー」


「……そうだろうな。だが、もし効いてしまった場合のことを先に謝罪しておこう。すまない」


 ビキニアーマー女が再び殴りかかった。


「成敗!」

「ギャッ!」


 殴られた幽霊は浜辺に沈んだ。


 ビキニアーマー女が右手に強化の魔法をかけていたみたいで、見事に幽霊への腹パンチが決まった。


 幽霊の倒れる姿は、透明な人類のようだった。


「ぐおおおおぉ……ッ!」


 美少女が出してはいけない声を出して幽霊がうめく。


「くっ……うぅっ、うっ、うらめしぃッ……や……ッ!」


 本当に恨めしそうだった。


「幽霊ちゃん、だいじょうぶ?」


 母親が幽霊に両手を伸ばすものの、すり抜けた。


「わお、ホントに(さわ)れないや、すごぉ~い!」


 どうも母親は、幽霊を助けようとしたつもりはなかったようだ。


「くうぅ……ッ!」


 幽霊は自力で立ち上がった。回復力が高いのか、もう大丈夫そうな顔をしている。


「うらめしやっ! 私、分かりました! この変態さんは私達現代知識人が倒すべき敵ですッ! 敵を倒せば、報酬がどこからともなく出現するとともに経験値が上がって、ここから元の世界に帰ることが出来るはずです!」


「そこの妄言(もうげん)幽霊。それに他の者達も、落ち着いて聞いてほしい。ここはただの浜辺のように見えるが、隔離された異次元だ。恐らく、孤島になっている」


「孤島! サバイバルゲームの開催地みたいだねっ!」


 母親が娯楽を楽しむような声を(はず)ませる。


「ここから脱出するには、どこかにある『聖域』から『秘宝』を発見するか、半月から一ヶ月ほど経過することで、元の世界に戻れる。秘宝を見つけて、なるべく早く孤島から脱出出来(でき)るよう、(みな)で協力しようじゃないか」


「えぇ~?」


 幽霊は不満そうだった。


「お前にも挑発したりと非があったんだ。ここは我慢しろ」


「未来の旦那様がそうおっしゃるのでしたら……従いましょう」


「では、わたくしも賛成しますわ」


 制服姿の縦ロール令嬢も同意する。


「じゃあこれから、あっちのジャングルに向かって、探検隊、しゅっぱーつ!」


 勢いよく母親が右手を挙げた。


「……その前に、ちょっといいか?」


 ビキニアーマー女があなたにそう言ってあなたの手を引っ張り、残りの三人から遠ざかった。


「貴様に質問がある。あの者達とはどういう関係なんだ? 三人ともピンク髪なんておかしいじゃないか」


「いや、お前もピンク髪じゃんか! 何言ってんだよ!」


「私の髪色はピンクじゃなくて、『桜色』、和の色だ。ピンクなんかと一緒にするな!」


 このビキニアーマー女の主張に、あなたは全く共感出来なかった。


「お二人で内緒話だなんて、水くさいですわ。わたくし達は五人で一つのチームなんですのよ?」


 そう言いながら、あなたの左腕に令嬢が抱きついて来た。豊満な胸部が当たる。


「ってか、アンタも何者なんだ?」


「ん? なんだ、知り合いじゃないのか」


 ビキニアーマー女が口を挟む。


「ああ。初対面だよ」


「えーっ? わたくしは貴方(あなた)をお(した)いする、婚約者の最有力候補なんですのよ!」


「ちょっと待て! そんなの初耳だぞ!」


貴方(あなた)がわたくしをご存じないのも、しかたがないですわ。ですが、わたくしは貴方(あなた)と結ばれるため、先日、婚約者の悪評をでっち上げて、婚約破棄を宣言したのですよ!」


「なんでそこまでするんだよ!」


「愛の力ですわっ!」


 さらに胸部を押し込んで来る。


「アンタのことマジで知らないんだがッ!」


「これから、わたくしのことを知って頂ければ結構です。一応、明言しますけど、わたくし、見た目はお嬢様に見えて実は貧乏という偽者ではなく、本当に実家がお金持ちで、婚約相手だった男性は某大手グループの御曹司(おんぞうし)でしたの。――わたくしと結ばれたら、莫大な富と名誉が手に入るのですわ! 貴方(あなた)にも悪い話ではないでしょう?」


 喋りまくる令嬢にあなたが圧倒されていると、母親もこちらのほうに来ていた。


「莫大な富と名誉は大変素晴らしい! 息子よ、この子と結婚なさい!」


「お母様! ご助言、感謝いたしますわ!」


「ダメですぅ~っ! 富と名誉に釣られてもロクなことがないですぅっ!」


 幽霊まで近くにいた。


「ですけどぉ、どうしてもお金がいっぱい欲しいのであれば、私が江戸幕府の埋蔵金(まいぞうきん)がある可能性の場所をお教えしますよぅ~。さあ、未来の旦那様! 私と結婚して、ご一緒に、一攫千金(いっかくせんきん)を目指しましょう~っ!」


埋蔵金(まいぞうきん)もロマンがあって魅力的よねぇ~! お母さん、令嬢ちゃんと幽霊ちゃんとで迷っちゃう~!」


 青いエプロンをつけた母親は頬に両手を当てて、体を左右に揺らす。


「お母様! 埋蔵金(まいぞうきん)という幻想を追い求めるより、わたくしの富のほうが確実ですわ!」


埋蔵金(まいぞうきん)は探す過程も楽しめるのですぅ~! もし見つからなくても、旦那様は私の透け透けボデーが手に入るのですから、じゅうぶんに価値がありますぅ~!」


 盛り上がるピンク達に、あなたはついていけない。


 それよりも、令嬢はいつまで腕にくっついているのだろうか?


 幽霊とは結婚出来ないと思うし、埋蔵金(まいぞうきん)は恐らく見つかりっこない。


 あと、母親は勝手に結婚相手を決めないでほしいと、あなたは不満に思う。


「貴様は女たらしの最低なクズらしいな。だが、貴様の恋愛事情など、元の世界に戻ってから考えろ。そんなことより、ここからの脱出が先決だ」


「……まあ、そうだな」


 あなたはビキニアーマー女の主張を一部受け入れる。


「ではさっそく、ジャングルの中に入りましょうよぅ~、隊長~!」


 幽霊があなたを隊長と呼んだことに、ビキニアーマー女が強く反応した。


「――いや、隊長は私だろう? 私は何度も異次元に来ているから詳しいんだ」


「私が隊長だよっ! 私は保護者で偉いんだから!」


 母親が立候補する。


「わたくしは、貴方(あなた)が隊長さんをやってほしいですわ」


 令嬢から二票めをあなたはもらった。


「私が一票入れて、縦ロールさんも一票ですから、私の未来の旦那様が二票です! 多数決で決まりですぅ~っ!」


「じゃあ、俺がコイツに入れるから二対二で同点だ。それで、俺はコイツに隊長の座を譲る。やっぱり、経験者が隊長をやったほうがいいだろ」


「まあっ! すごく賢い判断で素敵っ! 抱いてッ!」


 ビキニアーマー女が紺色の大きな瞳をきらきらと輝かせて、あなたに迫った。その近づいた顔はこれまでの凛々(りり)しさが消えていて、非常にかわいく見えた。


「……すまない、取り乱した」


 頬を赤く染めているビキニアーマー女は謝罪する。


「君はイケメンでカッコ良くて乱暴者だから、きっといい人なのだろうな」


「急に手のひら返しかよ! 言っておくがな、乱暴者にいい人要素はないからなッ! そもそも俺は乱暴者じゃないッ!」


「行くぞ、隊員達よ! 力を合わせて、この異次元からの脱出を目指すんだ!」


 ビキニアーマー女はあなたを無視して盛大に宣言した。


「おぉーっ!」


 母親は元気良く右手を()げた。


「おぉ~、ですわぁ~っ!」


 令嬢が続いた。


「うらめしやぁ~!」


 明るい声で幽霊も同調した。


 こうしてあなた達探検隊は、ビキニアーマー女を先頭に、秘宝の発見を求めて出発した。

第三話をお読み下さり、ありがとうございました。


次が最終話です。よろしくお願いします。

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