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第51話 王都の空気

王都に着いたロアは、きょろきょろと辺りを見渡していた。


石畳の道を馬車が行き交い、

その両側には、大きなレンガ造りの建物がずらりと並んでいる。

戦時のため華やかさこそないが、

それでも商人たちは忙しなく店を出入りし、荷車を押す人の声が絶えなかった。


そして道の先――

視界の奥には、想像すらしたことのない巨大な建物がそびえていた。


護衛兵は前を向いたまま言った。

「あれが王城だ。到着したらすぐに身なりを整えなさい。

 謁見が控えている。くれぐれも無礼のないように」




一方その頃、王城では国王と王子が言い争っていた。


「父上! なぜ認めてくださらないのですか」


「お前の命を救ってくれたことには感謝している。だが……

 たった十四歳の田舎の少年が近衛になるなど、前代未聞だ」


「いえ、あの少年は――色視を持つ可能性があります」


王の眉がわずかに動く。


「『彩失の伝承』のことか?」


「はい。

 ――色視者の誕生により、壁画は解かれ、夜の民は昼の民と出逢う――

 あの少年は、色視者に違いありません」


「急に何を言い出すかと思えば……そんなはずないだろう」


「私は確信しているのです。

 毒を見た時のあの目は、普通ではありませんでした」


国王は腕を組み、黙って考え込んだ。


そのとき、側近が駆け足で入ってきた。

「陛下、例の少年が到着したようです」



謁見の間に向かうと、護衛兵の横で、

簡素な服を着た少年がぎこちなく膝をついていた。


「父上、こちらが私の命を救った少年です」

王子が言い、ロアの方へ視線を向ける。


ロアははっとして顔を上げた。

「ロアと申します」


護衛兵はロアを横目で見て、小声で促すように言った。

「国王陛下、第一王子殿下におかれましては、ご機嫌麗しく」

ロアは慌てて頭を下げ直す。


王はよく通る声で言った。

「顔を上げなさい」


ロアは再び顔を上げる。

王は難しい表情のまま、ロアに問いかけた。


「敵国の皇帝の名は言えるかね?」

「えっと……」


ロアは固まった。

村の学校でも、訓練校でも、そんなことは習ったことがなかった。


王は首を傾げ、低い声で言った。

「……やはり近衛は難しいのではないか?」

「村の学校では優秀であったそうなのですが……」

護衛兵は肩をすくめる。


ロアは焦りで、変な汗がだらだらと出てきた。


その様子を見て、王は深くため息をついた。

「仕方がない。当分は見習いとする。任用するか否かは、のちに判断する」




謁見の間を出ると、ロアは大きく息をついた。


ひとまず居場所は見つかった。

だが――

ひとりだけ粗末な服だったこと。

礼儀作法がわからなかったこと。

質問に答えられなかったこと。

全てが恥ずかしかった。


護衛兵がぽつりとつぶやく。

「……君の分の服も持ってくるべきだったな」

ロアは返す言葉もなく、ただうつむいた。


しばらくすると、廊下の向こうから

カツ、カツ、と硬い靴音が近づいてきた。

立派な服を着た男が姿を現す。


護衛兵が小声で耳打ちした。

「近衛兵の方だ」


近衛兵はロアを一瞥して言った。

「宿舎へ案内する。ついて来なさい」


ロアは背筋を伸ばし、慌ててその後を追った。


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