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第50話 オパールの勲章

目が覚めると、知らない天井だった。

――しばらくして、長年住んだ自分の部屋の天井だと気づいた。


すぐに王都へ出立する必要があった。

懐かしがる暇もなく、急いで食事を終えると、ロアは両親と共に家を出た。


村の道を歩くと、次々と村人が集まってきた。


隣の家のおばさんが言った。

「昨日、護衛の人にロアの昔の様子を聞かれたわよ。

良い子だったって言っておいたわ。学校でも優等生だったのよって」


老人は誇らしそうに胸を張る。

「わしは月光鹿を一人で仕留めた話をしたぞ。父親の代わりにのう。あれは立派じゃった」


その言葉を聞いて、ロアはやっと気づいた。

護衛兵は――身元調査の役割だったのだ。


おばさんは首を傾げる。

「それにしても、どうして急に帰ってきたんだい?丁寧に護衛の人までついて……」


ロアはためらいながら言った。

「詳しくは言えないんだ……でも、別の部隊に配属されるみたい」

「そうか、昇格か!流石『牡鹿狩りのロア』じゃ」

老人は笑った。


「ほら、農場の嬢ちゃんも来ているぞ」

老人が指差す先には、フローラが少し離れて立っていた。


フローラはいつものレースではなく、素朴な麻布の服を着ていた。

だが、まとう空気は、淡くひんやりとした――あの頃のままだった。


ロアはフローラへゆっくり歩み寄る。

フローラは少し目をそらしたまま言った。


「ロア……しばらく手紙が来なくて、心配したわよ」

「ごめん、色々あって、忙しかったんだ」


フローラは黙って下を向くと、ポケットから何かを取り出した。


「私、ロアからたくさん物をもらったでしょ。

影守りの紐に、月光鹿のかんざしに、尾羽のペン……だから、お返し」


その手に乗ったものは、見覚えのある光をまとっていた。

淡い水の膜のような揺らぎ。その奥には、温かい光や爽やかな光が小さく瞬いている。


幼い頃、フローラの誕生日に送った石――それを金具で留め、ペンダントにしたものだった。


「私、ロアの気に入るものがわからなくて……

でも、ロアにもらったものなら、確かだと思ったの」


フローラは背伸びをして、ペンダントをロアの首にかけようとした。

ロアは慌てて身をかがめる。


――いつのまにか、二人の身長には差が開いていた。


胸元に下がった石を、ロアはそっと手に取った。

フローラのまとう空気に似た、淡い光がゆらゆらと揺れる。


「フローラ……ありがとう。また必ず、戻ってくるから」


声が震えそうになるのを押し殺し、

ロアは石を大切に握ったまま、フローラに背を向けた。


浮かんでくる涙を、どうしても見られたくなかった。



こっそりと涙を拭い、顔を上げると、

両親と護衛兵はもう村の出口に立っていた。


ロアは急ぎ足で向かう。


ガルンとリネアはロアの手をしっかりと握り、言った。

「ロア、体に気をつけて」

「無理をするなよ」


ロアはうなずき、まっすぐ前を向いて言った。

「行ってきます」


そして護衛と共に、王都への道を歩き出した。


村が見えなくなるまで、

ロアは一度も振り返らなかった。


ここまで読んでくださってありがとうございます。これにて第四章終了です。

もし気に入っていただけたら、ログインして評価いただけると、とても励みになります!


第五章からは、王都編に入ります。

引き続きお楽しみいただけると嬉しいです。

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