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第42話 軋む音

時は遡り、ロアが陣内の設営作業を始めた頃――


ファルクとラピンは、弓置き場の前で固まっていた。


「弓も消えている……だと?」

ファルクは愕然とした表情で、空いた弓架を見つめた。


ラピンは不安げに言う。

「やっぱり……倉庫を見に行った時、キシって音がしたから」

「弓兵の音じゃないのか?」

「弓を持って歩く音だった。でも……あんなに低い音、リオの大弓だけだよ」

「盗まれたか?いや……弓を持ったまま消えた?」

「でも、作業中は弓を置いているはず……」


二人はしばし考え込む。


「音がした方向に連れて行ってくれ」

ファルクが顔を上げて言った。


「でも、作業は?」

「それどころじゃない。これは明らかに……不自然だ」


ファルクの鋭い目が、焦りでわずかに揺れていた。

ラピンは少しためらったが、こくりとうなずいた。




二人は倉庫へ向かい、藪に身をひそめた。


「あのあたりから音がした」

ラピンは、陣の近く――そのさらに向こうを指差す。


「陣の方か?」

「ううん、もっと遠くだと思う……陣の横の、木がたくさんあるところ」


ファルクは驚いた目でラピンを見た。

到底聞こえるとは思えない距離だ。だが――


「……お前のことを信じる。行こう」

はっきりとそう言った。




二人は大きく迂回し、木々の中へ足を踏み入れた。


ラピンは地面にまっすぐ立ち、耳をすませる。


――風の音、草の揺れる音、兵たちの作業する音……

どれも違う。


ラピンは集中するように目を閉じた。


――キシッ


「これだ」


ラピンは斜め後ろを指さした。上り坂になっている場所だ。



二人は坂を上り始めた。

落ち葉の上に薄く雪が積もっている。足を滑らせないよう慎重に進んでいく。


そのとき、ラピンが急に立ち止まった。


「リオだ」

「声がしたのか?」

「違う、弓を引く音……!」


ラピンは一瞬だけ固まり、息をのむ。


「もう一人いる……! 息が二人分ある!」


その言葉が終わるより早く、ファルクは目を見開き、

ラピンの腕をつかんで坂を駆け上がった。



坂の上に出た瞬間、ファルクは周囲をぐるりと見渡し――ある一点で動きを止めた。


「……!」


そこには、大弓を引き絞るリオと、

――その背後に、静かに立つ男の姿があった。


立ち尽くすラピンの横を、ファルクは猛スピードで駆け下りた。


男は剣をリオの背に突き付け、何かを低くささやいている。

陣の方から怒号が上がり、騒ぎが広がっていく。


だがファルクは脇目も振らず、坂を滑るように下りる。


リオは目を見開き、弓を限界まで張り詰めている。

ファルクが口を開きかけた、そのとき。


シュパッ


矢が陣幕の方へ、一直線に飛んでいった。


男は陣幕の方向を見やり、怒りに顔をゆがめた。

そして剣を振り上げた瞬間――


「動くな」


ファルクが男の喉元に短刀を突き付けていた。




ラピンはしばらく震えていたが、ゆっくりと坂を下り始めた。


少し下ると、弓を抱えたまま震えているリオと、

ファルクに短刀を突き付けられ、両手を上げている男の姿が見えた。


「曲者!」


そのとき、陣の方から兵たちが駆けてきた。

男はすぐに取り押さえられる。


「そこの補助兵三人も来なさい」

兵が告げる。


三人はそのまま兵に連れられ、陣幕の中へと入っていった。


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