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第39話 補助兵の価値

野営を挟みながら歩き続け、ようやく前線近くの野営中の兵たちと合流した。

若い人もいるが、親くらいの年齢の兵も多い。

ロアは思わず、ガルンの姿を思い出した。


教官が言う。

「今日はここで休む。先輩兵の分の食事も用意するように」


大人が増えたことで、ロアの胸には緊張と安心が半分ずつ入り混じった。


ロアは背中の鍋を降ろし、ほっと息をついた。

ふと見ると、リオが数人の大人に囲まれている。

皆、弓を背負った弓兵たちだ。


「坊主、えらく大きな弓じゃないか。引けるのかい?」

「はい!猟師をしていたので」

「へえ。飯用に鳥でも捕まえてくれねえもんかなあ」


リオは上空を見上げた。

朝焼けの中、小鳥が枝を飛び回っている。


「……やってみます」


リオは矢をつがえ、鳥に向けて弓を引き絞る。


「おいおい、正気か?」

「当たるわけ――」


言い終わる前に、矢が放たれた。

小鳥が、ひゅ、と落下する。


場がどっと沸いた。


「坊主すげえな!一緒に前線に出てくれよ!」

「えっ……」

「はは、冗談だよ。まだひよっこの補助兵だろ」


弓兵たちは笑いながらリオの肩を叩いた。



粥が出来上がると、少年らは大人の兵たちと一緒に食事をとった。

リオはまだ弓兵のおじさんたちに囲まれている。


ハニスが言う。

「リオはすごいね。もうあんなに馴染んでる」


ラピンがほっとしたように笑う。

「なんか……思ったより怖くないかも」


ファルクは粥をすすりながら言った。

「まだ戦場じゃないからな。とはいえ、息抜きは大切だ」





翌日、少年らは再び列を組んで歩き出した。

しばらく進むと、前方に陣幕が見えてきた。分厚い布が風に揺れ、兵たちの影が忙しなく行き交っている。


教官が列に向かって声を張り上げた。

「陣幕の中には殿下がいらっしゃる。くれぐれも無礼を働かないように。到着したら、拠点の設営作業を手伝え」


少年らは拠点に着くと、テントやロープを受け取り、黙々と作業を始めた。

大人の兵たちの間を行き来しながら、張り詰めた空気に飲まれそうになる。



作業が半ば進んだ頃、空が明るみ始めた。

少年らは作業を中断し、あちこちから補助兵用のテントに集まりだす。


ロアたちも自分のテントの前に集まったが――リオの姿がない。


ロアは心配そうに言う。

「......リオ、遅いね」


ハニスとラピンも口々に言う。

「迷子かな?」

「もうちょっとだけ待ってみる?」


周りの少年らは配られた乾パンをかじり始めていた。

だが、待てども待てどもリオは戻ってこない。


ロアは不安そうに言う。

「どうしよう......何かあったのかな」


ハニスも思い詰めた顔で言う。

「教官に言った方がいいかも......」


だが、ラピンがハニスの袖を掴んだ。

「でも......もし逃げたって思われたら?」


皆、息をのんだ。


――逃亡は重罪だ。

リオが逃げるとは思えない。

けれど、もし勘違いされたら?


ファルクが沈黙を破る。

「......どちらにしても、この状況で、補助兵たったひとりのために捜索隊を出すとは思えん」


ロアたちは口をつぐんだ。

迷っている間にも、周りの少年たちは次々とテントに入っていく。


「とりあえず、中で話し合おう」


五人はテントに入った。

薄暗い布の中に、緊張が静かに満ちていった。


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