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第30話 車輪

倉庫の前で部屋番号を告げると、教官補佐が無言で一枚の紙を手渡してきた。

そこには、今日運ぶ配給の一覧が細かく書かれている。


穀物、塩、油、薬、包帯、毛布、干し野菜、テント……


リオは紙を覗き込み、顔をこわばらせた。

「こ、こんなに背負って運べるかな……」


力自慢のハニスですら、眉をひそめている。


だが倉庫の扉が開くと、そこには何台もの荷車が並んでいた。

ロアは思わず息をつく。

(……荷車を使うんだ)


教官が大きな声で言った。

「各班、割り当てられた物資を積みこめ!」


ロアたちは手分けして積み込みを始めた。

ロアは塩袋を受け取りに行ったが、

抱えた瞬間、腕にずしりと重さがのしかかった。


(……こんなに必要なんだ)


穀物袋も、油の革袋も、包帯の箱も、どれも重い。

村の生活が、この荷車一台にかかっているのだと実感する。


五人で力を合わせて荷車を押し、訓練校の門へ向かう。

門の前で教官が地図を渡し、言った。


「明るくなるまでには村に着くはずだ。到着したら村で泊めてもらえ。

万が一間に合わない場合は野営しろ。……確実に届けるように」


ロアは、物資の中にあったテントを思い出した。

(あれは……僕たちのためのものだったんだ)


五人は荷車を押しながら道を進む。

分かれ道に来るたび、他の班の荷車が別の方向へ消えていき、

やがてロアたちの荷車だけが残った。


「次は……この小道を進むみたい」

ロアが地図を見ながら言うと、

五人は木々が鬱蒼と茂る細い道へ入っていった。


心細さが、じわりと胸に広がる。


リオが不安げに言う。

「無事にたどり着けるかな……」


ハニスが励ますように答える。

「この道を抜ければ、村までもう少しのはずだよ」


そのとき、ラピンがつぶやいた。

「……ねえ、なんかギシギシって聞こえない?」


――次の瞬間、荷車ががたん、と大きく傾いた。


「えっ!?」


五人は慌てて荷車を見る。


――車輪の軸が、ぽっきりと折れていた。



「……車輪が、折れてる」


ロアが言うと、ハニスはしゃがみ込み、欠けた軸を指でなぞった。

木の繊維がささくれ、ぽきりと折れた跡が生々しい。


リオは焦った顔で言う。

「ど、どうしよう……これじゃ進めないよ」


ハニスが腕を組む。

「背負って運ぶにしても……全部は無理そうだね。穀物だけでも相当重い」


ラピンはハニスの方を見て言う。

「背負っていくの!?……やっぱり、いったん帰った方が良いんじゃない?」


ロアは地図を握りしめたまま、荷車と仲間たちを見比べた。

(……ここで止まったら、村に届かない)


「どうする……?」

リオが震える声で言った。


そのときだった。


「君たち、どうしたの?」


柔らかい声が小道の奥から聞こえた。


五人が振り返ると、

旅装束の大人がひとり、道を駆けてきた。

小柄で、肩には小さな荷袋を掛けている。


ロアはほっと息をついた。

「荷車が壊れちゃって……」


男は近づき、しゃがみ込んで車輪を覗き込む。

「なるほど、軸が折れてるね。少し待ってくれれば直せるよ」


リオの顔がぱっと明るくなる。

「ほんとに!?」

「もちろん。訓練校の子たちだろう?」

旅人は微笑む。


ロアもほっとして頭を下げた。

「……はい、大事な配給なんです。よろしくお願いします」

「わかった。仲間を呼んでくるから、待っててね」

旅人はそう言って小道を戻って行った。


ハニスは息をついて言った。

「良かった。これでどうにか運べそう……かな?」

ラピンも胸をなでおろす。

「助かった……」


ただひとり、ファルクだけが黙っていた。

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