第26話 模擬戦・中編
模擬戦が始まると、ロアはリオ、ハニスと共に自陣に残った。
三人は見張り役だ。
自陣は広く設定されており、境界は木々の影が複雑に重なっている。
全域を見張るのはなかなか難しい。
リオが弓を抱えながら言う。
「なかなか敵、来ねーな」
「向こうの陣まで、結構離れてるからね」
ハニスが穏やかに答える。
ロアはぼんやりと森の奥を見つめていた。
そのとき──
遠くの木々の間を、異質な影が横切った。
「リオ、あれ!」
「えっ、どこ?!」
リオは目を凝らすが、見つけられない。
ロアは森の中の『異物』を、一本の線を描くように指し示した。
リオはその線をなぞるように視線を合わせ、弓を引く。
ロアの示す軌道に合わせて、リオの矢先も吸い寄せられるように動く。
ロアの指先は、リオの矢を導く『目』になっていた。
「……見つけた」
リオがそうつぶやくと同時に矢が放たれ、影に命中した。
「くそー、見つけるのはえーよ」
迷暗服の胸に墨をつけた第二班の少年が、悔しそうに歩いてくる。
自陣から「おおーっ!」と歓声が上がり、少年らがリオを取り囲んだ。
「やっぱリオすげえ!」
「さすが弓の天才!」
「ううん、兄ちゃんが見つけてくれたんだ!」
リオはぱっとロアの方を振り返り、誇らしげに笑った。
「兄弟の連携技か!」
「残り2人も頼んだぞ!」
「任せた!」
ロアとリオは目を合わせ、笑みを交わした。
一方、第二班では――
ファルクも自陣に残り、静かに森を見張っていた。
周りの少年らがひそひそと文句を言う。
「やっぱファルクが行った方がよかったんじゃね?」
「無駄な奴に一枠使っちまったな……」
ファルクは前を見たまま、低くつぶやいた。
「……うるさい。集中が途切れる」
その一言で、少年らは口をつぐむ。
次の瞬間、ファルクがすっと立ち上がり、森へ入っていった。
しばらくして──
「うわっ!」
「えっ?……うわあ!!」
悲鳴が上がる。
森から現れたのは、ファルクと第一班の攻撃役二人だった。
一人は迷暗服の首元に、もう一人は背に墨をつけている。
陣からどよめきが起こる。
「ファルク、二人も捕まえたのか?」
「防衛もすげえんだな!」
「てかお前ら、なんで二人一緒にいるんだよ。なかよしか?」
攻撃役の少年らは口々に叫ぶ。
「なかよしじゃねーよ!」
「近づいてから挟み撃ちにしようとしたんだよ!」
ファルクは黙って眉をひそめていた。
そして、鋭い声をあげる。
「右だ!全員走れ!!」
少年らは一瞬固まり──
次の瞬間、右手の森へ駆け出した。
やがて、体中に墨をつけられた第一班の少年が、囲まれながら出てきた。
「ずるいよ、こんなに取り囲むなんて!」
ファルクは無表情で言った。
「最後のひとりだ。
見つけたら、自陣の守りを捨てて捕らえに行くのが普通だ」
少年らはぽかんとし、目を瞬かせた。




