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第25話 模擬戦・前編

ある日の夕、いつものように訓練場に集まると、

教官が声を張って言った。


「今日から模擬戦の訓練も加わるぞ!」


ざわっと少年たちが騒ぎ出す。

教官は無造作に紙束を配った。


「これが日程表だ。今日の対象者は40名」


ロアは自分の名前を見つけて、心臓がどきりと跳ねた。

だがすぐに、リオ、ファルク、ハニス、ラピンの名前が続くのが目に入る。

どうやら名簿順らしい。

初回から当たって驚いたが、寮の仲間が一緒だと思うと、緊張が少し和らいだ。


教官は地面に棒で簡単な図を描きながら言う。


「20人対20人の班対抗戦だ。

各班から3人を攻撃役として敵陣に向かわせる。

残り17人は自陣を守れ。

敵が1人でも陣地に入れば勝利。両班とも防衛成功なら引き分けだ」


次に、教官は木刀と弓矢を見せた。

普段使うものよりずっと小さく、矢尻は丸い。


「木刀と矢には墨がついている。

防衛側はこれで攻撃役を止めろ。

攻撃役は、墨をつけられたら退場だ」


少年らはわくわくした顔で聞いている。


だが教官は、声の調子を硬くして言った。

「これは奇襲とその防衛の訓練だ。戦場ではいつ敵が襲ってくるかわからない。真剣に取り組め」


少年らの顔が、少し引き締まった。



そして、班分けのためにくじが配られた。


ロアは紙を開いた。

『第一班』

と書かれている。


「第一班は右、第二班は左に整列!」


教官が言うと、少年らはわらわらと移動し始めた。


第一班の列には、リオとハニスの姿があった。

ロアはほっと息をつく。


(よかった、二人と一緒だ)


一方、ファルクとラピンは第二班に入っていた。

ファルクはいつも通り無表情で、

ラピンは不安そうに列の端に立っている。



そのまま森の入口まで移動すると、教官が言った。


「各班、自陣に移動してから攻撃役を3人選べ。他班には知らせるな。

攻撃役には、この迷暗服を着せる」


そして、各班3着ずつ、迷暗服が配られた。

少年たちは班に分かれて移動し、作戦会議が始まった。




第一班では、活発な少年3人が勢いよく手を挙げた。


「俺行く!」

「じゃあ俺も!」

「俺も行きたい!!」


あっという間に攻撃役が決まる。


こうしてロア、リオ、ハニスは3人とも防衛役に残ることになった。

攻撃役に選ばれずに済み、ロアは少し安心した。

そのとき、リオが嬉しそうに話しかけてきた。


「兄ちゃん、一緒に防衛しような!ハニスも!」

「もちろん。でも、リオは攻撃役じゃなくてよかったの?」

「俺は弓が使いたいからさ!」


リオはそう言って、小さな弓矢を抱えた。



一方、第二班では――

こちらも、少年たちが盛り上がっていた。


「攻撃役はあいつとあいつと……

当然あと一人はファルクで決まりだよな!」


そう言って少年らは、ファルクの方を振り向いた。


だが、ファルクは無表情のまま言い放った。


「――いや、ラピンを行かせる」


空気がぴたりと止まった。


次の瞬間、少年たちがニヤリと笑う。


「おいおい、あいつ泣くぞ」

「まあいいか、どうせすぐ捕まるし」


ラピンはびくっと肩を震わせ、

目に涙を浮かべた。


ファルクは何も言わず、ただ横目で一度だけラピンの方を見た。





しばらくして、教官の笛が鋭く鳴り響く。模擬戦開始の合図だ。

第一班の攻撃役3人は勢いよく駆け出した。


一方、第二班は──

ラピンだけがその場にうずくまり、動けずにいた。


「おい何してるんだよ!」

「早く行けよ!」


責める声が飛ぶ。

ラピンは涙をこぼしそうになりながら震えていた。


そのとき、ファルクが言った。


「……おい、こっち来い」


ラピンの手をつかみ、少し離れた木陰まで連れていく。

木々が生い茂り、他の少年たちの視線が届かない場所へ。


ファルクは静かに言った。


「ラピン。俺はお前ができるって知っている」


ラピンが顔を上げる。


ファルクはラピンの頭巾をそっと外し、今度は首にしっかりと結び直してやった。

ラピンの目が大きく見開かれる。


「さあ、行ってこい」


ファルクはラピンの背を、とん、と軽く押した。


ラピンは一瞬、虚空を見つめ──

次の瞬間、森の奥へ向かって駆け出し、木々の間に吸い込まれるように消えていった。

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