第18話 実力がすべて
翌日の宵。
本格的に訓練が始まった。
訓練内容は、適性によって教官が決める。
教官が声を張り上げた。
「そこの猟師の子2名はこっちだ!」
ロアとリオが呼ばれ、弓の訓練場へ向かう。
「自前の弓がある者はそれを使え。ない者は貸出の弓を取れ」
リオは父・ガルンの弓を持ってきていた。
貸出の弓よりずっと大きく、リオの身長ほどもある。
木の影は濃く、見ているだけで重さが伝わってくる。
弦も太く、張り替えた跡が何度もあり、触ったら指が切れそうなほどぴんと張っていた。
「……あれ、本当に引けるのか?」
「大人の弓じゃないのか……?」
周りの少年たちはひそひそ話している。
リオが小声で言った。
「兄ちゃん、交代で使う?」
ロアは腰のアトラトルに触れた。
「僕はこれをもらったから大丈夫。弓は貸出のを使うよ」
弓矢の訓練が始まる。
離れた場所に、的が規則正しく並んでいた。
教官の声が響く。
「用意……打て!」
一斉に矢が放たれた。
リオの矢は、迷いなく的の中心へ吸い込まれる。
ロアの矢は端に当たり、地面に落ちた。
「次! 用意!」
二射目。
ロアの矢はようやく的に刺さった。
ほっと息をついた瞬間、周囲がざわめく。
リオの的を見ると──
二本目の矢が、一本目の矢じりを正確に射抜いていた。
教官がリオを呼ぶ。
「お前、ちょっと来い」
リオは教官に連れられ、少し離れた場所へ動いた。
そこには、木の陰、地面すれすれ、高所……
様々な位置に的が散らばっていた。
「あれを射抜いてみろ」
リオは黙って弓を構えた。
その瞬間、表情が消える。
空気が張りつめ、
リオの視線だけが遠くの的に吸い寄せられていく。
大きな弓を、少年とは思えない力でギリギリと引き絞り──
放つ。
矢は音を置き去りにして飛び、
はるか遠くの木の上の的に突き刺さった。
どよめきが広がる。
リオは集中を切らさず、次々と遠距離の的を射抜いていく。
教官はうなずいた。
「よし。お前はこれから、ここの的で練習するように」
「はい!!」
教官が振り返る。
「他の者はそのまま訓練を続けろ」
ロアたちは元の練習場へ戻っていった。
教官がロアに声をかける。
「お前、あいつの兄か?」
「はい、そうです」
「弟に比べると劣るな。自前の弓はないのか?」
ロアは言葉に詰まりながら答えた。
「……はい。違う武器を持ってきました」
教官の視線が、ロアの腰の木の棒──アトラトルに向く。
「その棒が武器か?」
「はい。槍を投げるのに使います」
「では、やってみろ」
ロアは緊張で手を震わせながら槍を掛け、思い切って投げた。
ヒュン、と風を裂き──
槍は一直線に飛び、的をぶち抜く。
板が砕ける鋭い音が響き、槍はそのまま後ろの木に深々と刺さった。
訓練場の空気が止まる。
教官はわずかに目を見開いた。
「……少し貸してみろ」
教官はアトラトルを受け取り、槍を掛けて投げた。
屈強な腕から放たれた槍は勢いよく飛んだが、
的を大きくそれて藪に落ちた。
「簡易的な道具だから全槍兵に持たせようかと思ったが……簡単ではないな」
教官はロアにアトラトルを返す。
「お前は今日からそれを使ってよい」
ロアは確信した。
実力さえあれば認められる。
――ここは、そういう世界なのだ。




