第17話 五人部屋
「リオ!」
「はい!!」
「ロア!」
「……はい!」
鋭い声が訓練場に響いた。
ロアたち、徴兵された少年らは、
訓練校に集められるとすぐに点呼を取られた。
声を張り上げる教官は、
村の学校の先生とは比べものにならないほど厳しそうだ。
ロアは返事をしながら、
自分が本当に『軍』という場所に来てしまったことを実感した。
訓練校は、王都の郊外に建つ大きな軍施設だった。
広い訓練場、剣や弓の練習所、少年たちの寝泊まりする寮、
食堂や医務室など、必要な設備がひと通りそろっている。
訓練校のそばには、軍事演習用の小さな森もあり、
隠密行動や索敵の訓練に使われるという。
集められた少年らは、訓練場いっぱいに並ぶほどの人数だった。
しかも、これでも今日到着した者だけらしい。
点呼はまだまだ続く。
「ファルク!」
「はい」
低い声で返事をした少年は、まるで大人のような落ち着きがあった。
鋭い目つきに、腰の短剣がよく似合っている。
「ハニス!」
「はい!」
次に呼ばれた少年は大柄だったが、
巻き毛のせいかどこか柔らかい雰囲気がある。
なぜか目をつむったままなのが気になった。
「ラピン!」
「ひっ……!」
ひとり、明らかに様子のおかしい少年がいた。
頭巾を深くかぶり、体を震わせている。
耳あてのような布がぶら下がっていて、怯えた宵ウサギのように見えた。
「こら!しゃんとせんか!」
「……!!」
教官は怒鳴りながらも、どこか呆れたような顔をしていた。
こうして、ロアたちの新しい生活が始まった。
点呼が終わると、少年らは荷物を抱えて寮へ向かった。
名簿の順番で部屋が割り当てられるらしく、
ロアとリオ、ファルク、ハニス、ラピンの五人は同じ部屋になった。
「俺リオっていうんだ!今日からよろしく!
こっちは兄ちゃんのロア!」
「ロアです。よろしく」
リオの勢いに押されるようにして、
ロアもなんとか挨拶をすることができた。
「僕はハニス。
目が見えないから迷惑かけることがあるかもしれないけど、よろしくね」
巻き毛の少年が穏やかな声で言った。
さっき目をつむっていたのは、盲目だからだとわかった。
「そうなんだ、なにか手伝うこととかある?」
リオがすぐに声をかける。
「ありがとう。でも日常生活には支障ないから、大丈夫だよ」
ハニスはにこりと笑った。
夜の民は聴覚や嗅覚、触覚が優れている。
――目が見えなくても、他の感覚で十分に補えるのだ。
「ファルク。よろしく」
低い声の少年が言った。
暗い部屋の中で、鋭い目だけが光っている。
「よろしく!その短刀、かっこいいね!」
リオが目を輝かせる。
ファルクは腰の短刀に視線を落とした。
「……商人の護衛をやっていたからな」
その一言に、リオは感心したように頷いた。
ロアはふと、部屋のすみに目を向けた。
先ほど様子のおかしかった少年――ラピンが、
布団の端で小さく縮こまっている。
ロアはゆっくり近づき、話しかけてみた。
「ラピンくん……だっけ?」
「……うん」
ラピンは小さくうなずいた。
――そのとき、隣の部屋からがたん、と大きな音がした。
何かが倒れたのだろう。
「……!」
ラピンはびくりと肩を震わせ、さらに縮こまった。
「……大きい音、苦手?」
ラピンはこくこくとうなずく。
「……なるべく小さい声で話しかけるから」
ロアがそう言うと、ラピンは少しだけ顔をあげた。
頭巾の隙間から覗いた髪は、珍しい見た目をしていた。
ロアには、夕日に照らされた木の幹のように見えた。




