33.反乱
「くそ、一刻も早く王都に戻らなければ。すまないが馬車を出してくれ。我輩は共に旅をした友を連れてくる!」
「待ってください、グレイス様ッ……」
その瞬間、グレイスさんが振り帰り。それと同時に声を挙げた。
「な、なんだ一体…… ま、まさか!! お前たち……」
そうだ、ここまで来れば俺でもコイツらが何をしようとしてるのかわかる。
場の空気が、恐いくらい針積めて行くのが解る。
それにともなって、一人、また一人と何かを決意したかのように、金槌やクワを握り直す。
「すいません、グレイス様。貴方がおっしゃった様になれば希望は持てましたが、今の王宮は、貴族達は信用できません。もう、この国は終わりです。終わりなんです」
なんてことだ……
まさか、こんなことになるなんて……
「せめて、貴方の首を帝国に献上します。そうすれば、この町だけは助かるかもしれない!」
今にも泣き出しそうな声で男が叫ぶ。
余りにも酷く残酷な話だ。
最も国を憂い、最も民を想い。それでいて恐らく最も優秀であろう男をここで殺すか……
この国はそこまで瀬戸際に立たされているのか……
その様子を見て、グレイスさんは力無く肩を落とした。
「そうか、それならば仕方あるまい。だが、一つ約束して欲しい。それさえ成されれば我輩は大人しく捕まろう……」
「な、なんですか!?」
その声色からして、一触即発の雰囲気がうかがえる。
グレイスさんは至って冷静だけど、他の民衆達が余りにも爆発的寸前だ……
こんな状況でグレイスさんは何を約束させるつもりなんだ?
そんなことを思っていると、グレイスさんはおもむろに口を開いた。
「我輩と共に旅をした少女がいる、彼女だけはどうにか面倒を見てやって欲しい、守ってやって欲しい……」
そう言うと、彼は両の膝をつき懇願するかのように頭を垂れた。
私は、その様に思わず息を飲んでしまった。
あれだけ誇り高く、貴人然としてグレイスさんが懇願する様に、哀願する様に額を地面につけているのだ。
「彼女はとても気丈で優しい子なのだ。人に迷惑を掛けまいと懸命に努力する健気な娘なので、だからどうかお主等の手で面倒を見て欲しい、頼む!」
そんな……
私の為に……
倉庫内が静まり返る。
良心の呵責、罪悪感、それの責めぎ合いが彼等の中で起きているのだろう。
それでも、きっと彼等は恐怖には勝てない。
良心よりも、罪悪感よりも、きっと恐怖がまさる。
彼等はグレイスさんの様に強くないのだから……
ならば……
私がっ!!
いや、俺がッ!!
俺が全部全部めちゃくちゃにしてやる!!
あの人をッ!!
グレイスさんをッ!!
ここで殺させたりなんか、絶対しないッ!、
俺は積み荷を両手で掴む。
そして、恐怖に犯された民衆に向けて全力でブン投げて見せた。
「うりゃやゃゃやゃゃゃ!!」




