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呪われし戦乙女の冒険譚  作者: ふたばみつき
異世界逃亡編
32/33

33.反乱

「くそ、一刻も早く王都に戻らなければ。すまないが馬車を出してくれ。我輩は共に旅をした友を連れてくる!」

 

「待ってください、グレイス様ッ……」


 その瞬間、グレイスさんが振り帰り。それと同時に声を挙げた。


「な、なんだ一体…… ま、まさか!! お前たち……」


 そうだ、ここまで来れば俺でもコイツらが何をしようとしてるのかわかる。


 場の空気が、恐いくらい針積めて行くのが解る。

 それにともなって、一人、また一人と何かを決意したかのように、金槌やクワを握り直す。


「すいません、グレイス様。貴方がおっしゃった様になれば希望は持てましたが、今の王宮は、貴族達は信用できません。もう、この国は終わりです。終わりなんです」


 なんてことだ……

 まさか、こんなことになるなんて……


「せめて、貴方の首を帝国に献上します。そうすれば、この町だけは助かるかもしれない!」


 今にも泣き出しそうな声で男が叫ぶ。


 余りにも酷く残酷な話だ。

 最も国を憂い、最も民を想い。それでいて恐らく最も優秀であろう男をここで殺すか……


 この国はそこまで瀬戸際に立たされているのか……


 その様子を見て、グレイスさんは力無く肩を落とした。

 

「そうか、それならば仕方あるまい。だが、一つ約束して欲しい。それさえ成されれば我輩は大人しく捕まろう……」


「な、なんですか!?」


 その声色からして、一触即発の雰囲気がうかがえる。

 グレイスさんは至って冷静だけど、他の民衆達が余りにも爆発的寸前だ……


 こんな状況でグレイスさんは何を約束させるつもりなんだ?


 そんなことを思っていると、グレイスさんはおもむろに口を開いた。


「我輩と共に旅をした少女がいる、彼女だけはどうにか面倒を見てやって欲しい、守ってやって欲しい……」


 そう言うと、彼は両の膝をつき懇願するかのように頭を垂れた。


 私は、その様に思わず息を飲んでしまった。


 あれだけ誇り高く、貴人然としてグレイスさんが懇願する様に、哀願する様に額を地面につけているのだ。


「彼女はとても気丈で優しい子なのだ。人に迷惑を掛けまいと懸命に努力する健気な娘なので、だからどうかお主等の手で面倒を見て欲しい、頼む!」


 そんな……

 私の為に……


 倉庫内が静まり返る。

 良心の呵責、罪悪感、それの責めぎ合いが彼等の中で起きているのだろう。


 それでも、きっと彼等は恐怖には勝てない。

 良心よりも、罪悪感よりも、きっと恐怖がまさる。


 彼等はグレイスさんの様に強くないのだから……

 

 ならば……


 私がっ!!

 いや、俺がッ!!


 俺が全部全部めちゃくちゃにしてやる!!


 あの人をッ!!

 グレイスさんをッ!!


 ここで殺させたりなんか、絶対しないッ!、


 俺は積み荷を両手で掴む。

 そして、恐怖に犯された民衆に向けて全力でブン投げて見せた。


「うりゃやゃゃやゃゃゃ!!」

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