31.月夜の晩
夜空を月が照らし、荒野が青白く光る。
夜なのに不思議と明るく、町には何処か悲しげな雰囲気が漂っている。
アルバの町以来のフカフカのベッド。
床につけば直ぐにぐっすり眠れると思ったが以外と寝付けない。
何となく想像はつく。
この宿の異常な接待。
あの香辛料の味、グレイスさんが飲んでいた葡萄酒だかワインだかなんだか……
決して、不満があるわけではない。
ただあれだけの歓迎を受ける程の金銭を俺達は持っているのか、グレイスさんは持っていたのか?
もしかしたら、グレイスさんがサプライズとして用意していたのかもしれない。
だけど、それなら元から部屋に御馳走を運んでいるはずだ……
と言うことは、グレイスさんの思ってもいなかった歓迎と言う事だろう。
それならば、そんな得たいの知れない物をグレイスさんはあんな得意気に頂くだろうか……
グレイスさんにしては浅はかではないか?
て言うか、俺の中でかなりグレイスさんの評価がかなり高いな。
我ながら、ここまでグレイスさんの事を信頼していたとは……
そんなことを考えている時、不意にもう一つのベッドから音がした。
グレイスさんの使っているベッドからだ……
何やら身支度をしているらしく、なにやらカチャカチャと音を立てている。
もしかして、夜逃げ?
それとも食い逃げ?
それは一番グレイスさんらしくないな……
どうしよう……
そんなことを思っていると、彼は部屋から静かに出て行った。
私は沈黙の中に取り残された……
静かになった部屋の中。グレイスさんの足音が遠ざかって行くのを確認する。
「行っちゃった……」
俺は一人、むくりと起き上がる。
先ずは荷物を確認……
見ると、ベッドの麓でキチンと整理整頓された荷物が残されている。
「うん、残ってる……」
流石に剣は持っていったみたいだけど、これなら夜逃げではなさそうだ。
しかし、彼はなにをしに町へと行ったのだ?
怪しい極まりないぞ……
これは……
「これは確かめるしかありませんな……」
俺はベッドから飛び起きると素早く支度した。
そんな折、彼の置いていった荷物が視線に入る。
「一応、私も持って行くか……」
私は剣を手に急いで部屋を後にし、夜の町へと繰り出した……




