30.宿
宿に着くと驚くことに、まるで俺達を待ち受けていたのでは? と、思われる程の歓迎を受けた。
暖かいスープに熱々のソーセージ、ベーコン。パンにバターに牛乳、サラダ。
あまりに歓迎に目が回ってしまう程だった。
しかし、グレイスさんはそんな歓迎を他所に、早々に部屋に案内して欲しいと店主に伝え。食事も部屋に持ってくる様にと頼んだ。
店主を横切る際に鼻をくすぐったソーセージの香ばしいニオイが忘れられなかった。
「ふふ、流石のヨゾラ殿も胸が弾んでおりますな」
部屋でソワソワしていると、私の様子を面白そうに眺めていたグレイスさんが口を開いた。
「それは、まあ…… アレだけの御馳走を見せられましては……」
少し恥ずかしくなる。
思わずフードで顔を隠す。
そんな話をしていると先程の御馳走達が部屋に運び込まれてきた。
「はあ…… すごい、すごい♪」
思わず身体が飛び上がってしまう。
「さあ、食べましょう、ヨゾラ殿」
そう言うと、彼は席についてみせた。
私もそれに習って席に着く。
スープにパン。ソーセージにベーコン。牛乳に水。そして、サラダ。
ああ、なんて御馳走をなんでしょう。
こんなに暖かみの溢れる食事は何時ぶりか……
直ぐ様、フォークを手を取りソーセージをぶっ刺し口に運ぶ。
パリッと弾けるような食感と共に肉汁が溢れ出す。
現代のソーセージと違って血が混じっているのか野性味溢れる味がする。
そして、かなり強めの香辛料の香りが鼻を通る、だがそれがいい。
「美味しいですか、ヨゾラ殿」
「はい、とっても美味しいです」
そう言うとグレイスさんが嬉しそうに笑った。
見ると、彼の手にはワインが握られており、それをトクトクとグラスに注いでいる。
葡萄酒か何かかな?
て言うか、葡萄酒とワインの違いってなに?
「では我輩も……」
そう言うとグレイスはグラスを傾けるワインをコクコクと喉に通した。
ああ、なんて、御上品な飲み方なんでしょう。
まさに御貴族様ですわ……
先程まで逃亡生活をしていたオッサンとは思えないですわ。
「はあ、やはり格別ですな……」
「いや、凄いですねこの宿。こんな御馳走を用意してくれるなんて」
お金の方は大丈夫なのかしら?
香辛料も凄く御高いのでしょう?
見ると、グレイスさんが嬉しそうにコチラを見ている。
その手にはグラスを持ち、もう片方の手にはフォークが握られ、その先にはソーセージ。
そして、彼はそれにかぶりつくとワインで流し込んで見せた。
な、な、なんて色気のあるオッサンだッ!!
俺は今夜、コイツに抱かれるんかッ!?
とんでもねぇな、このオッサン。
俺のトラウマすら貫通する程の漢の色気を携えている!!
クソッ!! く、悔しい!!
俺もこんな漢になりたかった!!
そんなことを思いながら、俺は異世界に来て初めての御馳走に舌鼓を売ったのだった。




