34.反乱の反乱
積み荷が宙を舞い、中身を撒き散らしながら民衆に向かって飛んでいく。
積み荷はやがて、その中の一人に直撃した。
苦悶の表情と共に呻き声が挙がる。
それと同時に他の民衆達が一斉に視線をコチラに向ける。
「ヨ、ヨゾラ殿! どうしてここに!?」
グレイスさんの声が俺の耳に届く。
正直、面倒な事になりそうだったら一人で逃げちゃおうとか普通だったら思ってたんだろうけど……
流石にアレを見せられたら自分だけ逃げるってのは出来ない……
「貴方を助けに来たんですよっ!」
俺は勢いよく剣を抜き高く掲げる様にして構える。
ああ、これは一般人に向ける剣ではなかったはずなのにな……
きっと、こんな使い方をグレイスさんは望みはしないだろう……
だけど……
ここで見す見す彼を見捨てる様な人間に私はなるつもりはない!!
振り上げた剣を思い切り握り直し、先程積み荷が直撃した男に向かって刃を振り下ろす。
瞬間、血飛沫が飛び。手には鈍い感触が襲う。
これが人を切る感触……
あんまり、良いもんじゃない……
「うがぁぁあ!」
男が肩口を押さえながら地面に倒れ込む。
その様を見て、他の民衆達が狼狽え後退る。その民衆の中には宿の店主もいた。
ああ、そうか。だからあんなに私達を歓迎してくれたんだ。
本当は王国の人間だったんだね……
見ると、明らかに民衆達の統率が乱れ始めた。
無論、その僅かな隙をグレイスさんは見逃す筈もなかった。
彼はすかさず剣を抜くと風を切るようにして振るい、一人二人とあっという間に切り捨ててしまった。
倉庫内が一瞬で地獄絵図へと変わる。
「ヨゾラ殿! 逃げますぞッ!!」
「はい!!」
俺は踵を返して宿へと全力で駆ける。
直ぐに後ろから軽やかな足音が聞こてくる。
「すいません、ヨゾラ殿。まさかこんな事になるとは……」
後ろから追い付いて来たグレイスさんが並走しながら口にする。
「私こそすいません。貴方に教えられた剣で普通の人を傷つけてしまって……」
本当に申し訳ない限りだ、グレイスさんに取っては守るべき国民であるはずなのに、私はそれを傷つけてしまった。
しかも、彼に教わった剣では……
「貴女は本当に優しい方だ…… そんなこと気にしないでいいのです。今の貴女はただ自分の為に剣を振るえばいい。そう言った事はもっと強くなってからでいいのです……」
「……はい」
彼はそう言い残すと更にスピードを上げ勢いよく駆け出した。
そして、いち早く馬の元へとたどり着くと、手綱を握り私の馬もまとめて走らせた。
そのままグレイスさんはコチラに走って来る。
「さあ、ヨゾラ殿! 手をっ!!」
そう言うと、グレイスさんは騎乗しままこちらに手を伸ばした。
まったくどうすればいいかわからないけど、言われるがままに手を伸ばす。
その瞬間、身体がフワリと浮き、気が付けばいつのまにかに馬の上におり、グレイスさんの腕に抱かれていた。
見事なまでにかっさらわれた……
さてはこのオッサン初めてじゃないな……
マジで、何処まで行ってもお姫様扱いだな私は……
後ろを見ると、今ごろになって裏路地からゾロゾロと追っ手が現れてきた。
もう遅いよ……
その時には既に私達は町を出ていた。
それは余りにも短い滞在だった。
私達は募る不安の中。月明かりに照らされ、青白く光る荒野の中。馬を駆け、新たな町へと向かって走り出した……




