表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

42/64

ep42.出来てしまった未練

「ではまた寝ていてくださいね。今日は安静にですよ。」


「分かってる。…」


しばらく見守っていると、スー、と言う静かな寝息が聞こえてきた。


レオが眠っているのを確認して私も昼食を食べ、グレイソンさんの代わりに来たメイドに食器を運んでもらった後、私はまた本を読み始めた。


しかし、読み始めて約3時間くらいが経過した頃、私は本を読み終えてしまった。


自室に戻っている間にレオに何かあってはいけないしどうしたものかと辺りを見回すと、レオのベッドのすぐ近くにある机が目についた。

それはレオがいつも仕事をしている机で、その上にはまだいくつか処理しきれていないであろう書類の束が置いてある。


勝手にやってしまうのは申し訳ないけど、明日レオの負担が少しでも軽くなるようにやっておくのはどうか許してほしい。

きっともう私が仕事をしていることで書類を盗んだとかいう冤罪をかけられることはもうないはずだ。…多分。


思い立った私は少しだけ席を外し、同部屋にある執務をしていた机にある書類を持ってきた。

そして、またレオが眠っているベッドの隣の椅子に座る。


仕事をしている時は何も考えなくて良いので楽だ。

生きたいと思えるようにする、私がいなくなった後の俺たちは、と言ったお兄様のことも

元婚約者から聞いた義母には気をつけろという言葉も…

現在進行形で、私の心臓を蝕んでいるこの病気のことも全部。


考えなくて良い。…良いはずなのに……。

病気ことについては、ついつい考えてしまう。


三ヶ月前と今。明らかに体力に違いが出てきているのだ。


前は街を歩くなんて容易いことで、歩き疲れたとしても眠ることなんてなかった。

実際、レオと街を歩いていた初めの一ヶ月はいつも『楽しかった』という気持ちで終わり、馬車では眠ることなんて一度もなかった。


それがどうだろう。つい先日出掛けた時。私は確かに街を歩いて『疲れた』と感じた。あれは精神的なものもあったかもしれないが、確かに体力的な疲れも感じていた。


少しだけ、死を実感した。


別に、あの日は心臓が痛くなったわけでも吐血したわけでもないのに。私の体力は少しずつなくなっているのだと、命が少しずつ削り取られていっているのだと実感したのだ。

三ヶ月前の私なら、別にどうでも良いと思っていたのだろう。


自分の死をそういう運命だったと受け入れることが出来ていたし、それに対して怖いとか死にたくないとかそんなことは一切思わなかった。

むしろ、二度この世に生まれて、もう十分だったと、満足して逝くことが出来たはずだ。


なのに今、ほんの少しだけ、怖いと感じている自分がいた。

そんな気持ちを今更感じたところで、直す手立てなどこの国にはないと言うのに。


随分バカらしいことを考えてしまうようになったものだ。伯爵家にいた頃の私なら感じなかった感情だ。

気持ちが揺れてしまっている。


公爵家の使用人



そして…



レオ


大切な人が、出来てしまった。

つくらないつもりだったのに。


つくってしまえば、またいつ壊されるか、奪われるか、…いや、違う。


私が死ぬ時、未練が出来てしまうから。だからつくりたくなんてなかったのに。


本当はもう壊されるつもりも奪われるつもりもない。何があっても私の大切な人たちだけは守ってみせる。


そんな心意気だからか、壊される奪われる云々に関しては三人に話して少し吹っ切れていた。

だけど、未練に関しては、私が話せば余計に三人は『なら生きる方法を探そう』と言ってくるのだろう。


私には出来ない。そんな勇気はない。

私は、自分のことに関して滅法弱い。


今だって、いつ心臓が痛くなるのだろうとヒヤヒヤしている。


やっぱり怖いのだ。


生きることに希望を持って、結局方法がなかったら?


拒絶した死を、私はもう一度受け入れなければならない。

そんなこと出来る気がしない。


きっとみんなの前で死にたくないと泣いてしまう。

そんな醜態は晒したくないなぁ…なんて、思ってしまう。


こんな感情が出てくるなら、私に割り当てられた遺産全部使って殺し屋にでも殺してもらえれば良かった。


「お嬢様…?」


「っ!…アイヴィー、どうしたの?」


考え事をしていてメイドがいるのに気が付かなかったのでつい驚いてしまう。


「いえ、…その、烏滸がましいことだとは分かっているのですが…お嬢様に元気がないような気がして……。」


きっと考え事をしていたからだろうと、私はすぐに察した。


「私は大丈夫よ。アイヴィー。心配してくれてありがとう。」


「そう…ですか。では、今日のデザートはどういたしますか?」


アイヴィーに言われて時計を見ると、いつもレオとデザートを食べる時間になっていた。

私は、一人で食べる食事がどれほど美味しくないのかを知ってる。


「あー…。ごめんね、アイヴィー。今日はやめておいても良いかしら。一人だとなんだか寂しいから。」


「かしこまりました。それでは、お嬢様が飲まれる紅茶だけでもご用意させてください。」


「ええ、お願いするわ。」


そうして入れられた紅茶は、リラックス効果のあるものだった。

アイヴィーの入れた紅茶を飲み終わる頃には、すっかり夕食の時間になっていた。

最後まで読んで頂きありがとうございました!

次話も見てくださると嬉しいです!

評価&グット、コメントで応援、ご指摘よろしくお願いしますm(_ _)m

励みになりますᕦ(ò_óˇ)ᕤ

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ