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ep40.頑張りすぎです

「え…?」


本当だ。知らないうちに敬語になっていた。


「…これは癖ですよ。皆さん気にしすぎです」


今度はフィービーが応えた。


「…お嬢様が牢に行く前は、私たちに気さくに接してくださいました。ですが今は、言うのも烏滸がましいことですが、とても距離があるように感じてならないのです」


「………」


正直、距離は空けてる。


だって、また裏切られるかもしれないから。

何をされるかも分からないから。

私はこの人たちをまだ信用出来ないから。


「…っふふ、ごめんね。そこまでみんなを考えさせちゃったなんて。私もまだまだね。敬語は本当に癖だったの。だからもう謝らないでこれまで通り接してくれる?」


「…!ありがとうございます…!」


「さぁ、もう戻って!それぞれのお仕事をしましょう」


「「はい…!お嬢様!」」


やっとメイドと執事のみんなが解散して持ち場に戻った。

部屋に入った私はベッドの上に倒れ込むように寝転んだ。


何だかどっと疲れた。


嘘を吐くのは心が痛むけど、ずっとあんな調子でいられるのも居心地が悪い。

そもそもの話、距離を取るのは信用出来ないという理由もあるけど、他にもある。


私は大切なものや人をつくってはいけない。

大切なものを壊され、大切な人を奪われるのはもう二度とごめんだ。


「ソフィア」


「…!はい」


「部屋へ入っても良いだろうか…?」


「どうぞ」


急いでベッドの上で姿勢を正した。


私の許可を貰ったレオはゆっくりドアを開けて部屋へ入るとすぐに、私でさえ気が付かなかった違和感に気がついた。


「少し顔色が悪くないか?」


「え…」


言われて鏡を見てみると、確かに少しだけ顔色が悪かった。

だけど、普段と大して変わりはない。なのに気がつけるなんて、レオはどれだけ私の顔を見ているのだろう。


「何かあったか?」


「……いえ、何もありませんでしたよ。それよりも早く小説が読みたいです」


「…ああ。好きなだけ読むと良い」


「……………」


"え?"


"いや、どうしてここにきたの?"


"来たからには何か理由があると思ったのだけど違った?"


「あの…公爵様?」


「ん?どうした?」


「ご用があるから来たのでは…?」


「用か……俺はソフィアに会いに来ただけだ。それか、何か理由でもあったほうが良かったか?」


物凄く寂しそうな顔をするので、レオの言葉に私は急いで反対した。


「っ違います…。ただ、公爵様がそう言った理由で来られるのは初めてだと思っただけです」


「そうか。良かった。…そうだ。ソフィアの兄たちは今日用事があるそうだから外に出ている。明日の朝には帰るらしいから、心配するなよ」


それから私は小説を読みながら、レオは仕事をしながら、それぞれの時間を昼食の時間になるまで同じ部屋で過ごした。

途中で気が付いたことだけど、レオの行動は多分私の身を案じてくれてのことだ。


小侯爵が言った義母には気をつけろという言葉を、レオもお兄様たちもしっかり聞いていたから。


「ソフィア」


「はい」


「そろそろ昼にしないか?」


レオに言われて時計を見ると、もう既に時計の針は一時を迎えていた。


「そうですね。すみません、気が付かなくて…」


「いや、大丈夫だ。それだけ熱中して読んでたってことだろ?俺も好きな本だから嬉しい」


"あれ?こんなこと言う人だったっけ?"


いつもよりもふわっとした口調にふにゃりと笑う姿はいつもと違って見えた。


「公爵様、少しだけ失礼しますね」


「…!!」


私はレオの額に自分の手のひらを当てた。

思った通りだ。


「公爵様、熱があります」


「は?」


「部屋までお送りするので一緒に行きましょう」


おそらくだが原因は過労だろう。

私のせいで無理をさせすぎてしまったのかもしれない。

よく考えなくても分かることだった。


ここ一ヶ月常に私の近くにいて気を張っていたし、拷問の件があってからは私にあまり仕事を任せなくなったから。

レオの仕事が増えるのも必然というものだ。


「だが…」


「行きましょう。本の感想は公爵様の体調が治った後に言いますので」


「……分かった」


私は有無を言わさずレオの自室へと帰した。

もちろん私も着いていった。


「寝ていてくださいね。私は少しだけ席を外します。必ず戻ってきますので少し待っていてください」


「…ああ」


やはり返事に元気がない。

早くに気付くことが出来て本当に良かったと思う。


レオは普段、自分の感情を言葉に出さない。先も嬉しいなんて言っていたが、仮にそう思っていたとしても口には出さないのだ。

このくらい素直だったらもう少し生きやすかっただろうなと、執事のところへ向かいながら考える。


まあ、レオの境遇からすれば、素直になれないのは仕方のないことだとは思うけど。

それでも、以前よりは素直になった方だと感じることが増えた。


この調子で残りの三ヶ月を過ごすことが出来れば、レオは幸せになれるだろう。


「グレイソンさん」


私はレオの側近である執事に声をかけた。


「お嬢様?どうなさいましたか?」


「昼食のことなんだけど、公爵様のメニューを変えてほしいの。実は公爵様が熱を出してしまって…頼めるかしら?」


「左様でしたか。かしこまりました。旦那様の昼食は胃に優しいものをお持ちしますね」


「ありがとう。それと、昼食は私の分も公爵様の分も公爵様のお部屋にお願い」


「心得ました」


執事の返事を聞いてから、私はキッチンに向かった。

キッチンにいるメイドにレオの部屋に水を持って行きたいと言うと、水を入れたピッチャーと空のコップを一緒に持ってきてくれた。


「ありがとう。助かったわ」


「いえ、お役に立てて光栄です」


そう言ってメイドが去った後、コップにちょうど半分くらいの水を入れた。


レオは少しだけ荒い息をしている。


「公爵様、お水は飲めますか?」


「ああ、ありがとう」


レオは横になっていた身体を起こして水を飲んだ後、またすぐに横になった。


「ソフィア、部屋を出ていろ。たまにあることだからそこまで世話を焼かなくていい」

最後まで読んで頂きありがとうございました!

次話も見てくださると嬉しいです!

評価&グット、コメントで応援、ご指摘よろしくお願いしますm(_ _)m

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