表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

18/64

ep18.公爵の立場『公爵視点』

初めは、いつもと同じなんだと思っていた。


どこにでもいる俺に金とか顔目当てで近寄ってくる人間なんだと、だから夕方まで待たせればいつものように帰るだろう。


何故ならこの行為は失礼に値する行為だから。

そう思っていたのに。その令嬢は案外しぶとく、夕方まで門の前にいた。それどころか、門番と親しくなって話までしていたのだ。


少し興味が出てきたので屋敷にあげると、令嬢は半年後に殺してほしいとほざいてきた。

自殺志願者なのか、それとも俺に慰めてほしいという類、あるいは同情を買おうとする類なのか。


正直殺すことに躊躇いはない。だから了承しても良かったのだが、どうせなら他に寄ってくる女を減らしたかったから条件も追加した。


俺の女避け。


嫌がるだろうと思っていたが、令嬢は笑顔で承諾をした。


そして夕食の時間、ことの詳細を話し合うために招待し夕食を共にしている時、令嬢の口から俺が優しいという発言が出てきた。


あまりに馬鹿らしい発言に、夢でも見ているのではないかと聞いたところ、何故か頑固にそれでも俺は優しいと言ってきた。

それと同時に、俺が好きという訳でもなく本当に殺してほしいのだと言うことも。


ふと気になり、何故そんなにも死にたいのか理由を聞いたところ、はぐらかされた。


翌日、俺と令嬢は、俺の隣には既に人がいるということを伝えるために街に出掛けた。


沈黙を破りたかったのか、俺にどうして女に触れられないのかという質問をしてきた。

だがその質問に答えれば、この令嬢に弱みを見せてしまう。


まだスパイではないと決まった訳ではないのに、言える訳がなかった。

こうしてまた静かになり、夕方まで歩き続けた。


途中好きなことはと聞かれて、甘党なことは隠したかったので、剣だけが好きだと応えた。だが、何故見破られたのか、帰りにはデザートが入った箱を俺に渡してきた。


何故渡すのかと聞いても、食べたそうな顔をしていたとしか応えなかった。

そして、俺と出掛けるのが楽しいと、令嬢は言った。


よく分からない感情になり気になったが、一日も経てば忘れていた。


それから二週間、俺は毎日街へ出向き令嬢と歩いた。初めは苦痛でしかなかったこの時間が、いつのまにか心地よい時間へと変わっていた。

令嬢も甘い物が好きらしく、この二週間は毎日のように美味しそうなデザートを選んだ。


まだこの時間を続けてみたかった俺は令嬢を朝食に招き、今日も行かないかと誘って見た。

すると、令嬢が突然笑い出した。


公爵家に令嬢が来て初めて、令嬢の笑っている顔を見た気がした。令嬢は常に笑っていると言うのに…。

だが、そんな疑問は馬車の中で消えてしまった。あまりにも令嬢が優しくて、思わず過去を話してしまった。


何を言われるかと思えば、怖い、悪魔だと噂の俺に対して泣いても良いなんて言うものだなら、柄にもなく涙が溢れて来た。


母が亡くなってすぐにエスメという女性が来たため、俺には悲しむ時間なんてなかった。

父の話を聞くと、少しでも母が亡くなった悲しみを紛らわすためだったらしいが、俺も父も紛れることはなかった。


むしろ、なんとも言えない気持ちになり泣くこともできなかった。

それが今、初めて母のために泣くことが出来た。


一頻り泣いた後、何故俺を疑わないのかと聞くと令嬢は当たり前のように、俺は嘘をつかないからだと応えた。


何故こうも俺を知っているような発言をするのだろうか。しかも、知ったかぶりをしている様子は全くない。

まるで子供の頃からずっと一緒にいたような感覚だった。


その疑問はいつまで経っても、俺の頭の片隅から消えることはなかった。


︎◇◇◇


令嬢と過ごして計一ヶ月、婚約パーティーの日になった。

隅々まで着飾った令嬢に、今までどんな女性を見ても動くことのなかった感情を揺れ動かされた。

初めて着飾った女性を綺麗だと感じた。


乾杯の挨拶が終わると、貴族達が列になって決まり文句とプレゼントを渡してきた。

貴族の挨拶が全員終わると、一人の女性がソフィアと令嬢の名を呼んだ。どうやら母親らしい。


すると令嬢は、心なしか怖がっているようにも見えたが、それは勘違いだったのか、すぐに笑って話してくると言い席を外した。


令嬢が戻ってくるのは案外早く、その時間は十分くらいだった。

本来であれば、親との再会はもっと話すものではないだろうかとも思ったが、契約上の相手であるため深くは聞けなかった。


何故かそれが悔しく感じた。


婚約パーティーが終わってからは、比較的平凡な日常を過ごしていた。

公爵夫人としての仕事をソフィア嬢が行うようになってからは昼食も共にするようになった。


ソフィア嬢なら信頼出来る。そう思い始めていた時、メイド長からとある知らせが来た。


「旦那様。メイド長です。入ってもよろしいでしょうか。」


「ああ、入れ。用件は?」


「実は、お嬢様のお部屋のタンスの上に、旦那様の重要な書類が見つかりました。」


「何…?」


「証人もいます。お入りなさい。」


メイド長の言葉と共に入ってきたのは、最近よくソフィア嬢と一緒に話していたメイド三人だ。


「ほら、見たのよね。お嬢様が旦那様の書類を取っていくところ。」


「……はい。…見ました。」


メイドの発言を聞いた瞬間、俺の感情はまた酷く揺さぶられた。


やはり信用なんてするものではなかった。完全に信用し切る前に事が分かって良かった。

…なんて強がりなことを思いつつどうしても、怒りと悲しさは俺の中に流れ込んできた。


彼女には色々教えてもらったし協力もしてもらった。だから素直に言えば見逃そうと思っていた。間違いは誰にでもあるものだからと。だが、彼女は一向に口を割らなかった。


令嬢に会ってしまえば、また傷つくかもしれないと怖くなる。そしてそんな自分に腹が立つからという勝手な理由で、もう俺に近づくなと言い地下へ追いやった。


それからは元殺し屋に拷問を任せた。普段は情報員として働いてもらっているが時折り拷問も任せたりする。

普段は俺がやるが、彼女への拷問は何故だかする気になれなかった。


それに、こいつなら令嬢から何か情報を吐き出してくれるだろうと考えたが、俺の考えは甘かった。


最後まで読んで頂きありがとうございました!

次話も見てくださると嬉しいです!

評価&グットで応援、ご指摘よろしくお願いします

m(_ _)m

励みになりますᕦ(ò_óˇ)ᕤ

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ