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ep19.公爵の罪『公爵視点』

むしろ、四日目を迎える頃には「彼女は書類を取った犯人じゃないと思う」などとほざく始末


いくら殺し屋が違うと主張しようとも、令嬢が書類を取るところを見たと言う証人がいる限り令嬢がした行いの疑いは晴れない。

しかもだ。長年仕えてきたメイド長が嘘をつくとも思えない。


「お前の見解だけで全てが決まる訳じゃない。引き続き拷問を続けろ。」


そう言って、俺は殺し屋を執務室から追い出した。


だがその翌日も、こいつは令嬢はやっていないと言い張った。

こいつがここまで肩入れするのは珍しい。大体すぐ殺してしまうものを、令嬢のことになるとこいつは殺したくなさそうに違うと言い続けた。


何となく、令嬢の名前を呼ぶこいつも、令嬢を庇うこいつも。


「ソフィアちゃんはやってない。これは断言出来るよ。」


いつもはノロノロとした話し方をするくせに、令嬢のこととなると途端にハキハキと話し出すその姿も。


「むしろ、レオが幸せになれるようにって努力していたそうじゃないか。その姿をレオは見てなかったの?」


俺より令嬢のことを知っていそうなその口調も。心底腹が立つ。

俺だって分かっていた。俺のために令嬢がたくさん努力してくれ、協力してくれていたこと。


だからこそ余計に、裏切られたと分かった時は苦しかった。


"裏切られた…?"


「…ハハッ…」


思わず乾いた笑みが漏れてしまった。

どうやら俺は、彼女に信頼を寄せていたらしい。今更気が付きたくはなかった。


「……もう戻れ。…お前の話は聞きたくない。」


「はぁ、もういいよ。なら、ソフィアちゃんが『もうここに居たくない』って言った時は僕が貰うから。少なくともレオよりは大切に出来る自信はあるよ。」


殺し屋はそれだけ言った後に俺の部屋を出た。

俺は机を思い切り殴ってしまった。


だが、何故こんなにイライラしているのか、今の俺には分からなかった。


◇◇◇


今日で令嬢を地下へ追いやってから六日目。


そんな朝一、突然メイド全員が集まって執務室を訪ねてきた。

そして、令嬢と最もよく関わっていた人物であり、証言をした三人が突然こんなことを言い出した。


「公爵様…!今までお伝え出来ずにいましたが、私たちメイドは、メイド長に脅されて今まで仕事をして参りました。」


何故急にそんなことを言い始めるのか初めは分からなかったが、話を聞くうちにだんだんと事の全貌が見えてきた。


「……それを何故今になって言う?」


「それは…お嬢様が、私たちの働き場所を保証してくださったからです。もし真相が分かっても、私たちを解雇しないでほしい、そして、メイド長を追い出してくれとの伝言です。」


「…お前達の言うお嬢様は今、地下牢へいるんだぞ?信用は出来ない。」


「ですから、お嬢様が書類を盗んだということにしようとしたのもメイド長です。証言は私たちがしましたが、メイド長に言わないとクビにすると言われて発言してしまいました。」


メイドとの会話はそこで一旦切った。

頭を鈍器で殴られたような気がしたから。


メイドの話していることが本当だとすれば俺は、無実の令嬢を五日間も、いや、今日も拷問が終わったいるなら合わせて六日間も拷問していたと言うことになる。


あまりにも認めたくない事実だった。


俺の頭が真っ白になっていくと、また一人のメイドが言葉を発した。

こいつもまた、彼女の近くにいたメイドのうちの一人だ。


「信じられないのなら、証拠があります。公爵様は、今までお嬢様のお部屋へ行ったことがないのではありませんか?」


「…ああ。ないな。」


自分から何かを誘うなんてことはしなかったから。そういえば、部屋に来るのはいつも彼女の方からだった気がした。


「ではきてください。今からお嬢様のいた部屋へと案内致しますので。」


言葉遣いも敬語だし、いつもと変わらないはず。なのに、今は俺の方が何もかも下に感じた。


俺が、令嬢を信じなかったから今の状況になってしまった。

令嬢は俺のことをずっと信じてくれていたのに、俺は令嬢を信じてやれなかった。


だが、まだ本当に令嬢の無実が証明された訳ではない。


しかし、彼女を無実の罪で拷問してしまったことを認めたくないあまりに考えたその愚かな考えはすぐに消えた。


令嬢の部屋へ着くとメイドが扉を開け、「お入りください。」と言った。


言われた通り開けると、そこは狭い物置部屋同然のような部屋だった。

もちろん俺はそんな部屋を用意してない。メイドに客人用の部屋へ通すようにと伝えていた。


"その結果がこれか?"


「は?ふざけているのか。俺は令嬢の部屋へ連れて」

「ここが!」


俺が最後まで言う前に、メイドに遮られてしまった。


本来ならこれだけで罪に問えることだが、そうする気にはなれなかった。


今からメイドが何か大事なことを言う気がしたのだ。


そしてそのまま、またも俺は信じられない発言を聞いた。


「ここが…お嬢様の今暮らしているお部屋ですよ。これも、メイド長の指示です。そして、私達はタンスの上に書類があったと言いましたが、そのタンスとやらはこのお部屋にありますか…?」


「……………………ない……?」


『ない』というたった2文字の言葉を発するのに、俺は今どれだけ時間をかけたのだろう。


「これで証明出来たでしょうか。メイド長が指示してやったこと、私達が実行してしまったこと、そして、お嬢様が無実であること。」


「…__ックソ!今すぐ令嬢を…!」


怒りと悔しさと後悔と、不快な感情が次々に俺を襲った。


メイドにとっての客人の部屋というのはどうやらこの物置同然の部屋のようだ。ふざけるのも大概にしてほしい。自分にもメイドたちにも腹が立った。


俺は髪を掻き上げて命令を下そうとしたが、またもメイドに止められてしまった。


最後まで読んで頂きありがとうございました!

次話も見てくださると嬉しいです!

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