拉致後のゲラルドと騎士達
リューシオンが連れ去られた後のゲラルドサイドです。
「いざ行かん!新たなる世界に!!」
リューシオンが全裸の覆面男に連れ去られた直後。
「・・・ゲラルド様。」
「・・・動ける者はどれくらいだ?」
一人の騎士にゲラルドが確認する。
「百十二名、全員があの、あの、フザ、ふざけ・・・ぐぅ!」
「もうよい。解った。皆、暫く使えんな・・・俺も含めて。」
ゲラルドが自嘲気味に呟く。その呟きを聞いた騎士が頭を下げる。
「申し訳ございません。」
「よい。いいんだ。俺もこの体たらくだ。」
ゲラルドがオーバーアクション気味に答えると、周りで笑顔が浮かぶ。
リューシオンはゲラルドが小心者で上位者に媚びへつらう小者と思っていた。ゲラルドの上位者達もその様に認識している。
実際にその通りなのだがゲラルドには他の者にない美点が存在する。
同格の者たちに気前がよく、部下を労り気にかけて使う事ができる。
当たり前の様に見えてこの世界ではとても難しい事だ。
部下や同格者に物惜しみ無く与える。
欲しがるモノを的確に知り、欲しいものを欲しいだけかつ過不足なく与える。この世界ではとても難しい。
この世界では褒美を与えられる際に自ら欲しいものを希望するのは恥知らずな行為と認識されている。
騎士達が戦の為に借金までして身支度を整え出陣しても、勲章や武具の下肢で済まされることが多々ある。
確かに名誉な事なのだ。騎士とゆう立場では。
しかし騎士達も生活がある。名誉で腹は膨れんし、借金も無くならない。しかし褒美に異を唱えるとたちまち周りのもの達から軽蔑されることになる。
・・・自分達もその様に思っていたとしてもだ。
この手の褒賞はだいたい上位者の都合と自己満足が優先される。
騎士達の欲しいものと上位者達の与えたいもの。
上位者達は様々なモノを持つ・・・土地、財産、金・・・故に名誉を欲しがる。
騎士達は自らの心身以外は常に足らない・・・土地、財産、金・・・故に金銭を求める。
両者は決して分かり合う事はない。
しかしゲラルドは違う。部下の騎士達の経済状況や家族関係、人付き合いなどを鑑みて的確に欲しがるモノを与える。
・・・自腹を切ってもだ。
部下の騎士達としても気前がよい・・・この世界ではこの手の上司をこのように称する・・・上司について行く。騎士にも生活があるのだ。
極限の戦場で戦死しても家族に勲章だけ渡し遺された家族を放置する上司と、
戦死しても家族に褒賞金を与え遺された家族の面倒を見てくれる上司。
どちらが良く戦うかは言うまでもない。
ゲラルドはそれができる上司であり、そんなゲラルドの為に部下達は骨惜しみなく働く。
そんなゲラルドの部隊が自分たちを気前良く手伝ってくれるのだ。同格者達も感謝はすれど軽蔑などするはずがない。
上と下で評価がガラリと変わる男。それがゲラルドだった。
「今回の事は王太子殿下にどのように御報告を?」
「ありのままだ。」
騎士の問いかけにゲラルドが答える。
「信じていただけるでしょうか?このような・・・」
騎士が言葉を濁す。
そうだろう。リューシオンを暗殺する所に全裸の覆面男が現れ、リューシオンを拉致。自分たちはとても口に出せない様な方法で無力化されたなど・・・知られてしまえば後ろ指を指される。いや、騎士としてやっていけない。
「・・・まあ、そこはボカスか。」
ゲラルドも流石にコレはありのままに報告はできないらしい。
「えっと、状況を整理しますと・・・覆面を被った男に魔道の力で襲撃され、リューシオン殿を奪われた。で、宜しいでしょうか?」
騎士が割りと自分たちに都合の良い提案をゲラルドにする。ゲラルドは・・・
「いいんじゃないかな!!」
保身に走った。
ショック状態から何とか回復し騎士達が集まってくる。これまでの状況を確認するために、ゲラルドと騎士達の会話を話す。
口裏合わせとも言う。
「つまり、我々はリューシオン殿下を暗殺する前にあの変態・・・失礼しました。覆面男に魔法で襲われ、瞬間移動の魔法でリューシオン殿下を拉致されたと。これでよろしいですか?」
騎士の一人がゲラルドに質問する。
「うむ。加えて諸君らはリューシオン殿下を暗殺する事を知らなかった事にしたい。」
「ゲラルド様!?」
質問した騎士とは別の騎士が声をあげる。
ゲラルドの提案は簡単に言ってしまえば護衛任務に失敗したとゆう事になる。対魔法戦の装備も無く、一瞬の隙を魔法で突かれたと言うなら周りの騎士達は罪に問われない。・・・まあなんなかのペナルティーはあるだろうが・・・この場合、護衛隊の指揮官であるゲラルドが責任をとることを意味する。
「私が全ての責任をとる。諸君らは何も知らなかった。良いな!?」
ゲラルドさんイケメン発言である。
「私はリューシオン殿下に命を救われた。リューシオン殿下がなぜ死ぬのか、殺害すべき理由、それらを理解された上で自分を暗殺しようとする私を救ってくれた。」
一応、事実を語るとリューシオンはゲラルドから背後関係を聞き出し、瞬間移動の魔法で脱出するのに邪魔だったので、意趣返しも兼ねてゲラルドを馬車から突き落としたにすぎず、突き落としたタイミングで襲撃があったのは本当に偶然である。
「私を殿下は『ゲラルド!危ない!』と、叫び爆発四散する馬車から突き飛ばして下すったのだ!」
ゲラルドの中では美しき事実となっている様だ。
「私は王太子殿下や陛下に陳情するつもりだ。せめて・・・最後の時は偽りでも良い!親と子であって欲しいのだ!!」
どうやらゲラルドの中ではリューシオンを拉致後、殺された事になってるらしい。
「ゲラルド様・・・俺達も陛下達に御伝えします!リューシオン殿下は立派な御最後であったと!!」
騎士達がむせび泣きながら口々にゲラルドに訴える。
満場一致でリューシオンの死亡が認められた様だ。
「みんな・・・すまん。」
ゲラルドも涙を流している。
「みんな帰ろう。リューシオンへ。そしてリューシオン殿下の御最後を陛下に御報告しよう!!」
ゲラルドが音頭をとると騎士達が唱和する。
「帰ろう。」
「リューシオンへ帰ろう。」
「殿下の御最後を陛下に御伝えしよう。」
・・・リューシオンはゲラルドと解り合えたと思っていたがどうやら気のせいらしい。
リューシオンは自分を殺すのをやめ助けようとしたと勘違いしたが、ゲラルドはシチュエーションに酔っていただけらしい。拉致された時点でゲラルドの中ではリューシオンは死んだ事になってるらしいし。
「みんな!出発だ!!・・・の、前に下着を替えよう。」
・・・締まらないな。
三十分位して騎士達が下着を替え終わる。替えた下着は一ヶ所に集められ火を放たれる。
「さよならリューシオン殿下。」
「・・・さよなら。さよなら。」
燃え盛る炎を見ながら騎士達が次々にリューシオンへの冥福の言葉を口にする。
たんぱく質がベットリついた下着を焼きながら口にする言葉じゃない気がするがこの場にいるもの達は疑問に思わないらしい。
「さよなら。リューシオン殿下。」
ゲラルドはゲラルドでした。




