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夜の蹂躙

王都の喧騒から完全に隔離された、マーリンの新たな私邸。その最地下に造られた広大な調練場は、厚い石壁に囲まれ、いかなる絶叫も地上へは届かない「絶対的な孤立空間」だった。

部屋の壁には松明がいくつか掲げられているものの、差し込む光は乏しく、空間全体がねっとりとした陰鬱な空気に満ちている。その部屋の中央、一段高く設えられた豪奢な黒檀の椅子に、純黒のドレスを纏ったマーリンが気高く腰掛けていた。

彼女は指一本動かさず、ただ冷徹な青い瞳で、眼下の冷たい石床を見下ろしている。その隣には、影のように寄り添う魔女レイナが、真紅の瞳を怪しく明滅させながら、愉悦に満ちた笑みを浮かべていた。

「さあ、お前の新しい『お家』だよ、ロキ」

マーリンの冷ややかな声が、地下室の壁に反響する。

彼女の視線の先――床には、首に黒鉄の首輪を嵌められた元英雄、ロキが這いつくばっていた。内側の突起が肉に食い込むたび、じくじくと生々しい血が滴り、彼の白い肌を汚していく。かつて王宮で誰もが平伏したあの高慢な男は、今や見る影もなく、恐怖と屈辱に全身を震わせていた。

「ま、マーリン……。私を、どうするつもりだ……。殺すなら、いっそひと思いに殺せ……っ!」

ロキは血走った目でマーリンを睨み上げ、掠れた声で叫ぶ。だが、マーリンはくすくすと低く笑うだけだった。

「殺す? そんな簡単な救いを、私が貴方に与えると思うの? 貴方はこれから、私が味わった以上の絶望を、その傲慢な肉体と精神のすべてで贖うのよ。……それも、私の手を汚すまでもなくね」

マーリンが細く美しい指先をパチン、と小さく鳴らした。

その音を合図に、調練場の重厚な鉄扉が開き、地響きのような足音とともに三人の大男たちが姿を現した。

彼らは、マーリンが第一皇子アルベールを介して、王都の闇社会や最も過酷な監獄から呼び寄せた『処刑人』であり、情け容赦のない巨漢たちだった。一人は岩のように分厚い胸板を持つ筋肉質の巨漢、もう一人は全身に無数の刀傷が刻まれた大柄な元傭兵、そして最後の一人は、獲物をいたぶることにしか喜びを感じない、冷酷な光を瞳に宿した元監獄の看守長だった。

彼らの放つ圧倒的な威圧感と、獣のような生々しい体臭が、狭い地下室の空気を一瞬にして支配する。

「ひ……っ!?」

ロキの背筋に、本能的な恐怖の戦慄が走った。かつて聖騎士として戦場に立っていた頃なら、このような有象無象、一撃で消し炭にできたはずだった。しかし、今の彼の魔力回路はレイナの毒と首輪の呪印によって完全に破壊され、封印されている。今のロキは、武装した常人よりも遥かに無力な、ただの「ひ弱な男」に過ぎないのだ。

「殿下、お呼びでございますな。この極上の『玩具』を、どのように料理いたしましょうか?」

看守長だった男が、下卑た笑みを浮かべながらマーリンに向かって深く一礼した。

マーリンは椅子に深く寄りかかったまま、冷酷な視線をロキへと固定し、冷淡に言い放つ。

「その男は、かつて自分が世界の中心にいると信じ込んでいた、傲慢な元聖騎士よ。自分より身分の低い者を踏みにじることでしか生き甲斐を感じられなかった、哀れな害獣。……そいつに、徹底的に教えてあげなさい。今の自分がどれほど無力で、どれほど下劣な『家畜』であるかをね」

「御意のままに」

三人の大男たちが、にやりと残酷な笑みを浮かべ、這いつくばるロキへと一歩ずつ近づいていく。

「や、やめろ! 来るな! 私に触るなァ!!」

ロキは必死に床を這い、後ろへ退がろうとした。しかし、元傭兵の男が容赦なくその長い鉄の鎖をグイと引き絞る。首輪の突起がさらに深く首筋へ食い込み、ロキは激痛に息を詰まらせて床へ突っ伏した。

「おいおい、元英雄様。そんなに怯えなさんな。俺たちが、あんたのその高貴なプライドを、根元からへし折ってやるからよ」

筋肉質の巨漢が、ロキの細い腕を鷲掴みにし、まるで軽い荷物でも扱うかのように、強引に立たせた。抵抗しようとするロキの腹部へ、看守長だった男の容赦のない拳がめり込む。

ドゴォッ!!

「が、はっ…………っ!?!?!? 」

内臓を破裂させるかのような衝撃。ロキは口から大量の唾液と血を吐き出し、視界を激しく明滅させた。魔力による身体強化を失った彼の肉体は、大男たちの暴力の前にはあまりにも脆かった。

「ほらほら、まだ始まったばかりだぞ。大層な口を利いていた割には、随分と貧弱な身体じゃねえか、なぁ?」

大男たちはロキの衣服を乱暴に引き裂き、彼を完全に無防備な状態へと追い込んでいく。

石床の上、冷気に晒されたロキの身体を、三人の男たちが包囲する。一人がロキの両腕を後ろにねじ上げて完全に固定し、もう一人が彼の長い髪を掴んで、高座のマーリンを見上げるように強引に顔を固定した。

そして、残る一人が、ロキの背後に回り込む。

「いやだ……、やめろ、それだけは、やめろぉぉぉ!!」

ロキは自身の身にこれから起こる「決定的な尊厳の破壊」を察知し、狂ったように涙と血を流して叫んだ。

だが、その絶望の叫びは、男たちの下卑た笑い声にかき消される。

「殿下が見ていらっしゃるんだ。最高の無様な姿をお見せしろよ、ロキ!」

背後の男が、ロキの細い腰を強固にホールドし、彼の逃げ場を完全に奪う。そして、情け容赦のない、圧倒的な質量を伴った暴力が、ロキの最も脆弱な『後ろ』へと向けて、容赦なく突き立てられた。

「あ、があああああああっっっ !?!?!?!?」

調練場の天井がひび割れんばかりの、凄まじい割裂の絶叫が響き渡った。

ロキの身体が激しく、壊れた人形のようにのけ反る。彼の後ろの窄みから、生々しい鮮血がドクドクと溢れ出て、大男たちの無骨な手や、冷たい石床を真っ赤に染め上げていく。

肉体を引き裂く激痛。しかしそれ以上に、かつて数万の民衆に崇められ、王族さえも見下していたこの自分が、今、名もなき大男たちに力ずくで押さえつけられ、最も屈辱的な形で『後ろ』を蹂躙されているという圧倒的な事実が、ロキの精神を急速に破壊していった。

「ハハハ! 最高の締め付けだぜ、元聖騎士様よ!」

「王宮の英雄が、俺たちの下でこんなに無様に鳴いてやがる!」

大男たちは代わる代わるロキの身体を貪り、凄絶な肉体的折檻と蹂躙を繰り返していく。

ロキの白い肌は、男たちの荒々しい手形や、床に擦り付けられたことによる擦過傷、そして自身の後ろから流れ出る血によって、瞬く間に見るに耐えないほどに汚されていった。

ドン、ドン、と肉体と肉体が激しく衝突する、おぞましい音が地下室に響き渡る。

その地獄のような光景を、マーリンは高座の上から、ただじっと見つめていた。彼女の顔には、微塵の同情も、不快感もない。あるのは、かつて自分が暗い寝室でこの男に与えられた「尊厳の破壊」を、完璧な形で、かつ自分の手は一ミリも汚さずに執行しているという、極上のカタルシスだけだった。

「くすくす……、本当に最高の眺めだね、マーリン」

隣で見ていたレイナが、興奮に頬を紅潮させながら、マーリンの首筋に自身の唇を寄せた。

「あの傲慢な男のプライドが、男たちの肉体的な暴力によって、今まさに粉々に砕け散っていくよ。あいつの瞳を見てごらん。もう、英雄の光なんてどこにも残っていない。ただ、恐怖と快楽の泥に塗れた、哀れな家畜の目さ」

「ええ。もっと徹底的にやらせなさい、レイナ」

マーリンの声は、どこまでも冷酷だった。

「奴がこれまで犯してきた罪の重さに比べれば、この程度の蹂躙は、ほんの小皿のスープに過ぎないわ。ロキ。お前のその誇り高い身体を、私の用意した男たちに、死ぬまで貪らせてあげる」

「あ、うあ……っ、マー、リン……、助け……て……、外して、くれ……っ!」

ロキは涙で視界を歪ませながら、高座の上の少女に向かって、必死に手を伸ばした。かつて自分が「家畜」と呼んで見下していた少女が、今や自分の生死と尊厳のすべてを握る、絶対的な『神』のように見えていた。

しかし、その伸ばされた手は、看守長だった男の厚いブーツによって、容赦なく床に踏みつけられた。

グシャリ。

「痛いっ……! あああああっ!」

「誰の許可を得て殿下に手を伸ばしている、この汚らしい雌犬が! ほら、もっと俺たちを楽しませろよ!」

再び、ロキの身体に凄絶な衝撃が走り、彼の意識は屈辱と激痛の彼方へと強制的に引きずり込まれていく。

夜が更けるまで、その地下の調練場では、大男たちの荒い息遣いと、元英雄の無惨な鳴き声が途切れることなく響き続け、冷たい石床は、ロキの身体から流れ出た鮮血で、鏡のように赤く光り輝いていた。

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