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再構築少女-元男でしたが今は女の子です-  作者: もやし豆腐
chapter 3 : Interaction of people
20/58

Episode 18 : 狂乱の機構兵 ☆

書ききれなかったので2パートに別けました。

オマケイラスト加筆修正。

 甲高く耳を突き刺すように響くサイレンの音は赤色の回転灯と供に艦内にいる人員に危険を伝えている。


 危険とは侵入者の事である。


 その人数は50人。

 侵入者はサイレンよりも早く艦内に散らばっていき、艦内を守る保安要員たちはその姿をとらえることすらできていない。




 バーチャルリアリティスペースに再現された空間内で行われている仮想訓練。

 その様子を見るために大量のモニターが並んだ部屋にいる俺は座っている。

 26インチの12台のモニターは中で行われている戦闘の様子を刻々と映し出していた。中で行われているのはクラウソラス小隊の戦闘演習。

 そして俺はその画面に釘付けになっていた。


 不意に画面に艦内を守る5人のNPC兵士の姿を見つける、そしてその全員がMCSを装着していた。


「MCSもいるんですか?」


 俺は目の前に座る監督官に尋ねる。


「ああ、数は30だ」

「これ、どういう訓練なんですか? 30体もMCSが出現する訓練など初めて見ました」

「特別メニューだ。他の訓練じゃ見れない面白い仕掛けだらけのコースさ」


 監督官はコーヒを片手にだらしない態度で画面を見つめている。


 俺はMCSの部隊を映す画面を注視する。




 すると画面に一つの人影が転がり込んでくる。



 MCSの眼前4mの位置。


 現れたのは細身の戦闘用ドロイド。

 両腕に突き出た二つの刃がその攻撃性をよく表現している。


 MCSたちはそ素早く近接用戦闘用の光剣をだし戦闘隊形をとる。


 担い手の筋力を何十倍にも増幅させるアシストを持ったMCSから繰り出される斬撃は肉眼でとらえるには厳しい。

 やはりドロイドと言ったところだろうか、その斬撃をもろともせず避けていく。

 ただそのよけ方は奇妙でまるで酔っぱらっている人間、もしくは線が切れた操り人形のように足取りがふらふらとしている。


「『ルー』のドロイドだな」


 監督官がにやりと笑う。


「見てろ面白いことが起こるぞ」



 壊れた操り人形は両腕に突き出た刃の腕を大きく広げ大の字をとる。

 そしてグラリと傾いて倒れるのではと思った瞬間だった。



 スンッ――という音と供にドロイドは加速。


 素早く5体のMCSの横を通過、素早く振り返る。




 そして1体のMCSの中の一体の後ろに跳躍――そのまま腕を振り上げ一刺し。


 刃に頭部を持ってかれたMCSはその場に膝を折り倒れたるがドロイドはそのまま一緒に倒れる。



「倒れた……」

「いいや、ここからだ」



 倒れたはずのMCS はドロイドを振り払い再び立ち上がる。

 そして再び光剣を出す。



 攻撃目標は――MCS部隊。



「仲間を攻撃してるっ」



 倒れたはずの機械兵は先ほどまで味方であったMCSにその牙をむいていた。

 一番近くにいたMCSに近づくと素早く頭を一掴み。

 そしてそのまま持ち前の握力でヘルメットごと粉砕する。


 赤い血しぶきをあげ崩れ落ちていく味方とそうした味方、両方を見て唖然とする部隊。


 きっかけはドロイドの繰り出したあの一撃。



 原因のドロイドの姿は既に画面からは消え――



「ドロイドがいない」



 倒れて動かなくなったと思ったドロイドが先程までいた場所にいない。


 何処に行った――


 そう思った時だった、またもや別のMCSが味方へとその牙をむいたのだ。


 突き出すのはレールガンモジュール。

 レールガンを発射すればこの間の戦闘よろしく、自滅は免れない。

 そして攻撃の対象にされたのは1m前方の味方。

 明らかに正常な行動ではなかった。


 気づいた一体が味方の首を一閃。

 レールガンをだしたMCS は切断面から激しく血しぶきをあげ倒れる。



 ドロイドの姿は相変わらず姿を見せない。



 そして取り残された兵士たちはお互いを威嚇し合う。

 残されたのは一番最初にドロイドによって倒された一体、そして残る正常に見える二体。



 正常なうちの一体が残るもう一体を警戒しつつ蘇ったMCSを一閃。


 首が吹き飛ぶと中から赤い物が吹き出る。


 しかし先ほどの二体とは違い首を切っても倒れない。




「いつみてもこれは酷いな」


 監督官が苦笑いで画面を見つめる。


「何が起きてるんです?」


 暗い部屋、聞こえるの画面から出る戦闘音。

 これほど画面内部の出来事で臨場感を出せる部屋もないであろう。

 それだからこそ今目の前で起こるバーチャルスペース内の出来事は迫力と没入感が他とは段違いだった。

 見ている俺達ですら戦闘に参加している気分になる。

 ただし定点で追っているのは敵兵がほとんどなので、敵側の気持ちになってしまうところはあるけれど……。


「最初にドロイドに突き刺されたMCSは制御を『ルー』に乗っ取られたんだよ」


 MCSは確かに各種機能を利用するためにCPUなどを積んでいる、

 しかしそれが乗っ取られるなど。


「MCSのシステムは完璧で乗っ取りなどできるはずが」

「直接内部のプログラムから書き換えるんだ。確かに本体に幾つかついているプラグからのハッキング対策は完璧だが、ああして突き刺す事でプラグのセキュリティを無視して直接乗っ取りが可能というわけだ」


 MCSにコードを突き刺し内部から直接介入することでハード面でのセキュリティを突破しているという事か。


「じゃあレールガンを出した奴は?」

「あれも後ろから小さく突き刺されてた。だから乗っ取られた」


 気づかれない様に突き刺す、明らかにハイリスクローリターンだ。


「なぜ態々そのような事を?」

「さあな、劣勢を優勢に変える為とか本人は言ってるけどたぶん違う、遊びだな」

「遊び……」

「ああ、ああやって敵の反応をみて楽しむんだ、そして最後には何もしなかった奴同士も殺し合う」


 再び画面に目を戻した時、残っていたのは一体だけだった。

 そしてその一体は再び現れたドロイドによって一刺し――絶命した。


 ルーの操作したドロイドは恐ろしいほど強く恐ろしい、だがそれ以上に俺は驚くべき所に気付いた。

 あくまで、これは仮想訓練で、敵はホログラムで再現されたNPCという事だ。


「凄いですね」

「ああ、ルーのドロイドはヤヴァイ」

「そっちじゃないです」

「――えっ」


 監督官は頭上にクエッションマークを浮かべこちらに振り向いた。

 確かにルーの戦闘は凄かった。

 しかしそれが出来たのはこの空間が“現実であるかのように再現された空間”の為である。


「他に何か映っていたか?」


 俺はその言葉に頷き、口を開いた。


「私が言っていたのはそっちではなく、NPCについてです」

「んっ? どこか不思議なところがあったかい?」

「あったじゃないですか。NPCが仲間の突然の攻撃に同様したり、お互いを疑いあったりとか」


 その言葉に監督官が大きく口を開ける。

 そして後ろのモニターを確認したのち俺の方に再び振り向いた。


「ああ、当たり前だと思っていたから言われるまで気づかなかった」


 気づいてなかったのか。


「どうしてあそこまで人に近いNPCを作り出せるんですか?」

「それはだな、よく解らない」


 監督官の思わぬ回答に、俺は思わず体が前のめりになった。


「――解らないってどういうことですか」

「それはだな、これが移民船から回収されたデータを使って開発された装置だからだ」


 移民船、つまりはロストテクノロジーによる技術である。


「そう、なんですか」

「ああ、ただこれは俺達がグリードリヒ・グラフェル社から独自に入手した情報だ。そしてこの装置の設計やプログラムに関する情報はブラックボックスとして厳重に管理していたせいで情報は掴めなかった」

「つまりどうしてここまで再現できるのかは不明という事ですか?」

「そういう事だ」


 俺は再び画面を見つめて画面内の様子を眺める。

 丁度、映ったNPCで再現された敵兵が、紅いMCSの持った大型の粒子ソードによって一刀両断されるのを見つける。


「んっ、あの。あれは誰ですか?」


 俺はその画面を指差し監督官に尋ねる。


「ああ、あれはマードック(スィリー)だ」


 画面に映ったMCSは紅く、そして鋭利な刃物のような鋭くとがったシルエット。

 手に持つのは巨大な光る大剣(粒子ソード)

 そしてその大剣の大きさは2mはありそうだった。

 動きは機敏で、敵の攻撃は巨大なソードを盾のように使い防ぐ、そしてそのまま敵の中に突撃すれば、その盾は剣として敵を切り裂いていく。


「じゃああれがミョルニルの……」

「そうだ。あれがミョルニルが最強と謳われる由縁の近接戦闘特化型MCSだ」


 遠距離武器を持たなかったのはあの大剣(粒子ソード)があるこそ可能というわけか。

 素早く移動し敵の集団に突っ込んでいく深紅のMCS。

 懐に潜り込まれた敵たちは同士討ちを防ぐために武器を使うことをためらうい隙が生まれる。

 隙が生まれた瞬間に大剣を使い敵を残滅する。


 これがミョルニルの戦闘――


「何と言うか本当にこれが戦場にいるなんて信じられません、まるで――」

「映画みたいだだろ? 俺も最初見たときはそう思った。でもあくまでマードックのスタイルだ」

「えっ!ミョルニルとは別なんですかっ⁈」


 てっきりそういう風に鍛えられているのかと思ってしまった。


「ああいや、ミョルニルも確かにああいった行動はするんだがあくまで複数人でやってくんだ。敵の攻撃を引きつける役、そして隙を見て攻撃する役。でもマードックはそれをすべて一人でやっちまう。しかも敵が固まって集中砲火していても無理やり突撃していく」

「そうだったんですか」


 と言うか集中砲火の中ですら突撃するのかよ……。


「まあ最初は止められてたみたいなんだが、きっちり倒しちまう上に自分へのダメージは最小限だから誰も何も言わねえんだ」

「な、なるほど」


 流石スィリー(バカ)――





オマケイラスト

< http://14345.mitemin.net/i158627/ >

近接戦闘特化型MCS イメージ


後半に続きます。

ご一読ありがとうございました!

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