105話 会議は踊る
「なるほど。賛成派の方々の意見はわかりました。では次、反対派代表の方。」
パームの話を一通り聞いたフローラは目をつむり、一つ合図地を打った後目を開き、反対派が鎮座している場所を向いて声を掛ける。
反対派からはチェスが考えを言うようで、彼はその場ですくっと立ち上がり、一つ息を吸うと話始めた。
「賛成派……パームの言っていることは正論だと思う。確かに自分たちだって今まで大なり小なり間違いをしてきたし、人によっては全責任を誰かになすりつけたりもしたかもしれない。それはいただけないことだ。人のふり見て我が振りを直さなければと、改めて考えさせてくれた。」
リズはチェスがどんなことを言ってもすぐに反応できるように身構えていたが、思いの外、彼はまるで賛成派の意見に同意するかのような言葉を次々と発していく。
思わず拍子抜けしてしまうような言葉の数々にぼうっとするとともに、リズは嬉しくも思った。
だって、チェスは自分の意見を受け入れてくれたのだ。
自分はみんな幸せ大団円を望んでいる。しかし、彼は違う。
そんなものはおとぎ話にしか存在しないもので、悲しきかな、いずれ犠牲もしくは自業自得な人々が出てしまうと考えているのだ。
だからこそ、自分たちの意見を代表して話したパームの言葉で自分たちに理解を示してくれてとても嬉しかったのだ。
しかし、彼はリズが思い描いたような物分かりのいい人物ではなかったのだ。
「だが、今回の件に関しては流石に擁護しかねる。だって大勢の命をドブに捨てるような行為をしたんだぞ?国家として……というよりも、人の命を預かる立場として由々しきことだ。無論、まだ成人もしていないような奴が一丁前に豪語しているのはおかしいと思う奴だっているだろう。
しかしだとしても、ただ自分たちが全ての種族を従えるべきだ。これは神が支持しタダなんだとくだらないことを言い振り回すやつを野放しにはしておけないだろ。」
リズはあっけにとられた。
まさかまだ理解してくれなかったのかと驚いたし、すでに議論は賛成派一色になったものかとも思っていたからだ。
彼女はいてもたってもいられず、勢いよく席から立ってチェスに言葉をぶつけた。
「そんなのダメだよ!みんな話せばわかってくれるよ!だからあの人たちのことも許してあげなきゃ!」
「は?マジで言ってんのか?」
リズの言葉にチェスは乾いた冷たい声で言葉を吐露する。
こんな光景を、いつかどこかで見たような気がしたが、今はそれどころではないのだ。
リズはチェスが目の前で困惑しているのを見て、自分も戸惑った。
なぜチェスはまるで『理解不能』とでも言いたげな顔をしているのだろうか?
一ミリたりとも穏和な雰囲気が見られない彼の顔を見ながら、リズはなんとか理解してほしいと言葉を続けた。
「だって私たちには言葉があるんだよ?!それを使って相手にも納得してもらえれば……全部うまくいくじゃん!だから……」
「だからも何もない。言ってもわからないこともあるし……それに、まるで今お前が言っていることは『人間には言葉という特別なものがある。他の生き物とは違う。』とでも言いたげに聞こえるのは俺の気のせいか?」
威圧的な笑みを浮かべ始めたチェスに、リズは後ずさる。
今まで彼のこんな表情を見たことがなかったのだ。
会議は踊る。されど答えは一向に出てこないばかりか、場は混迷の至りであった。




