100話 森を守るため
猛スピードで街を駆け抜けて行く。風圧がとても強い。
これまで神獣の背中に乗ったとしても、羽田でも切れそうなほど強い風は感じた事がなかった。
合ってもせいぜい、振り落とされないかちょっと心配だな。と、思うほどで合ったというのにだ。
それほど余裕がない、と伝わってきた。
とにかく、神獣を掴む手にあらん限りの力を込める。
ーーー
森に着いた時、人間の軍は狂ったように進軍を続けていた。
一体どこにそれをするだけの理由があるというのか、国のために自らの命までを落とそうとする。まさに狂気の沙汰といったところだった。
一進一退の勝負は、いつまでたっても決着がつかないんじゃないかと思うほどであった。
呆然と戦場を眺めていると、前線の兵士たちをくぐり抜けてきたであろう人間の兵士が、ライター片手に森に火をつけようとしていた。
「水の力の源よ力を貸せ!ハザック・マイム!」
サイネリアがとっさに呪文を唱えると、全てを押し流さんばかりの勢いの強い水が現れ、火をつけようとしていた男を押し流す。
男は水の勢いに驚き、ライターをポロッと落としてしまう。
「早く拘束を!」
「わかってるって!」
サイネリアが大声で、男を縛り上げるよう命令すると、ライサが男の方を向き、氷の魔法の呪文を詠唱した。
すると、男の体にぴったりとくっつくように氷の輪が何重かに巻き付いていた。
足跡とはいえ、氷の厚さ的にも相手の自由を奪うに匹敵するだろう。
「森を燃やされたら本気でシャレにならないわ。」
「あぁもう!だから私は反対だったのよ!やっぱり人間はろくなのがいないわ!」
「今更ぐちぐちと文句を言っておるでない。口を開いてる暇があるのならさっさと動け。」
ルフィナが冷や汗をかきながら言葉を発するとベルが自身のたてがみを乱すほど勢いよくクレームを入れる。
ラタムは呆れたようにため息を吐いた後、ベルの辛辣ながらも、今の状況的には正しいことを言う。
神獣たちはそれぞれ何かしらの反応を見せた後、全員が持参していた魔力回復藥を小瓶1つ分飲み干した。
「展開系の魔法を使うのは久しぶりなんだけど……できれば練習する期間が欲しかった。」
「冗談抜かすでない。ニック、汝が練習なんかしてたら、土地がいくつ合っても足りん。」
「はいはい。集中してね。」
7人が目を閉じ、体の中に巡る魔力の流れを意識し始める。
すると、7人の周りに風の流れが出てきた。実際には少しの風も起こってないというのにだ。
しばらくの間そうしていた。その間も、種族問わず色々な人が血を流していた。防衛軍……リズたちに協力してくれる者のすべてが一刻も早く戦いを終えたかったはずだ。
7人は同時に目を見開き、全員で呪文を詠唱し始めた。
その様はまさに、神の眷属と呼ぶに相応しいほど、神々しく、つい見惚れてしまう美しさだった。
『遍く力のすべてよ、どうか我らが問いに答え、力を貸したまえ。暖かく照らしてくれる太陽よ、優しく見守ってくれる月よ、どうか我らに加護を与え給え。』
自然の摂理を、美しく語って行く7人を眺めながら、リズはどうか早く戦争が終わってくれ、と願っていた。
『我らを害するものを捌きたまえ。プリローダ』
神獣たちが最後にそう唱えると、空から幾万もの光の筋が降ってきた。
それらは人間の軍勢に当たると、軍の者たちが気絶して行くのに対し、リズたちの味方に当たったところでなんとも支障をきたさなかった。




