弥嗣の過去――Ⅱ
遅れまして、申し訳ありませんでした!
作者自身、精神的にやられてまして、立ち直るのに時間がかかってしまいました………
その分、きりの良いところまで毎朝7時ぐらいに投稿します
こんな作者ですが、何卒、お付きあいください
それでは、どうぞ!!
「動くな!!」
平和な家族団欒の中、突然そんな言葉が部屋に響いた。
弥嗣たちは振り返る。その先にいたのは一人の男だった。
どこにでもいるような平凡な顔だち。だが、その双眸はギラギラと異様に輝いていた。そして、こちらに向けられた手の先には魔法陣が構築され、いつでも殺せるということを主張する。
「手を上げろ!!少しでも妙な真似をしたら、魔法を発動させるからな」
弥嗣たちは男の言う通りに手を上げる。抵抗する気はないと見せるためだ。
弥嗣たちが両手を上げたのを見ると男はニタリ、と笑みを浮かべる。
「いいだろう。三人とも立て!!」
その言葉に従い、立ちあがり、三人が並ぶ。弥嗣は父と母に挟まれるような形で手を上げている。
それから一呼吸置き、男は口を開いた。
「俺はお前らに殺された政治家の息子だ。よくも、よくも、父さんを殺したな!!」
――――復讐。それが男の目的だった。
怒りに染まった顔で、目で、男は弥嗣の父と母を睨み付ける。
「だから、だから――――お前らにも同じ苦痛を味わえ!!」
静かに。だが、激しい怒りが込められた声が部屋に響いた。
それと同時に魔法陣から氷の礫が弥嗣たちに襲いかかる。
「っ!!」
父と母は間に立っていた弥嗣を守るような形で自らの身体を弥嗣の前に躍りでた。
その瞬間、弥嗣たちに氷の礫が襲いかかる。
「――――!!」
声なき悲鳴があがる。
氷の礫が収まった時、傷を負った三人の姿があった。父親と母親は深い傷が目立つが、弥嗣に深い傷は見当たらない。
父と母がその身体を盾に弥嗣を守ったからだ。恐らく、それが無ければ弥嗣はその身に深い傷を負っていただろう。
「うっ……」
弥嗣が呻き声を上げた。深い傷はないとはいえ、氷の礫をその身に受けたのだ。だが、弥嗣はそれでも顔を上げる。
弥嗣の前には仰向けに倒れる父と、うつ伏せに倒れた母を視界の中に入れた。
己の無力さを痛感させられる。
そんな中、男は感心したような声を上げた。
「子供を庇うとは思わなかったな。こいつらは多少、親としての心を持っていたという訳か…」
両親を馬鹿にしたような言葉に弥嗣はキッと男を睨みつける。
「威勢のいいガキだな。まぁいい。お前らにも同じ苦痛を味わってもらう」
男はそう告げると弥嗣の近くに歩み寄り、弥嗣の首を掴み、持ち上げる。
「がっ…!!」
男は首を掴んだまま、弥嗣を持ち上げた。足が床から離れたことにより首が締まり、呼吸が困難になる。そんな中、弥嗣は目を見開いた。
自分を持ち上げる男の背後に立ち、殴りかかろうとする父の姿を見たからだ。血に濡れ、傷を負いながらもかろうじて立ち上がった父は男に襲いかかる。その目には子供の命を奪う者を許さない、怒りの炎が燃えていた。
襲いかかるその直前に、男は頭だけを後ろに向ける。そしてニタリ、と笑みを浮かべた。
「後ろの気配に気づかない訳ないだろ?」
そんな言葉と共に、床に構築された魔法陣から氷の矢が一本発射され、父親の右腕を貫通した。
「がぁっ!!」
かろうじて立っている状態だった父は体勢を崩して倒れる。
「…………と、う……さん」
息が苦しい中で呟いた弥嗣の声は掠れていた。
「まだ声を出せる気力があったのか」
感心したように声を上げると男は弥嗣の胸、心臓辺りに手を翳す。
何かする気だというのはわかっていても、呼吸が苦しい中でその男を止めることはできない。
「――――苦しみを味わえ!!」




