弥嗣の過去――Ⅰ
俺が生まれたのは金持ちでもない、一般的な家庭だった。だが、俺の両親は人の道を外れた生業の仕事をしていた。
それは殺し屋――――。
いつも夜になると家を出て、何でもない顔をして帰ってきていた。
俺は物心つく前から、両親がそういう人の道を外れた仕事をしていたのは知っていた。
いくら仕事でもそれが犯罪なのは知っていた。
けど、俺はそれを認めて普通に暮らしていたんだ。
母も父も俺に愛情を注いでくれていたのはわかってたし、両親がそれでいいならそのままでいいと思っていた。
そして、全てが変わったあの日が来た――――。
ある日の早朝。弥嗣は自身の部屋で目を覚ました。いつもなら学校に行く少し前に起きるのだが、今日はやけに目覚めが良かった。
その事を不思議に思いながらも弥嗣は制服に着替え、二階の自室から一階のリビングに下りた。
「あら、おはよう。弥嗣。早いわね」
キッチンに立ち、手を動かしながら声を掛けた優しそうな女性は弥嗣の母親である。
「母さん、おはよう。なんか目が覚めてさ」
弥嗣はリビングにある椅子に腰かける。時刻はまだ朝の6時。弥嗣の通う中学校は比較的近いので余裕だ。
「そうなの?今日は雨が降るかも知れないわね」
母親の言葉に弥嗣は笑みを浮かべる。
そんな中、利発そうな男性が姿を見せた。
「おはよう。弥嗣、起きてたのか?」
「うん。おはよう、父さん」
その男性は弥嗣の父親。彼も弥嗣が起きていたことに驚いたのだろう。少し目を見開いていた。
父も会話に加わり家族で朝食をとりながら何てことはない、会話が繰り広げられる。その光景は平和だった。どこにでもあるような、家族団欒の光景。
だが、その平和な家族団欒は突然、壊される――――。




