↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
冒険姫リーベ 英雄の娘は希望の継承者!  作者: 丘引みみず
第1章 英雄の娘、冒険者になる

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

4/48

004 急襲

 服屋や床屋など。必要と思われる施設はあらかた紹介し終えた。


(あとは……)


 彼女らの向かう先にはテルドルにしては珍しい赤い屋根をもつ建物があった。その入り口の斜め上には看板が吊られており、剣と斧が交差したシンボルが描かれている。


「見ての通り、ここは武器屋です。武器屋ですが、キッチンナイフも売って――」

「入っていい……?」


 フロイデは期待を満面に浮かべていた。


「ふふ! はい。もちろんです」


 すると彼はネズミを見つけたネコの如く店内に飛び込んでいった。


 リーベが後を追って入店すると、お馴染みのご婦人が出迎えてくれる。


「おや、リーベちゃん。こんにちは」

「こんにちは、スーザンさん」


 スーザンはここの店主で、西にある工房で夫のダルが作った武器を販売しているのだ。そんな婦人はフロイデを見つめながら、溜め息交じりに問い掛けてくる。


「そこの坊やはお友達かい?」

「はい。フロイデさんと言って、ヴァールおじさんの一番弟子なんです」

「へえ、とても冒険者には見えないねえ」

「チビじゃない……!」


(誰もそうは言っていないけど……まあ言ったようなものか)


「ははは! こりゃ失礼! 詫びの品はないが、ゆっくり見て言ってよ。うちは冷やかし大歓迎だからねえ!」


 スーザンは裏表のない人で、故に言葉を選ぶこともしないのだ。


 それはそうと、リーベはフロイデに付いて武器屋を見学させてもらう事にした。


天井にクモの巣が張られている店内には、多種多様な武器が置かれている。


「いろいろありますね」

「うん……!」


 一緒になって観察していると、スーザンが冗談半分に言う。


「なんだい? リーベちゃんも冒険者になるんかい?」

「まさか! だってわたし、女の子ですよ?」

「女の冒険者だって探せばいるじゃないか。それになにより、あのエルガーさんの娘なんだ。アンタにも才能があるはずだよ」

「……わたしにはムリですよ、はは……」

「そうかい? やってみなきゃ分からないよ?」

「それはそうですけど……」

「……あ、背中にクモが」


 フロイデが彼女の肩に付いたクモを捕る。


「え、うそ!」

「うそじゃないよ。ほら」


 そうして見せつけられたのは脚の長いクモだった。


「きゃああああ! あああ、あっちにやってください~!」


 必死に顔を背けていると、スーザンは溜め息をついた。


「はあ……こら、ホントにダメかもねぇ」





「はあ……」


 武器屋を見物していただけなのに、随分疲れてしまったリーベは深いため息をついた。


「……ごめんね?」

「いえ。フロイデさんは悪くありません……むしろ、助かりました」


 答えつつ、空を見る。青く澄み渡った空にはちぎれ雲が漂っていて、今日という日が穏やかなものであることを物語っていた。


「そろそろ、帰ろ……?」


 キラキラした瞳には昼食を期待する気持ちが表れていた。


「ふふ! そうですね――と、その前に少しだけ、付き合ってくれますか?」

「つ、付き合う……!」


 彼は夕焼けのように真っ赤になった。


「そういう意味じゃありません! ……もう、寄り道ですよ」

「……って、どこに?」

「それは着いてからのお楽しみです!」


 そうして2人は街の北端にやって来た。


 ここら一帯は草地がこんもりと盛り上がっていて、ちょっとした丘になっている。丘の北側に隔壁が聳えているほかは何もなく、その景勝っぷりから誰が決めたか、展望台と呼ばれていた。


「わあ……!」


 フロイデが景色に心奪われる様にリーベは得意になりつつ、自らもまた展望した。


 眼下にはテルドルの灰色の街並が見えた。その向こうには澄んだ日差しに照らし出された麗らかな高原が広がっている。そのさらに向こうにはグラ・ジオール山が厳然と佇んでいて、まるで自分こそが世界の中心であると主張しているかのようだ。


「きれい、だね……」

「はい……この景色はテルドルの宝なんです」


 それからしばらく、2人は景色を眺めていたが、いい加減、帰らないと両親が心配するだろうということで、リーベが切り出す。


「そろそろ帰りましょうか」

「……うん」


 そうしてリーベは丘を下り始めたが、フロイデが付いてこないことに気付く。不思議に思って振り向く。


「フロイデさ――」

「リーベちゃんっ!」


 振り向いた瞬間、彼が飛びついてきた。直後、彼の背後――直前まで彼女がいたところに大きな陰が過る。


「……え――ごふうっ!」


 背中に衝撃を受けたのも束の間。フロイデは立ち上がり、背中の長剣を引き抜く。


「ぼくが引き付けてるから、ヴァールたちを呼んできて……!」

「いてて……え?」


(一体何が起きてるの?)


 身を起こすと、すぐそこに体高2メートルほどの大きなカラスがいた。


「ま、魔物っ⁉」

「早く……!」


 フロイデが叫ぶとカラスは彼へとくちばしを伸ばす。リーベは恐ろしくなって目を背け、そのまま丘を駆け下り始める。


(ごめんなさい、ごめんなさい……!)


 心の内で謝りつつ、彼女は応援を求めて脚を速めた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。