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『序盤で死ぬ最弱悪役に転生したけど、このゲームを一万時間やり込んだ俺には関係ない』  作者: くんくん


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お前の知ってるゲーム、本当に同じか?

第13章 お前の知ってるゲーム、本当に同じか?


「確認したいことがある」


カイルが言った。


俺たちは今。


街道脇にある、小さな野営地にいる。


焚き火を挟んで。


俺。


カイル。


そして。


「なんで私までいるのよ」


リリア。


「逆に聞くが、なんでいるんだ?」


「は?」


「いや。俺とカイルはちょっと込み入った話を――」


「私に聞かれたら困る話?」


「……」


「……」


カイルと目が合った。


前世。


ゲーム。


プレイヤー。


転生。


説明できるわけがない。


「男同士の話だ」


「絶対嘘ね」


即答だった。


仕方なく。


少し離れた場所に座ってもらった。


もっとも。


聞き耳を立てているのは丸分かりだが。


カイルが声を落とす。


「まず一つ」


「ああ」


「この世界の名前は?」


「アストリア」


「国じゃない」


カイルは言った。


「ゲームの名前だ」


俺は。


少しだけ黙った。


そして答える。


「《アルカディア・クロニクル》」


カイルの表情が。


止まった。


「……やっぱり」


「何だよ」


「違う」


「は?」


カイルは俺を見る。


「俺がやってたゲームは――」


一拍。


「《エンド・オブ・アルカディア》だ」


焚き火が。


ぱち、と爆ぜた。


「……」


「……」


待て。


「別ゲーじゃねえか」


「俺もそう思いたい」


カイルは苦笑した。


「でも登場人物は同じだ」


カイル・アストレア。


リリア。


王都。


エルム村。


ゴブリンキング。


そして。


レオン・アルヴェイン。


「お前もいる」


「……俺も?」


「ああ」


カイルは即答した。


嫌な予感がした。


「俺は、お前のゲームでどうなる」


カイルが。


ほんの少し言いづらそうに視線を逸らした。


「死ぬ」


「知ってる」


「そうじゃない」


「?」


カイルは続ける。


「俺の知ってるレオン・アルヴェインは――物語開始時点ですでに死んでる」


「……は?」


今度こそ。


言葉が止まった。


「死者の森で死亡」


カイルが指を一本立てる。


「原因不明」


二本。


「遺体は見つからない」


三本。


「その後、アルヴェイン家の失踪事件として処理される」


待て。


俺が知っている設定と。


違う。


俺の《アルカディア・クロニクル》では。


レオン・アルヴェインは。


半年後。


黒狼団によって殺される。


つまり。


同じ人物。


同じ世界。


同じ登場人物なのに。


死ぬ時期が違う。


「……カイル」


「なんだ」


「お前のゲームで、俺は何歳で死ぬ?」


カイルが答えた。


俺は。


思わず眉を寄せた。


そこまで。


同じだった。


人物設定そのものは一致している。


違うのは。


未来。


いや。


シナリオだ。


「じゃあ次」


俺は聞いた。


「炎帝リリア」


少し離れたところで。


「聞こえてるんだけど!」


無視する。


「お前のゲームでは、いつ出てくる?」


「王都炎上編」


「何年後」


カイルが答える。


俺は。


完全に黙った。


違う。


俺の知っている時期と。


ズレている。


しかも。


少しだけ。


絶妙に。


「ゴブリンキングは?」


「序盤には出ない」


「それは同じ」


「エルム村は?」


「壊滅する」


俺はリリアを見る。


生きている。


「原因は?」


「ゴブリンジェネラル率いる群れ」


……そこも。


微妙に違う。


俺の知っている歴史では。


エルム村は半壊。


カイルのゲームでは。


壊滅。


そして現実では。


俺たちが介入して。


被害はさらに小さくなった。


三つ。


ある。


俺の知っているゲーム。


カイルの知っているゲーム。


今。


この世界。


「……まさか」


俺は呟いた。


カイルも。


同じことに気づいたらしい。


「シナリオが一つじゃない」


その瞬間。


視界に。


青白い文字が浮かんだ。


《条件を満たしました》


俺とカイルが。


同時に顔を上げる。


《外部記憶保持個体:2》


《相互情報照合を確認》


《世界情報差異を検出》


《差異率――17.42%》


「……は?」


カイルにも。


見えている。


そして。


次。


《第七世界》


ぞくり。


背中に。


冷たいものが走った。


まただ。


地下墓地。


深淵。


観測者。


あの言葉。


《第七世界情報の一部を開示します》


俺は。


息を止めた。


文字が。


一行ずつ。


表示される。


《第一世界――終了》


《第二世界――終了》


《第三世界――終了》


《第四世界――終了》


《第五世界――終了》


《第六世界――終了》


そして。


最後。


《第七世界――進行中》


「……終了?」


カイルが呟く。


俺も。


同じところを見ていた。


終了。


クリア。


じゃない。


消滅でもない。


ただ。


終了。


「おい」


カイルの声が。


少し震えていた。


「お前のゲームに、こんなのあったか?」


「ない」


即答する。


少なくとも。


俺が知っている限りは。


「俺にもない」


次の表示。


《各世界における主要観測個体の情報を照合》


《カイル・アストレア》


ずらりと。


文字が流れる。


第一世界。


死亡。


第二世界。


死亡。


第三世界。


生存。


第四世界。


死亡。


第五世界。


――。


途中から。


黒く塗り潰されている。


「……俺?」


カイルが。


笑えない顔をする。


そして。


《リリア》


同じ。


世界ごとに。


結果が違う。


死亡。


生存。


暴走。


消失。


封印。


「ちょっと」


いつの間にかリリアが。


俺たちの横まで来ていた。


「……これ、私の名前よね?」


「見えるのか?」


「見えるわよ!」


カイルと。


俺の顔が。


同時に強張った。


今まで。


こういうシステム表示は。


基本的に俺たちにしか見えなかった。


なのに。


リリアにも。


見えている。


《世界間干渉率が規定値を超過しました》


《現地個体への情報開示を開始》


まずい。


そんな予感がした。


そして。


表示される。


最後の名前。


《レオン・アルヴェイン》


俺は。


無意識に拳を握った。


第一世界。


《死亡》


第二世界。


《死亡》


第三世界。


《死亡》


第四世界。


《死亡》


第五世界。


《死亡》


第六世界。


《死亡》


そして。


第七世界。


《生存》


誰も。


何も言わなかった。


焚き火の音だけが。


やけに大きく聞こえる。


「……全部」


リリアが。


小さく呟く。


「死んでるじゃない」


「ああ」


俺も。


それしか言えなかった。


第一から第六まで。


全部。


俺は死んでいる。


そして。


今だけ。


生きている。


《規定外事象を確認》


《第七世界において初めて観測》


《レオン・アルヴェイン――生存継続》


《世界線変動の主要因と認定》


「主要因……?」


俺が。


世界を変えている?


転生したから?


ゲーム知識を使ったから?


それとも。


――もっと別の何か。


表示が。


切り替わる。


《原因を解析》


一秒。


二秒。


三秒。


《解析不能》


「……なんだよ、それ」


その時だった。


頭の奥に。


声が響いた。


――違う。


「っ!」


俺は。


立ち上がった。


「レオン?」


リリアが俺を見る。


「今……」


聞こえた。


間違いない。


地下墓地で。


俺を呼んだ。


あの声。


――お前が世界を変えているのではない。


「誰だ!」


カイルが剣へ手を伸ばす。


だが。


声は。


俺にしか聞こえていないらしい。


――世界がお前を使っている。


視界が。


暗くなる。


一瞬。


ほんの一瞬だけ。


目の前の景色が。


別の場所に変わった。


石造りの部屋。


鎖。


巨大な魔法陣。


その中央に。


誰かが座っている。


俯いていて。


顔は見えない。


だが。


分かる。


嫌でも。


分かった。


俺と。


同じ髪。


同じ身体。


そして。


ゆっくり。


そいつが顔を上げる。


俺の顔。


「……っ」


黒い瞳が。


まっすぐこちらを見る。


そして。


笑った。


『やっと繋がった』


視界が戻る。


「レオン!」


リリアが。


俺の肩を掴んでいた。


「大丈夫!?」


「……ああ」


嘘だ。


全然。


大丈夫じゃない。


今のは。


地下墓地で見た奴。


俺と。


同じ顔をした男。


黒い剣の表示。


《同一肉体情報を持つ個体:現在数2》


そして。


《正規個体:生存》


俺は。


ポケットの中で。


拳を握る。


「カイル」


「なんだ」


「お前のゲームで」


喉が。


少しだけ乾いた。


「レオン・アルヴェインの遺体は――見つかったことがあるか?」


「……いや」


カイルは首を振った。


「一度も」


「俺の方もだ」


そう。


考えてみれば。


おかしかった。


死亡した。


そう書かれていただけ。


死体を。


誰も確認していない。


第一世界から。


第六世界まで。


レオン・アルヴェインは死んだ。


でも。


それは。


本当に。


死んだのか?


それとも。


――入れ替わった?


その瞬間。


新しい表示が。


視界の中央に現れた。


赤。


今まで見たことのない。


真っ赤なシステム表示。


《警告》


《正規個体の覚醒を確認》


《対象――レオン・アルヴェイン》


《距離――測定不能》


《位置情報――遮断》


そして。


最後に。


たった一行。


《正規個体が、第七世界への侵入を開始しました》


「……おいおい」


俺は。


乾いた笑いを漏らした。


どうやら。


半年後に死ぬ程度の話では。


もう。


済まないらしい。


遠く。


俺たちの誰も知らない場所で。


鎖が。


一本。


音を立てて。


切れた。

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