第45話
説明を求めたら、「ギルドは3人いれば作れるだろ?」とか言うので「初耳」って返したら、「お前はほんとBランクの試験受かったのか」とかまたブツブツ文句を垂れた。
そんなこと覚えてなくてもいいの!
ギルドの設立方法とか土建と関係ないじゃん!
いいから説明早よ。
「はああ。
いいか、土建ギルドはダンジョン工事の中身がわからねえから手を出せねえわけだろ?
そんなら、手を出せるヤツでギルドを作ればいいわけだ。
元々ダンジョンをいじれたのはお前とノーラちゃん。そこに下っ端として俺が入った。
これで3人。何も問題ねえ」
「国の許可とかは?」
「んなもん、あいつらが気にすると思うか? 勝手に名乗ればそんで終わりだ。
ちゃんと仕事を取ってこれるかとか続けられるのかとかは別にして、作るだけなら誰でもできる」
あ、前世で会社作るみたいなものか。続ける方が大変ってやつ。
「そんでそのギルドができれば、あとは侯爵との交渉はお前じゃなくてもよくなる。土建ギルドに責任をおっかぶせることもねえ。
ま、俺がやってやんよ」
結局ジジイかよ。楽でいいけど。
「なるほどな。
ってことは、ジジイは土建ギルドと新ギルドのギルド長を掛け持ちするってわけか」
「んなわけあるか。俺はこのダンジョンの一番下っ端つっただろうが」
「じゃあ、私がギルド長? やだよめんどくせえ」
「なんでお前なんだよ⁉ そこはノーラちゃんしかいねえだろうが!
俺とお前はノーラちゃんの下につくんだよ!」
「結局ノーラが目的じゃねえか!」
ひとしきり言い合ったが、考えてみたらサブマスもダンジョン構築補佐も既にダンマスの部下だったので、特に怒るようなことでもなかった。
ノーラに話したら「私ギルド長!」と大喜びし、無事ご両親の許しも出たので、新ギルドの設立はあっさり決まった。
ギルド長はノーラで副ギルド長が私、ギルドの実務は補佐が全部受け持つという鉄壁の体制だ。
顧問としてデレックさんとマーガレットさんも入ってくれた。
補佐が毎日ギルド長に報告すると張り切っているのが引っかかるが、ノーラが嫌だったら即中止なので、オバ太郎も節度はキープするだろう。
名前はマーガレットさん考案の「ダンジョン魔法士ギルド」になった。
「そりゃいいな!『ダンジョン魔法』って言っちまえば、そこがダンジョンである必要はねえもんな!」
とオバ太郎君が絶賛した。
私も大賛成。
魔法じゃないけど、AランクとBランクの土魔法士がいるからすごく魔法っぽいし、今までの改装も「魔法!」と言い張ってきたので色々都合がいい。
「人数が揃ったので独立しましたー」とでも言っておこう。
それにしても侯爵は油断ならんなあ。
「なあ下っ端のオバ太郎君。聞きたいことがあるんだがいいかね」
「だからその呼び方やめろ」
「なんだねその口の利き方は。私は副ギルド長様だぞ?」
「今までてめーが土建ギルド長様にどんな口利いたか思い出してみろ」
「あ、そっか」
「あそっかじゃねえよバカ」
おかしい。全然偉くなった気がしない。
「んで、何だ聞きてえことって」
「あ、そうそう、侯爵ってダンジョン乗っとるつもりかな?」
「いや、それはねえな。
乗っ取っても自分でどうすることもできねえ。
それよりお前に開発させた方が早え」
「今やってるじゃん」
「もっとだよ。
あいつが狙ってんのはなし崩しにお前を囲い込むことだ。
お前を自分の下につければ、侯爵領の地下はお前に命令するだけでどうにでもなんだろ?
給金払えば依頼出す金も必要もねえ」
あれ?どっかで聞いた話が。
「ま、俺みてえに金は腐るほど持ってて、タダでもいいからダンジョンいじりてえってやつなら別だが、お前はそういう知識欲とかねえだろ?」
「うーん。ないわけじゃないけど、突き詰めたいとかは全然ない。
ダンジョンも色々改造したいけど、それは趣味。気が向いたらでやるくらいがちょうどいい」
「だよな。
じゃあ、俺にダンジョンいじらせろ」
「え?」
「今言っただろうが。
俺はタダでいいからダンジョンをいじりてえんだ。
地下街の改造終わった途端にいじれる場所取り上げられたから、触れる場所がねえんだよ。
んだから、副ギルド長様の仕事をこっちに振れって言ってんだよ」
「いいの?」
「だからいいっつってんだろ?」
「あ、はい」
なんだこれ?
私の思惑を先回りして全部潰した上で、潰した思惑どおりのことを自分から申し出るとか、バカなの? いや、逆に頭がいいのか?
……よくわかんないけど、なんかすごい便利だからいっか。
私は、やる気に溢れた新人に明日からの業務内容を説明した。
「わかった。
んじゃ、お前が指示して俺が作業するってことで決まりだな?」
「決まり決まり。よろしく!
権限も侯爵領側全部OKにしとくから」
「おお、いいじゃねえか。
よっしゃ。そんじゃこの話は終わりな。
んで、お前の話って何だ?」
ん? なんかあったっけ?
「お前も何か話があるんじゃなかったのか?」
「ああ、そっちか。その話は終わったから大丈夫」
「終わった?」
「うん。明日からの仕事、手伝ってもらおうって話だったから。
手伝うも何もメインでやるんだから、もう頼むことなんかない」
「ああ、そういうわけか。りょーかい」
中抜きの件で文句を言おうとしていたことはバレなかったのでホッとした。
その後、「明日のために」ということで、今日の工事内容を細かく聴取された。
明日できることを今日やっちゃうと明日することなくなるよ? って言ったら、順調な時に進めておくのが職人の常識だって怒られた。
「よそはそうかもだけど、うちのギルドは違うんだよ!」って言い返そうとしたけど、もっと怒られそうなのでやめた。
それが終わったら、私が説明した今日の工法に改良の余地があるって言って、その解説をたっぷり聞かされた。
2.8キロの直線トンネルを掘るのに350m×8回にするんじゃなくて、ネズミ穴みたいなのを2.8キロ一回で掘って、それを後から拡張する方が効率がいいはずだとかなんとか。
山の村への縦穴を掘った時に、最後に落下防止で穴を補足したことをベンから聞いていて、それなら逆もできるだろうって思ったのだそうだ。
「どう思う?」
「できそうだけど、そんなに長い距離指定したことないからどうなるかわかんないね」
で、終わると思うじゃん、普通。
でも技術ヲタはそこで終わんないのよ。
「失敗するとしたらどんなことが考えられる?」
「どうせ拡張するなら□指定より半径指定のほうがいいと思わんか?」
「距離と断面積と消費魔力の相関はどうなってる?」
とか質問がダラダラ漏れてくる。
知らんて。
明日やってみればわかると思うけど、ダンジョンはそういうもんじゃないの。
「そういうもんじゃないとはどういうことだ」
って食い下がるから、閲覧権限を一部解除してクソゲー『ヘルプマークを探せ』をプレイしてもらった。
理解できたようでやっと黙った。




