偶然か必然か
階段を登りきり、魔法学校の入り口に着いたラシエルとファソナは、大きな門の前で集まる同級生たちに続こうと門に向かう。
「「……あ」」
こんな偶然があるのだろうか。
そこには、ダイヤモンド色の髪の青年・ミファルドがいた。
「ラシエルじゃないか! 君も今年入学なんだな!」
「え、ええっと……」
「……もしかして! ダイヤモンドの王子!?」
ファソナは、階段を登る道中で、ミファルドのことを「ダイヤモンドの王子」と名付けていた。
「ダイヤモンドの王子?」
「ちょ、ちょっと……ファソナ! な、なんでもないの……み、ミファルドも、し、新入生なんだね」
ファソナとミファルドの会話を遮ろうと、ラシエルは頑張って口を挟もうとする。
だが、ラシエルはファソナ意外の人と話すのが苦手なのだから、この二人を止めることなど到底できない。
「失礼。ダイヤモンドの王子はこちらの話。気にしないで。それにしても運命だわ! ミファルド! あなたに会いたかったの!」
「え、えええ! オレ、そんな有名人なのか?」
「そうよ! ミファルドのことを知らない人はいないわ!」
「まじかよ! オレの異名は国中に広まってたんだな!」
(異名って……)
美人なファソナに「会いたかった」と言われ、まんざらでもなさそうなミファルド。
ファソナにさらにおだてられて鼻の下が伸びている。
ラシエルは、二人の会話に割って入ろうとするが、上手く言葉が出てこない。
「どうした? ラシエル」
ミファルドは、ラシエルが頑張って声を出そうとしているのに気付いたのか、ラシエルの顔を覗き込む。
ファソナは、そのときめきシーンを見逃すまい!と目をハートにして見つめていた。
(き、気まずい……)
「やさしいのね……ミファルド……。ラシエルはね……」
「……ラシエルは……?」
「感動の再会に胸をときめかせているのよ!」
「ファ、ファソナ!」
ファソナが余計なことを言うので、ラシエルはポコポコポコとファソナの腕を叩いた。
ミファルドは、何事にも動じないタイプなのか、ここでもきょとんとした表情でファソナの方を見る。
「で……君は?」
「申し遅れていたわ。失礼。私はファソナ。ラシエルの親友よ」
ラシエルは、ファソナが改めて自分を「親友」と呼んでくれたことにあたたかな気持ちになった。
だが、ぶるぶるっと頭を振って、この場を何とか納めなければと気を引き締める。
「み、ミファルド。ま、またあとで。ファ、ファソナ! こっち!」
ラシエルは、ファソナの手を引っ張って、ズンズン進み、ミファルドから遠ざかる。
「あとでな〜!」
ミファルドの声が聞こえたが、ラシエルは振り返らない。
ファソナは、ニコッと笑い、声の方を向いてひらひらと手を振っていた。
話している間に大きな門が開き、新入生たちはゾロゾロとゆっくり学校の中に入っている。
ラシエルもファソナの手を握り直して、学校の中に入った。
大きな教会の中のような室内に、身が引き締まる思いになったラシエルは、我に返る。
ラシエルがファソナの手を離すと「ふふふ、落ち着いた?」と目の前に可愛らしく立った。
(ファソナは恋バナになったら暴走するんだから……)
「からかわないでよ……!」
「からかってないわ! 運命じゃない! ミファルド、なかなかのイケメンだったわ。さすが、ダイヤモンドの王子!」
「運命なんて……」
(ミファルドは、私みたいな地味な女に興味なんてなくて、きっとファソナのことを気にいるはず……)
すると、全身真っ黒の服を着た男の人が室内を回りながらアナウンスをする。
『新入生は、広間に集まれ』
(先生だろうか……私たちよりも10歳ほど年上に見える。それにしてもなんだか、暗くて……闇を持っていそうな人だ……)
「あの人……何かあるわね」
ファソナの勘は鋭い。
ラシエルは、ファソナが同じことを思っていたので、先生であろうと何であろうと注意しなければと思った。




