いざ、魔法学校へ
ラシエルは、早めに家を出ていたので、空腹の青年を助けても待ち合わせの10時ちょっと前には駅に着いた。
(はあ、はあ、はあ……ファソナ……来てるかな)
ラシエルは、息を落ち着かせながらキョロキョロとあたりを見回す。
すると、後ろから「お待たせ」と聞こえて、ファソナの声だなと確信した。
振り向くと、ファソナが立っていて、クラシカルなワンピースに茶色い革のブーツを合わせた装いだ。
(ファソナは今日もおしゃれだな……!)
ラシエルは、かわいくておしゃれで上品で……何よりやさしいファソナのことが大好きなのだ。
「私も今来たところだから、待ってないよ……!」
「そっか、よかったあ! ん? ラシエル、なんかいいことあった?」
ファソナは勘が鋭い。
何かあるとすぐにバレてしまうから、ファソナには隠し事ができないと、ラシエルは常日頃から思っている。
「いいことなのかな……」
「幸せな顔をしてるわよ! ふふふ、学校に向かいながら聞かせて」
ラシエルはファソナに手を引かれ、スィエル魔法学校への道のりに歩みを進めた。
(さっき握られた時……手はゴツゴツしていたな……)
⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎
天空にあるスィエル魔法学校までは、ぐるぐると何段あるかわからない螺旋階段を登り続けなくてはならない。
(魔法使いになれば箒で飛んで、すぐに天空につけるのだろうな……)
ラシエルとファソナは、永遠に続くように見える螺旋階段のてっぺんを見上げた。
(上の方は、雲が流れている。遠すぎてよく見えないけれど……)
「2時間登り続ければ着くって聞いているけれど、本当かしらね……」
ファソナの不安そうな声を聞いて、何とか力になりたいとラシエルは励ましの言葉をかける。
「途中に休憩所もあるって案内状には書いてあったし……。休み休みで向かおう……!」
「そうよね。集合時間まで時間があるし、無理せず登りましょう!」
ファソナが階段を登り始めたのを見て、ラシエルも続く。
ラシエルは、自分の足が初めて国を出ると思うと、足元を見るだけでテンションが上がった。
ラシエルがウキウキしているのを感じ取ったのか、ファソナは先ほどの話を蒸し返す。
「ねえねえ、ラシエル! それで……何があったの?」
後ろを振り返って質問し、ふふふっと微笑んでから、前を向き直したファソナ。
階段をスキップするかのように軽々と登っていく。
ラシエルは少し恥ずかしい気持ちになりながら、ファソナの横に並び、今朝の出来事ーーミファルドという青年が倒れていて、サンドウィッチをあげて助けたことなどを話した。
「わ〜! 運命的な出会いってやつね! 素敵〜!」
「ち、違うよ! たまたまサンドウィッチがあって、それをあげて……それだけだよ!」
慌てるラシエルを気にも留めず、ひとりでときめいているファソナ。
ファソナは、小説が好きで、なかでも恋愛ものが好きなのだとラシエルによく話しをしていた。
ラシエルは、もっぱら草花にしか興味がなく、図鑑ばかりを熟読していたので、恋の話には疎い。
いつもファソナが饒舌になって話すラブストーリーに「そんなこと、起きないでしょ?」と懐疑的であった。
「しかも同じ歳くらいだったんでしょう? 魔法学校で会えたら……運命って認めてよね!」
「歳は同じくらいに見えたけど、わ、わからないよ……」
「ダイヤモンド色の髪の男子を探さなくっちゃ!」
「もう、ファソナってば……! 私の話、聞いてる?」
「それにイケメンだったのよね! ラシエルにも春が来たのね〜!」
「……今は秋だよ」
階段を登り始めて1時間が経ってもなお、ファソナは、ラシエルの身に起きた出来事からラブストーリーを妄想し、はしゃいでいた。
ラシエルはそんなに盛り上がることだろうかと少々困ったが、親友のファソナがこんなにも楽しそうなのだから……と最後の方はファソナの妄想話に笑顔で耳を傾けた。




