歓迎会開催!
広間には、新入生である12歳から4年生になった15歳まで、2万人を超える人たちが集まっていた。
天井は、天空の城のようにひらけていて、青空がラシエルたち新入生を快く迎えてくれているようにも思える。
『諸君、静粛に〜』
小さい白髪のおじいちゃん先生が、舞台の上でやさしい口調で言い放つ。
ざわざわしていた生徒たちも1分ほどで静まり返った。
『こほん! 新入生、よくぞスィエル魔法学校に来てくれた。校長のブロウドだ。皆のことを歓迎しよう』
(来てくれたというか、義務教育だけど……)
言い回しが気になったラシエルは、心の中でツッコミを入れる。
話すのが苦手なラシエルにとって、言葉を発するより心の中で発言する方がよほど気持ちにストレートになれるのだ。
『我がスィエル魔法学校は、魔法を使った剣術や体術のほか、攻撃魔法、救護魔法などさまざまな魔法を学べる学校じゃ。新入生は一年の間に自分の適性を確認し、2年目以降はその魔法を磨く。もちろん、一つに絞らず、2つ以上を自分のものにするのもありじゃから、必修授業以外は気になる授業を取って、より自分自身を高めてほしい』
校長が生徒たちを見渡しながら言う。
その目はもうすでに適性を見抜いているかのような目だった。
『堅苦しい挨拶はこれくらいにして……。今日は、新入生を歓迎するパーティーじゃ! このあと、食堂で開催するぞ。4年生は新入生をしっかり案内するように。2.3年生はハメを外しすぎないようにな。それじゃあ、トルトくん、挨拶を頼むよ』
校長は、集まった生徒の中の一人に合図をして、舞台から降りた。
(トルトという人は誰なのだろう……)
オレンジ色の短髪、背がすらっと高く、眼鏡をかけ、真面目そうな見た目した上級生らしき生徒が、舞台に上がる。
『新入生のみなさん、入学おめでとう。スィエル魔法学校の生徒代表、トルトです。みなさんとここで学べることを心から嬉しく思います! 今日からみなさんが学び、暮らすこの学校は、勉強はもちろんのこと、部活動への加入を推奨しています。明日からは部活見学があるので、1週間いろんな部活を見学してみてください。では、新入生のみなさんが素晴らしい学校生活を送れますようにと……願いを束ねて!』
「願いを束ねて!」の掛け声に2.3.4年生が自分の魔法の杖を天に向け、光を放った。
すると、花火のようにさまざまな色の光がピカピカっと空に光る。
「「「「わあ!!!」」」」
新入生は驚嘆の声をあげる。
(昼間の空にも、こんな綺麗に光が光るんだなあ……)
ラシエルは驚きつつも、その美しさに見惚れて、しばらくその場から動けなかった。
それくらい感動的な瞬間だった。
⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎
上級生の案内で広間から食堂に移動する。
食堂は多くの人が一気に入ろうとして、大混雑だ。
やっとの思いで、中に入ると……。
「君、新入生だよね? 名前は?」
突然、ファソナに声をかける上級生の男子たち。
ラシエルは身構えた。
一方、ファソナは兄一人、弟二人の男兄弟に囲まれて育ち、さらにはその美貌ゆえによく男の人に声をかけられるから、対応には慣れている。
「名前を聞くときは、先に名乗るのが筋ではないでしょうか。先輩♡」
「ははは、こんなに可愛くてしっかり者なんて。いいね、ますます気に入ったよ。おれは、サルサ」
「ほんとだな。こんな可愛い女の子にだったら尻に敷かれたいよね。おれは、カルカ」
「おい。ふたりとも、やめとけよ……ごめんね。いきなり」
最後に後ろから割って入って謝ったのは、先ほど挨拶をしたトルトという生徒代表と名乗っていた人だ。
ファソナとその隣にいるラシエルにもぺこっ、ぺこっとお辞儀をして申し訳なさそうにしている。
「トルトは、そうやって真面目だから彼女ができないんだよ」
「そうそう、男は積極的に行かないとさ。図々しいくらいがちょうどいいんだって」
残りのふたりは「ははは」と笑いながら、ファソナを上から下まで視線で舐める。
(気持ち悪い……)
ラシエルは、こういった男性の視線が苦手だった。
ファソナは、いつものことだから気にしないのか、見られていることに構わず、
「私は真面目な人が好きです。行きましょう、トルトさん。ほら、ラシエルもいくよー」
と言って、トルトの腕を掴み、ズンズン食堂の隅を目がけて歩き始める。
ラシエルはちょこちょこっと離れないように二人に頑張ってついて行った。
どれくらい歩いただろう。
食堂の奥までくると、人はぽつりぽつりいる程度で、先ほどの騒がしさが嘘のようだった。
(というか、この食堂広すぎない?)
「この辺まで来ればもう誰も来ないでしょう。久しぶりね、トルト」
「ファソナはしっかり者だなあ。2年ぶりかな? 元気だった
?」
(……え? ファソナはこの人と知り合いなの?)
「3年ぶりよ。ああ、ラシエル、置いてけぼりにしてごめんね。こちらはトルトよ」
「はじめまして、トルトです。僕はここの4年で、ファソナの従兄弟なんだ」
トルトがニコッと手を差し出したので、オドオドしながら手を握る。
(ファソナの従兄弟だったんだ……)
「は、はじめまして。ラ、ラシエルです……」
「トルトは、国境近くに住んでいて、年末年始の親戚の集まりにしか会わないのだけど、学校に入ってからは年末年始も帰らずに魔法、魔法、魔法よ。おかげで生徒代表にまで上り詰めたようだけど」
「上り詰めたってやめてくれよ、先生に押し切られちゃって大変だったんだ」
向くと、そこには漆黒の髪色の青年がいた。
(今度は誰……?)




