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カケラ~日常  作者: 崋山楽 
家族
3/20

第三話 祝い

「二人はどうでした?」

 イツ・キはガン・シの両親のいる部屋に戻っていった。

「喜びを分かち合っていましたよ」

「そうですか」

「二人には、改めてここから出た後選択できる道について確認しておきました」

「…はい」

 イツ・キは静かな視線で二人を見た。

「それから『魔力』の方も問題なく消えていました」

「そうですか。よかった…問題なくて」

「…ガン・シは二子なんですね」

「…はい。…そうです」

「お店を継がせたいのですか?」

 イツ・キの静かな声が響いた。

「一子が…シア・マレーがいます…しかし…」

「あの子がいつ『転換』するか分かりません」

「…それは、誰にも分からないことです」

「はい。分かっています」

「酒浅海を子どもに受け継がせたいのですね」

「はい」

「ご存知とは思いますが、酒浅海はそれなりに大きな酒問屋です」

「私たちも半ば無理やり受け継がされました…」

「酒浅海は一族経営ではなかったと、記憶しておりますが」

 イツ・キの少しあきれた声が聞こえた。

「それは分かっています」

「社員にも継がせるに足る人材がいます」

「…頭を少し冷やしなさい…今日はここに泊まれるようにしておきました」

「ありがとうございます」

「考えてください。これから先はあの二人の人生なのです…曲げないであげてください」

「…はい」

 そう言うと二人は深く項垂れた。

「落ちついたころ部屋への案内をします」

「はい」

「それまで、ゆっくりとしていなさい」

「はい」

 イツ・キは部屋から出て行った。






「レイ・ラ」

「はい。イツ・キ様」

 イツ・キは花咲く庭に面したバルコニーでシア・マレーと楽しそうに話をしているレイ・ラをたずねた。

「部屋の用意は出来てる?」

「はい。手配は済んでおります」

「そう。ありがとう。で、どこを?」

「はい。西塔と東塔です」

 レイ・ラは互いがもっとも遠くの位置の建物を答えた。

「そうね。あそこなら滅多な事では会わないわね」

「はい」

「それから、もう一つお願いしたいんだけど」

「何でしょうか?」

「シ・アネの親を明日当たりに呼びたいの」

「分かりました。手配してきます」

 そう言うとレイ・ラは立ち上がった。

「シア・マレーさん申し訳ございませんが、私はこれで失礼させていただきます」

「はい。楽しい時間をありがとうございます」

「こちらこそ楽しかったです。それでは…」

「はい」

 レイ・ラはイツ・キに軽く頭を下げるといってしまった。

「邪魔をしてすみませんでした」

「いいえ。お忙しいのにお相手をしていただいてありがとうございます」

「いいえ。彼女も仕事ばかりだったので、こちらこそお相手をしていただいて…」

 イツ・キ微笑みながらレイ・ラが座っていた椅子に腰掛けた。

「あなたも本日はこちらに泊まりますか?ご両親の分の部屋は用意しておりますが」

「そうですね…出来ればガン・シも両親もいない塔で休みたいのですが…」

「そうですか…では、部屋を用意させます。用意出来次第迎えが来ますので、それまでこの学校の自慢の一つである、この庭を堪能していてください」

「はい。そうさせていただきます」




 それぞれが、別々の夜をすごした。






 翌日。

「ああ~シ・アネ。こんなに早くお前の『転換』が見えるとは…神よ感謝します」

 朝早くにシ・アネの両親が学校に来た。

 そして、シ・アネを見るとかなりのオーバーリアクションで喜び神に感謝の祈りをささげていた。

「二人とも落ちついて」

 シ・アネが何度も注意しても二人は聞かず、かなり騒がしい集団となっていた。


「思ったよりお早い到着でしたね」

 シ・アネが何とか宥めすかし落ちつかせた頃、イツ・キが現れた。

「はい。連絡ありがとうございます」

 どうにかこうにか落ちついた、感じがある二人がイツ・キに頭を下げた。

「ご両親が生きているのなら連絡するのは当たり前です」

「それでも、ありがとうございます」

 淡々と対応したイツ・キに再び頭を下げた。

「イツ・キ様」

「シ・アネ。申し訳ないのですが式についての打ち合わせがあります。二人とも来てください」

「はい」

「分かりました」

 そう言うと シ・アネとシ・アネの両親のリアクションにおされ気味だったガン・シが立ち上がった。

「それでは二人を預かります」

「行って来ます」

「失礼します」

 三人はかなりあっさりと出て行った。




 三人は別室に入って行った。

「お待たせしました」

 イツ・キがそういって部屋の戸を開けた。

「いやいや。待っとらんよ」

 そう言って三人を迎えたのは口ひげを蓄えた、恐らくかなりの高齢の男性だ。

「さあ。二人とも座って。式の細かいところを決めますよ」

「はい」

「はい」

 イツ・キは後ろから着いてきた二人に男性の前に座るように促した。




 式というのはほとんど形式が決まっている。

 しかし、それでも自分たちの個性を出そうと細かいところを色々と準備する。

 『転換』をしたら大体二~三日中に打ち合わせをすることになる。




「それで、お前さんたちの希望はどんなんがあるんかな?」

 男性は式を取り仕切る責任者だ。

 ゆっくりと、じっくりと二人の話を聞き式の細かいところを決めていった。

 イツ・キはその間二人の後ろで控え、話を聞いていた。


「これで、私たちの希望は終わりです」

 話し合いが終わるとすっきりした顔をしたシ・アネが言った。

「分かった。それじゃあ、お前さんたちはご両親のところにでも行ってなさい。ワシはイツ・キ殿との最終打ち合わせがあるからの」

「分かりました。宜しくお願いします」

 男性の言葉に従い二人は部屋から出て行った。


「お前さんも大変じゃな」

「そうでもありません」

 二人が腰掛けていたソファーにイツ・キが座ると男性が話しかけた。

「…お前さんは辛いとは思わんのか?」

「…そんな感情既に無くなっています」

「そうか…」

 イツ・キは相変わらず淡々と言い、男性は泣いている人間を見守るような視線でイツ・キを見ていた。

「ワシの『転換』も立ち会ってもらったの…」

「あなたしっかりと年月を重ねたようですね」

「ハハハ…しっかりと生きていかんと『転換』に立ち会ってもらった人間に申し訳なくっての…」

「私が『転換』に立ち会ったのは偶然に過ぎません」

「それでもです…」

 男性は窓の外その先の遠くを見ていた。

「そういえば…」

「なんですか?」

 男性は先ほどまでとは幾分明るい声を出した。

「最近面会が多いそうじゃな」

「…あなたの様な人間がいるからです」

「は?」

「あなたは連れてきてはいませんが『自分の子どもがもしかしたら…』そう思って、子どもが適齢期に入ったらまず、私に合わせようとする人が多いです」

「そうですか…ワシの子どもは面会じゃなくそのまま学校(ここ)に入れてしまったからの…」

「それに…」

「それに?」

「私が『転換』したら後ろ盾になる…そういう人も何人かいるんです」

「なるほど…それ目当てもか」

「ええ。大きな商売をしている人ほど…」

「そうか…」

「・・・・・・」

「・・・・・・」

 男性が黙ってしまうと、途端に部屋が静寂に包まれてしまった。

「…さてと。おしゃべりはおしまいじゃ。式の詰めをするかの」

「そうですね」

 二人はそう言うと、事務的な話に入って行った。


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